日本語の文章を分かりやすく書くために参考になる書籍


 私が研究を始めた当初,最初にぶつかった壁は「文章をわかりやすく書くこと」でした。その当時は,養成校時代にたくさんのレポートを作成したことや,臨床で日々カルテを書いていたこともあり,自分の文章がわかりにくいとは思っていませんでした。しかし残念なことに,大学院に進学してその考えは甘かったのだと気づかされました。もともと曖昧さを持つ日本語を用いて,物事を正しく,かつ分かりやすく伝えることは容易ではなかったのです。そこで今回は,日本語の文章を分かりやすく書くために参考にした書籍を紹介したいと思います。

 これまで,たくさんの作文技術の書籍を読んできましたが,実際に参考になったのは木下是雄先生の書籍だけでした。そのうちの一冊「理科系の作文技術」は冒頭に日本語の曖昧さを述べて,次にそのような日本語でも英語表現のように分かりやすく表現するための方法論を具体的に説明しています。すでに出版されてから30年以上も経っていますが,今,読んでもなるほどと思える名書中の名書です。理科系のとされていますが,理系,文系によらず読んで欲しい一冊です。値段も手頃なので,これから研究をされる方,論文を投稿される方にはぜひ購入をおすすめします。

 同じ木下是雄先生の著書に「レポートの組み立て方」というものもあります。これは「理科系の作文技術」に比べるといくぶん読みやすく,レポート作成を念頭において書かれているので,学生さんにおすすめの書籍です。


 これらの書籍を読んでいただければ分かるのですが,日本語はとても曖昧な表現に陥りやすい言語です。曖昧な表現は,学術的な分野では許容されません。臨床においても曖昧な表現を用いることで,スタッフ間で間違った情報のやりとりがなされるかもしれません。そうなれば被害を被るのは患者さんに他なりませんよね。私もまだまだ勉強が足りていませんが,医療従事者は「分かりやすく書くこと」を常に意識する必要があるかと思います。