等速性筋収縮による筋力増強トレーニング


 等速性筋収縮(等速性収縮,等速性運動)は筋の収縮様式の一つで,関節運動を伴う筋収縮です。関節の角速度一定に保って筋収縮を行うため,等張性や等尺性筋収縮より効率的に筋力増強を図れると言われています。ここでは,等速性筋収縮による筋力増強トレーニングの詳細を説明します。

どんな人に適用があるか

 等速性筋収縮による筋力増強トレーニングは関節を動かすことのできる全ての人に適用できます。ただし,トレーニングにはCybex machineやBIODEXなど特殊な機器が必要です。

適切な負荷量(抵抗量)

 等速性筋収縮による筋力増強トレーニングは,対象者があらかじめ決めた角速度以上に運動速度をあげようとすると負荷が増大します。速い角速度(100〜200°/秒)で行うと,遅い角速度の運動にも効果がみられます(これを効果の転移といいます)。一方で,遅い角速度で筋力増強トレーニングを行なっても,速い角速度へ効果の転移は起こりません。つまり,等速性筋収縮による筋力増強トレーニングは速い角速度で行なった方が効率的だということです。

長所と短所

 筋力増強トレーニングでは筋の収縮様式によって長所と短所があります。等速性筋収縮の長所と短所には以下のようなものがあります。

長所

 等速性筋収縮による筋力増強トレーニングの長所は,等尺性筋収縮と等張性筋収縮の効果を合わせ持っていることです。また,過負荷になりにくく,筋力増強トレーニングによる,関節や筋への負担が少なくすむと言われています。

短所

 等速性筋収縮による筋力増強トレーニングの短所は,高価な機器を使用しないと行えないことです。また,日常生活動作において等速性の運動を行うことはありません。つまり,このトレーニングでは動作に関連した(特異的な)筋力増強に繋がらないことを意味しています。

まとめ

 等速性筋収縮による筋力増強トレーニングは,等尺性筋収縮と等張性筋収縮の効果を持つ新しいトレーニング方法で,関節や筋への負担が少なく,効率的に筋力増強が行えるとされています。一方で,動作に特異的な筋力増強は行えず,なにより,高価な機器を備えた施設でしか行うことができません。筋の収縮様式の種類や適用対象,その長所や短所を理解した上で,適切な筋力増強トレーニングを選択して下さい。

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