Modified Rankin Scale (MRS,モディファイド・ランキン・スケール) は,期脳卒中患者に対して用いられる総合的な評価指標です。以下にその目的,方法および特性(信頼性や妥当性など)について説明します。
評価の目的と対象
MRSは脳卒中患者の機能自立度を評価するための指標です。世界的に使われている評価指標で,リハビリテーション分野だけではなく,脳卒中に関連する医療分野で広く標準的に使用されています。
評価の方法
評価の項目と手順
MASは1項目の評価指標で,患者さんへ質問することで評価します。MRSはご家族などの代理回答者で評価することはできません。しかし,急性期脳卒中患者さんで意識障害や失語を呈している場合は,代理回答者で評価している研究も散見します。評価の具体的な内容を以下に示します(脳卒中ガイドライン2009から引用)。
評価の得点
0〜5点までの6段階評価です。死亡を含めると7段階評価になります。
使用する物品や環境
MRSでは物品を使用しません。また,患者さんやそのご家族への質問によって評価するため,特別な環境を必要としません。
評価にかかる時間
5〜15分程度の時間がかかると言われています。
評価の特性
床・天井効果
急性期脳卒中患者の18%で床効果が認められています (Dromerick et al., 2003)。
信頼性
(1) 再試験信頼性(いつ評価しても同じ結果が得られるかどうか)
急性期脳卒中患者で確認されています (Wolfe et al., 1991; Wilson et al., 2005)。
(2) 検者間信頼性(誰が評価しても同じ結果が得られるかどうか)
急性期脳卒中患者で確認されています (van Swieten et al., 1998; Wolfe et al., 1991; Shinohara et al., 2006) 。
(3) 検者内信頼性(同じ人が数回評価しても同じ結果が得られるかどうか)
急性期脳卒中患者で確認されています (Wolfe et al., 1991)。
(4) 内的整合性(評価したいことが評価できているかどうか)
確認されていまません。
妥当性
(1) 基準関連妥当性(他の似たような評価指標と関連するかどうか)
Barthel IndexやFIM,運動下位項目,Euroqol 5Dとの相関が認められています (Cup et al., 2003; Kwon et al., 2004)。
(2) 構成概念妥当性(評価内因子を合わせて評価したいものを評価できているか)
急性期脳卒中患者で確認されています (Tilley et al. 1996)。
(3) 内容的妥当性(項目に評価したい内容を含んでいるか)
確認されていません。
(4) 表面的妥当性(その道の専門家からみて妥当かどうか)
確認されていません。
まとめ
Modified Rankin Scale(MRS,モディファイド・ランキン・スケール)は機能自立度の評価指標として脳卒中患者さんに対して用いられます。医師,看護師,リハビリ専門職など,職種問わずに一般的に用いられる評価指標で,主に脳卒中患者さんの機能予後を予測するような研究で頻回に使われています。
ただし,MRSの項目は定義の幅が広く,評価者の解釈に影響しやすいことが指摘されています (Wilson et al., 2002)。簡便で使いやすい評価指標ですが,われわれリハビリ専門職が機能的予後を知りたい場合に項目が大雑把で物足りなく感じます。知りたいことが何かによりますが,状況に応じてBarthel IndexやFIMを代替として用いる必要があるでしょう。
評価の特徴や方法(評価指標一覧)
ただし,MRSの項目は定義の幅が広く,評価者の解釈に影響しやすいことが指摘されています (Wilson et al., 2002)。簡便で使いやすい評価指標ですが,われわれリハビリ専門職が機能的予後を知りたい場合に項目が大雑把で物足りなく感じます。知りたいことが何かによりますが,状況に応じてBarthel IndexやFIMを代替として用いる必要があるでしょう。
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