脳卒中片麻痺患者さんはしばしば麻痺側の肩に痛みを訴えます。このような痛みは肩関節の機能障害につながるだけではなく,患者さんの意欲低下を引き起こし,結果として本来その時期に行うべき適切なリハビリテーションを提供できなくなることがあります。脳卒中片麻痺患者の肩の痛みの発生率はどのくらいで,原因はなんなのでしょうか。
肩の痛みの発生率
脳卒中片麻痺患者さんがどのくらいの確率で肩に痛みを訴えるかは研究によって様々なようで,9% から73% でばらつきがあるとされています。また,その発生時期に(発症からどのくらい経過してから肩の痛みを訴えるか)については,早ければ発症後 2 週間でも起こる可能性があるが,発症後 2〜3ヶ月のうちに起こるのがより一般的だといわれています(Poduri, J Strok Cerebrovasc Dis. 1993)。
発症から6ヶ月後には痛みを発生した患者さんの80 %で痛みが消失したという報告もあり(Gamble et al., Eur J Pain. 2002),その多くは経過とともに軽快するようです。だだし,20% は 6 ヶ月を越えて痛みが継続し,慢性化していることに注意が必要です。慢性化した場合はその他の慢性疼痛と同様に QOL を著しく損ないかねません。
発症から6ヶ月後には痛みを発生した患者さんの80 %で痛みが消失したという報告もあり(Gamble et al., Eur J Pain. 2002),その多くは経過とともに軽快するようです。だだし,20% は 6 ヶ月を越えて痛みが継続し,慢性化していることに注意が必要です。慢性化した場合はその他の慢性疼痛と同様に QOL を著しく損ないかねません。
肩の痛みの原因
脳卒中片麻痺患者さんが訴える肩の痛みの原因は何でしょうか。Lo らは臨床検査と関節造影に基づいて肩の機能障害をタイプ別に分類し,脳卒中発症後1年以内で肩の痛みを訴えた片麻痺患者 32 人のうち 16% が肩手症候群になり,4% が腱板断裂,そして 50% が凍結肩を患ったと報告しています(Lo et al., Arch Phys Med Rehabil. 2005)。
患者一人に対して一つの原因というわけではなく,63% の患者が1つの機能障害,34% が2つの機能障害を持っていたようです。他にも,肩甲上腕関節の亜脱臼,肩関節の拘縮や可動域制限,痙縮(特に肩甲下筋と胸筋群),反射性交感神経性ジストロフィーなどが肩の痛みと関連していると言われています。脳卒中患者なので,当然,中枢神経性疼痛の関与も考えられるのですが,この点についてはまだはっきりとしていないようです。
上記の要因が肩の痛みの原因として挙げられますが,以前,別な記事で紹介したように,肩の痛みの程度と,肩関節の構造異常との間にミスマッチがみられることもあります(詳しくは「脳卒中患者の肩痛の程度は,肩の構造的異常の程度とは関連しない?」を参照して下さい)。また,亜脱臼を呈した患者さんの中にも肩の痛みを訴えない方もいます。構造的な異常があるからと言って必ずしも痛みを訴えるわけではないようなので注意が必要です。
患者一人に対して一つの原因というわけではなく,63% の患者が1つの機能障害,34% が2つの機能障害を持っていたようです。他にも,肩甲上腕関節の亜脱臼,肩関節の拘縮や可動域制限,痙縮(特に肩甲下筋と胸筋群),反射性交感神経性ジストロフィーなどが肩の痛みと関連していると言われています。脳卒中患者なので,当然,中枢神経性疼痛の関与も考えられるのですが,この点についてはまだはっきりとしていないようです。
上記の要因が肩の痛みの原因として挙げられますが,以前,別な記事で紹介したように,肩の痛みの程度と,肩関節の構造異常との間にミスマッチがみられることもあります(詳しくは「脳卒中患者の肩痛の程度は,肩の構造的異常の程度とは関連しない?」を参照して下さい)。また,亜脱臼を呈した患者さんの中にも肩の痛みを訴えない方もいます。構造的な異常があるからと言って必ずしも痛みを訴えるわけではないようなので注意が必要です。
まとめ
こうしてまとめてみると,脳卒中患者さんが訴える肩の痛みにはさまざまな原因があり,そのせいか発生の時期にもばらつきがあるように感じます。このように複雑で難解な肩関節痛ですが,発生すると上肢機能の向上を制限し,ひいては日常生活動作の改善を妨げます。
また,急性期から発生する痛みは患者さんの意欲を著しく低下させる原因になり,上肢機能にかぎらず他の機能改善をも阻害する可能性があります。そして,慢性化すると退院して自宅に戻られてからの QOL を損なうことも考えられます。肩の痛みを発生させない,悪化させない,慢性化させないための評価法やアプローチ方法を考えていく必要があります。
また,急性期から発生する痛みは患者さんの意欲を著しく低下させる原因になり,上肢機能にかぎらず他の機能改善をも阻害する可能性があります。そして,慢性化すると退院して自宅に戻られてからの QOL を損なうことも考えられます。肩の痛みを発生させない,悪化させない,慢性化させないための評価法やアプローチ方法を考えていく必要があります。