
研究計画書は、研究を始める前に「誰を対象に、何を、どのように調べ、何をもって答えとするか」を書いておく文書です。指導教員や上司に研究の内容を説明するときや、倫理審査委員会の審査を受けるときに必要になります。はじめて書く人に向けて、構成と各項目の書き方を、例を交えて紹介します。
研究計画書の基本の構成
- 題名:誰に、何をして、何を調べるのかが、題名だけでわかるようにする
- 背景:問題の大きさ、わかっていること、わかっていないことの順に書き、目的につなげる
- 目的(と仮説):何を明らかにするのかを1文で書く
- 方法:研究デザイン、対象、介入や測定、評価項目、人数、解析方法、期間を書く
- 倫理的配慮:説明と同意、個人情報の扱い、対象者の負担とリスクを書く
- 引用文献:背景などで引用した文献を一覧にする
いちばん大切なのは、背景で示した「わかっていないこと」を目的が受け止め、その目的に答えられる方法になっていることです。提出先の様式があれば、それに従います。
研究計画書は「データを見る前の約束」
2004年、医学研究者のアン=ウェン・チャンらは、デンマークの倫理委員会が1994〜1995年に承認したランダム化比較試験102件について、提出された研究計画書と、その後に出版された論文を突き合わせました。すると、62%の試験で、少なくとも1つの主要評価項目が変更されたり、新たに加えられたり、削られたりしていました。統計的に有意だった結果ほど、論文で十分に報告されやすいこともわかりました。研究者へのアンケートでは、回答した49人のうち42人が「報告していない評価項目はない」と答えましたが、その人たちの試験にも、報告されていない評価項目があることがはっきりしていました。
データを見たあとで評価項目や解析の方法を選び直すと、偶然に出たよい結果だけが残りやすくなります。研究計画書は、データを見る前に「何を調べ、何をもって答えとするか」を決めておく約束でもあるのです。チャンはその後、臨床試験の研究計画書に書くべき項目をまとめた国際的な指針SPIRITの作成を主導し、2013年に発表しました。2025年の改訂版(SPIRIT 2025)では、34の項目が挙げられています。
研究計画書の構成と様式
研究計画書の様式は、提出先によって違います。病院や大学の倫理審査委員会、大学院の入試などで様式や字数が決まっている場合は、まずそれに従います。決まっていない場合は、題名、背景、目的、方法、倫理的配慮、引用文献の6項目を骨格にすると書きやすくなります。論文でいえば、「はじめに(序論)」から「方法」までを、データを集める前に書いておくイメージです。
人を対象とする医学系の研究では、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が、研究計画書に書く事項を定めています。研究の名称、実施体制、目的及び意義、方法及び期間、研究対象者の選定方針、科学的合理性の根拠、インフォームド・コンセントを受ける手続、個人情報等の取扱い、研究対象者に生じる負担とリスク・利益などで、該当する研究だけが書く事項も含めて25項目あります。この指針は2026年8月27日に一部改正され、12月1日から施行されます。所属する施設の倫理審査委員会に、指針に沿った様式やチェックリストがないかを確認しておくと、書き漏れを防げます。
題名:誰に、何をして、何を調べるかを入れる
題名は、それだけで研究の中身がわかるものにします。読み手に想像で補わせる題名は避けます。たとえば、急性期の脳卒中の患者さんに課題特異型トレーニング(立ち上がりや歩行など、日常の動作そのものを繰り返し練習する方法)を行い、その効果を調べる研究を考えてみます。
| 題名の例 | 読み手にわからないこと |
|---|---|
| 脳卒中患者に対する課題特異型トレーニングの有用性 | どの時期の患者か、どのくらいの期間か、何で効果を測るか |
| 急性期脳卒中患者に対する課題特異型トレーニングがADL能力へ及ぼす影響 | どのくらいの期間か、いつの時点で測るか |
| 急性期脳卒中患者に対する2週間の課題特異型トレーニングが退院時ADL能力へ及ぼす影響 | なし(対象、介入、期間、評価の時点がわかる) |
研究のテーマそのものがまだ決まっていない場合は、「研究テーマの決め方」を先に読んでください。
背景:じょうご型で「わかっていないこと」まで絞り込む
背景は、なぜこの研究が必要なのかを読み手に納得してもらう部分です。自分が考えた筋書きを、先行研究という根拠で一つずつ裏づけていきます。広い問題から書き始め、先行研究でわかっていることを示し、まだわかっていないことに絞り込んで、最後に目的につなげます。上が広く下が狭い、じょうごの形です。

図1 研究の背景の組み立て方。広い問題から書き始め、まだわかっていないことに絞り込んで、目的につなげる。③の「わかっていないこと」と④の目的が、同じことを指しているかを確かめる
②と③を書くには、先行研究を探して読む必要があります。探し方は「医療従事者が臨床でエビデンス(文献)を探す方法」で紹介しています。先行研究を読むときは、結果だけでなく、対象者の人数や特徴、介入の期間、評価の方法にも目を向けます。「対象者が少ない」「慢性期の患者しか調べていない」といった先行研究の弱点が、③の「わかっていないこと」になります。
たとえば、さきほどの研究の背景を4段落で書くとします。①では、脳卒中の患者さんにとって、退院時に日常生活をどれだけ自分でできるかが、その後の暮らしに大きく関わることを、統計を引用して示します。②では、課題特異型トレーニングの効果を調べた先行研究を紹介します。③では、それらの研究が回復期や慢性期の患者を対象にしたものばかりで、急性期の短い入院期間で行ったときの効果はまだ調べられていない、と指摘します。④で、「そこで本研究では、急性期の2週間の課題特異型トレーニングが退院時のADL能力に及ぼす影響を明らかにする」と目的につなげます。(この例の内容は説明のための架空のものです。実際の計画書では、①〜③の主張それぞれに文献を引用します。)
背景が長くなりすぎたときは、①の一般論に字数を使いすぎていないか、③を「〜はまだ明らかになっていない」と1文で言えるかを確かめます。
目的と仮説:PICOで1文にする
目的は、背景の③で示した「わかっていないこと」を、そのまま明らかにする文にします。目的を1文にまとめるときは、PICO(またはPECO)の4つの要素に分けて考えると、抜けがなくなります。
| 要素 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| P(Patient) | 誰を対象に | 急性期の脳卒中患者 |
| I(Intervention)またはE(Exposure) | 何をすると(何があると) | 2週間の課題特異型トレーニング |
| C(Comparison) | 何と比べて | 通常の理学療法 |
| O(Outcome) | 何がどうなるか | 退院時のFIM(機能的自立度評価法)の点数 |
この例の目的は、「本研究の目的は、急性期脳卒中患者に対する2週間の課題特異型トレーニングが、退院時のADL能力に及ぼす影響を、FIMを用いて明らかにすることである」となります。仮説を立てる場合は、「課題特異型トレーニングを行った群は、通常の理学療法を行った群に比べて、退院時のFIMの点数が高い」のように、結果で確かめられる形で書きます。
「〜を検討することを目的とした」のように、調べること自体を目的にする書き方は避けます。何が明らかになれば目的を果たしたことになるのかが、読み手に伝わらないからです。PICOについては「PICOによる臨床疑問の定式化」で詳しく解説しています。
目的を決めたら、FINERで見直す
研究の問いがよいものかどうかは、FINERと呼ばれる5つの観点で見直せます。臨床研究の教科書『医学的研究のデザイン』(原著 Designing Clinical Research)で紹介されてきた考え方で、日本語版の最新は『医学的研究のデザイン 第5版』(メディカル・サイエンス・インターナショナル、2024年)です。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| F(Feasible:実行できる) | 計画した期間内に必要な人数を集められるか。機器、時間、費用、技術は足りているか |
| I(Interesting:興味深い) | 自分や指導者、読み手が答えを知りたいと思える問いか |
| N(Novel:新しい) | 先行研究にない知見を加えるか |
| E(Ethical:倫理的である) | 対象者の負担やリスクが許される範囲か |
| R(Relevant:役に立つ) | 答えが出たとき、臨床や今後の研究に生かせるか |
はじめての研究では、とくにFを丁寧に見積もります。たとえば、ある病棟に急性期の脳卒中の患者さんが1か月に5人入院し、条件に合うのがその半分だとします。1か月に2.5人しか集まらないので、40人を集めるには16か月かかります。人数が集まらない計画は、途中で止まってしまいます。
方法:ほかの人が同じ研究をできるくらい具体的に書く
方法は、研究計画書の中心です。ほかの研究者が読んで同じ研究を実施できるくらい、具体的に書きます。例の研究なら、次のようになります(数値は説明のための仮のものです)。
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 研究デザイン | どの型の研究か | ランダム化比較試験 |
| 対象 | 選択基準と除外基準、募集する場所と期間 | 発症から7日以内に入院した、初発の脳卒中患者。重い認知機能障害のある人は除く |
| 介入 | 群ごとに何をするか(内容、頻度、時間、期間、実施者) | 通常の理学療法のうち1日40分を課題特異型トレーニングに置き換え、週5日、2週間行う |
| 評価項目 | 主要評価項目を1つ決め、副次評価項目と測る時点を書く | 主要評価項目は退院時のFIM運動項目の合計点 |
| 人数 | 何人集めるかと、その根拠 | 先行研究の結果から、2群の差をどのくらいと見込むかを決め、必要な人数を計算する |
| 解析 | どの統計手法で、何と何を比べるか | 2群の退院時のFIM運動項目の点数を比べる。入院時の点数の違いも考慮する |
| 期間 | 研究全体の期間とスケジュール | 倫理審査の承認と研究機関の長の許可を得てから2年間 |
介入の例で、トレーニングを「追加」ではなく「置き換え」にしているのは、2つの群で練習の時間をそろえるためです。追加にすると、トレーニングを行った群は練習の時間そのものも長くなります。退院時の点数に差が出ても、それが課題特異型トレーニングの効果なのか、練習が長かった効果なのかを区別できません。比べる相手をどう設定するかで、研究で答えられる問いが変わります。
主要評価項目を1つに決めておくのは、研究計画書と出版された論文を突き合わせたチャンらの研究が示したように、結果を見てから都合のよい項目を選ぶことを防ぐためです。評価項目が多いと、効果がなくても偶然どれかに有意な差が出ます。有意水準5%で20項目を調べれば、効果がまったくなくても、平均して1項目は偶然に有意になります。解析の方法も同じ理由で、データを集める前に決めておきます。研究デザインの種類は「臨床研究の分類(研究デザイン)」、統計手法の選び方は「パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の違い」、必要な人数の計算は「検出力とサンプルサイズの決め方:何人いれば差を見逃さないか」で解説しています。
倫理的配慮:対象者を守るための手続きを書く
人を対象とする研究では、研究対象者への説明と同意(インフォームド・コンセント)の取り方、個人情報の扱い、対象者に生じる負担とリスク、それらを小さくする対策を書きます。研究計画書は倫理審査委員会の審査を受け、研究機関の長の許可を得てから研究を始めます。介入を行う研究では、実施の前に研究の概要を公開データベース(厚生労働省のjRCTなど)に登録することも、指針で定められています。
SPIRIT 2025には、患者さんや市民が研究の計画や実施、報告にどう関わるかを書く項目が新たに加わりました。日本の倫理指針の2026年の改正でも、患者さんや市民の視点を尊重することが総則に盛り込まれています。研究の受け手である患者さんの意見をどう取り入れるかも、計画の段階で考えておくとよいでしょう。
引用文献:本文と一覧を対応させる
背景などで先行研究を引用したら、計画書の最後に引用文献の一覧をつけます。並べ方には、本文に出てきた順に番号をつける方式(バンクーバー方式)と、著者名のアルファベット順に並べ、本文には著者名と発行年を書く方式(ハーバード方式)などがあります。提出先に決まりがあればそれに従い、なければどちらか一方にそろえます。書き方の詳細は「引用文献の書き方」を参照してください。
まとめ
研究計画書は、題名、背景、目的、方法、倫理的配慮、引用文献で組み立てます。背景で示した「わかっていないこと」を目的が受け止め、目的に答えられる方法を、データを集める前に具体的に決めておくことが要です。完璧な計画を一度に書こうとせず、まず骨格を書いてみると、足りない知識や、問いそのものの弱さが見えてきます。指導者に見てもらいながら仕上げていきましょう。
さらに学びたい人へ:おすすめの本
- 『医学的研究のデザイン 第5版』(メディカル・サイエンス・インターナショナル):研究の問いの立て方から、対象者の選び方、測定、必要な人数の見積もり、研究デザインまで、研究計画に必要な考え方をひと通り学べる教科書です。
- 『臨床研究の道標 第2版』(健康医療評価研究機構、上巻・下巻):臨床で抱いた疑問を研究の問いにし、研究デザインを組み立てるまでを、これから臨床研究を始める医療者に向けて解説した本です。第2版には演習用のワークブックが付いています。
参考文献
- 文部科学省, 厚生労働省, 経済産業省. 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針. 2021年3月23日制定(2026年8月27日一部改正).
- Chan AW, Hróbjartsson A, Haahr MT, Gøtzsche PC, Altman DG. Empirical evidence for selective reporting of outcomes in randomized trials: comparison of protocols to published articles. JAMA. 2004;291(20):2457-2465. doi:10.1001/jama.291.20.2457
- Chan AW, Boutron I, Hopewell S, et al. SPIRIT 2025 statement: updated guideline for protocols of randomized trials. JAMA. 2025;334(5):435-443. doi:10.1001/jama.2025.4486
- Browner WS, Newman TB, Cummings SR, et al. Designing Clinical Research. 5th ed. Wolters Kluwer; 2022.(木原雅子, 木原正博 訳. 医学的研究のデザイン 第5版. メディカル・サイエンス・インターナショナル; 2024.)

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