繰り返しのない二元配置分散分析:個人差を除いて条件を比べられるか

繰り返しのない二元配置分散分析:個人差を除いて条件を比べられるか

カリフォルニア州のワイン品評会で、審査員たちは、同じ瓶から注いだワインを、そうとは知らされないまま3回審査していました。ワイナリーを営むRobert Hodgson(ロバート・ホジソン)が、審査長を説得してこの仕組みを取り入れました。彼のワインは、ある品評会で金賞を受け、別の品評会では低い評価でした。統計学の元大学教授だったHodgsonは、審査員が同じワインに一貫した点数をつけられないのではないかと考えました⁠[1]。数年分の結果を集計したところ、3回とも同じメダルの範囲の点数をつけた審査員は、1割ほどにすぎませんでした⁠[2]。

同じワインを3回出せば、同じ審査員の点数がどの程度ぶれるかを測れます。では、審査員とワインの組み合わせごとに点数が1つしかないとき、審査員による違いを除いて、ワインの違いを比べられるのでしょうか。

この記事の要約(押すと開閉します)
  • 定義:2つの要因の組み合わせごとに値が1つだけのデータで、それぞれの要因によって平均値が異なるかを調べる分散分析
  • 使う場面:同じ対象者を複数の条件で1回ずつ測定したデータ。対象者と条件の組み合わせごとに、値が1つになる。区画や日などのまとまりごとに、比べたい条件をすべて1回ずつ、順序を無作為に決めて行う実験も同じで、乱塊法と呼ぶ
  • 生まれた経緯:1925年にFisherが、畑の場所ごとの地力の違いを除くため、ブロックごとにすべての処理を1回ずつ置く方法を教科書で示した。ばらつきは、ブロック、処理、誤差の3つに分けて分析した。のちに、1937年にFriedmanが順位を用いる方法を、1949年にTukeyが交互作用の一部を調べる検定を示した。1954年にBoxが自由度を補正する近似を示した。1958年から1959年に、GreenhouseとGeisserが、この近似を同じ人に一連の検査を行ったデータに広げた
  • 計算:全体のばらつきを、条件、対象者、残差の3つに分け、条件の平均平方を残差の平均平方で割ってF値を求める。残差の自由度は、条件の数から1を引いた数と、対象者数から1を引いた数の積
  • 利点:対象者間の違いを残差から除くので、対象者によって値が大きく異なっても、条件の小さな差を検出しやすい。条件が2つなら、対応のあるt検定と同じ結果になる
  • 前提:交互作用がないこと、残差が正規分布に近く、残差の分散がどの条件でも等しいこと、対象者どうしが独立していること。値は間隔尺度か比率尺度のデータ。同じ対象者を複数の条件で測定する反復測定のデータでは、球面性も前提になる
  • 限界:交互作用と、偶然によるばらつきを分けられない。交互作用があると、その分も残差に含まれる。交互作用を調べるには、同じ組み合わせで2回以上測定する
  • ほかの方法:この分析の結果は、反復測定分散分析で球面性を仮定し、自由度を補正しない結果と一致する。残差が正規分布から大きく外れるときは、対象者ごとの順位を用いるFriedman検定を使う
  • SPSSでの手順:1つの値を1行に入力し、「一般線型モデル」のGLM 1変量で、交互作用を入れない主効果だけのモデルにする
  • 結果の示し方:各条件の平均値と標準偏差、F値と2つの自由度、p値、効果量とその種類を示す

繰り返しのない二元配置分散分析とは

繰り返しのない二元配置分散分析は、2つの要因の組み合わせごとに値が1つだけのデータで、それぞれの要因によって平均値が異なるかを調べる分散分析です。繰り返しなしの二元配置分散分析とも書かれます。要因とは、値を分類する条件のことです。「二元配置」は要因が2つあること、「繰り返しのない」は同じ組み合わせで値を1つしか得ないことを表します⁠[3]。

組み合わせごとに値が2つ以上あるときは、繰り返しのある二元配置分散分析を用います。ここでいう「繰り返し」は、同じ組み合わせで値を2つ以上得ることを指します。同じ対象者を複数の条件で1回ずつ測定することは反復測定と呼び、これとは別の意味です。反復測定のデータでも、組み合わせごとの値が1つなら、「繰り返しのない」にあたります。

ワインの品評会であれば、審査員とワインが2つの要因です。1人の審査員が1本のワインを1回だけ審査すれば、審査員とワインの組み合わせごとに、点数は1つずつになります。

リハビリテーションでは、同じ対象者をいくつかの条件で1回ずつ測定したデータがよくみられます。たとえば、立位で前方に手を伸ばせる距離を測る検査に、Functional Reach Test(ファンクショナル・リーチ・テスト)があります。8人がこの検査を、運動靴、裸足、スリッパの3種類の履物で1回ずつ行うと、対象者と履物の組み合わせごとに、距離が1つずつ得られます(図1)。

品評会の審査員が対象者に、ワインが履物にあたります。この記事では、説明のために作成した架空のデータを用います。履物の実際の効果を示すものではありません。

8人が、運動靴、裸足、スリッパの3種類の履物で、立位で前方に手を伸ばせる距離を1回ずつ測定した値を、対象者ごとに線で結んだ図。距離は対象者によって17.0cmから35.5cmまで大きく異なるが、多くの対象者で運動靴からスリッパへと少し短くなっている。8人の平均は、運動靴が27.7cm、裸足が27.3cm、スリッパが25.9cm

図1 8人が、3種類の履物で手を伸ばせる距離を1回ずつ測定した値。灰色の線は対象者ごとの値、緑の線は8人の平均。説明のための架空のデータ

繰り返しのない二元配置分散分析は、比べたい条件のほかに、値を大きく左右するまとまりがあるときに必要になります。図1では、手を伸ばせる距離が対象者によって大きく異なり、対象者ごとの3回の平均値は18.8cmから35.0cmまで広がっています。一方、同じ対象者の中での3回の違いは、1cmから3.5cm程度です。

対象者間の違いを考慮せずに履物を比べると、対象者間の違いは偶然によるばらつきとして扱われ、履物の小さな差は検出しにくくなります。値を大きく左右するまとまりを2つめの要因として分析に入れると、その違いを偶然によるばらつきから取り除けます。

値を大きく左右するまとまりを、ブロックと呼びます。ブロックごとに、比べたい条件をすべて1回ずつ、順序を無作為に決めて行う実験計画を、乱塊法と呼びます⁠[4, 5]。

乱塊法で畑の実験を行うときは、土地をいくつかの区画に分け、1つの区画の中にすべての品種を1つずつ植えます。こうすると、区画どうしの土壌の違いを、品種の比較から取り除けます。同じ対象者を各条件で1回ずつ測る場合は、対象者1人ひとりがブロックにあたり、分析は乱塊法と同じになります⁠[6]。

繰り返しのない二元配置分散分析が生まれるまで

いまの繰り返しのない二元配置分散分析は、畑の試験のために考えられたブロックの分析がもとになっています⁠[7]。そのあと、3つの前提について、前提を確かめる方法と、前提が成り立たないときに使う方法が、別々に加わりました。3つの前提は、正規分布、交互作用、同じ対象者の値どうしの関係です。図2に、主な出来事を年の順に示します。

繰り返しのない二元配置分散分析が生まれるまでの年表。各行に、そのとき問題になったことと、それに答えた方法を示す。1925年、Fisher、畑の地力が場所によって異なるため、畑をブロックに分け、ばらつきをブロック、処理、誤差に分ける分析を示した。1937年、Friedman、分散分析が正規分布を仮定しているため、ブロックごとの順位で比べる方法を示した。1949年、Tukey、組み合わせごとに値が1つでは交互作用を調べられないため、積の形の交互作用を自由度1で調べる検定を示した。1954年、Box、誤差どうしに相関がある場合のために、F値の自由度に係数εを掛けて近似する方法を示した。1958年から1959年、GreenhouseとGeisser、同じ人の値どうしが強く相関するデータのために、データからεを推定して自由度を補正する方法を示した

図2 繰り返しのない二元配置分散分析が生まれるまでの主な出来事。矢印の左はそのとき問題になったこと、右はそれに答えた方法。緑は、いまの計算と前提の確かめ方のもとになった段階。灰色は、前提が成り立たないときに使う別の方法のもとになった段階

英国の統計学者Ronald Fisher(ロナルド・フィッシャー)は、ロザムステッド農事試験場で、畑の試験の計画を見直していました⁠[8]。Fisherが分散分析を考えた経緯は、一元配置分散分析の記事で説明しています。Fisherは1925年の教科書で、試験に使う土地は地力が一様でなく、場所ごとに、しばしば複雑に変わるとみなしてよい、と書いています⁠[7]。

Fisherは、場所ごとの地力の違いを除くため、畑をいくつかのブロックに分け、どのブロックにも、比べる処理を1回ずつ置く方法を示しました⁠[7]。Fisherによれば、ブロックに分けると、土地の不均一の影響の多くを除き、観測の正確さを高められます⁠[7]。ブロックの中での処理の配置は、無作為に決めます⁠[7]。無作為に決める理由は、ランダム化比較試験の記事で説明しています。

Fisherの分析では、ばらつきを、ブロックの間の違い、処理による違い、実験の誤差の3つに分けました⁠[7]。Fisherは、すべての区画を同じに扱って収量を測った均一性試験のデータで、この方法を試しました⁠[7]。ブロックの間の違いははっきり有意で、ブロックの違いを分けると、比較の正確さが大きく上がりました⁠[7]。

米国の経済学者Milton Friedman(ミルトン・フリードマン)は、分散分析には正規分布の仮定が暗に含まれている、と考えました⁠[9]。そこで1937年、この仮定を避けるために、順位を用いる方法を発表しました⁠[9]。この方法は、ブロックごとに条件の値に順位をつけ、その順位で比べるもので、いまFriedman検定と呼ばれています⁠[6, 9]。

組み合わせごとに値が2つ以上あれば、交互作用は繰り返しのある二元配置分散分析で調べられます。しかし、値が1つだけのときは、この方法を使えません⁠[10]。米国の統計学者John Tukey(ジョン・テューキー)は1949年、2つの要因の効果の積の形をした交互作用に絞って調べる検定を示しました⁠[10, 11]。

2006年の総説によれば、値が1つのデータで交互作用を調べる方法は、Tukeyの検定から始まりました。その後、ほかの形の交互作用を調べる方法も作られました⁠[10]。

分散分析のF検定は、誤差の分散が等しく、誤差どうしに相関がないことを前提にしています⁠[12]。英国の統計学者George Box(ジョージ・ボックス)は1954年、二元配置で、この前提が成り立たないときの影響を調べました⁠[12]。

Boxは、あとの節で説明する球面性が成り立たないと、F検定で誤って有意となる確率が高くなることを示しました⁠[13]。そして、F値の2つの自由度に係数εを掛けて小さくすると、F分布で近似できることを示しました⁠[13, 14]。

米国の統計学者Samuel Greenhouse(サミュエル・グリーンハウス)は、国立精神衛生研究所で、正常な加齢の研究に加わりました。伝記によれば、Greenhouseは、強く相関する心理学のデータを分析する方法が必要だと考えました⁠[15]。そこで、米国の統計学者Seymour Geisser(シーモア・ガイザー)とともに、Boxの結果を広げる論文を1958年と1959年に発表しました⁠[16, 17]。

GreenhouseとGeisserは、εがとりうる最小の値を示しました⁠[13, 16]。そして、データからεを推定して、自由度を補正する方法を示しました⁠[15, 17]。εは、球面性がどの程度成り立たないかを表す値です⁠[13]。この補正は、いまでは反復測定の分析を行うほとんどの統計ソフトに備わっています⁠[15]。

次の節で説明する計算のうち、ばらつきを3つに分け、対象者間の違いを残差から除く手順は、Fisherが畑のブロックの違いを除いた分析に由来します⁠[6, 7]。あとから加わった方法のうち、Friedman検定は正規分布の仮定を避けるために、Tukeyの加法性の検定は交互作用を調べるために作られました⁠[9, 10]。

反復測定分散分析で自由度を補正する方法は、Boxが二元配置で示した近似がもとになっています⁠[13, 14]。GreenhouseとGeisserは、この近似を、同じ人に一連の検査を行ったデータに広げました⁠[16, 17]。

繰り返しのない二元配置分散分析の計算

計算では、全体のばらつきを、条件による部分、対象者による部分、残りの部分の3つに分け、条件の平均平方を残りの部分の平均平方で割ってF値を求めます。ばらつきの大きさは、平均値からの偏差を2乗して合計した平方和で表します。自由度は、自由に値をとれるデータの個数です。平方和を自由度で割った値が、平均平方です。平方和の分け方は、一元配置分散分析と同じ考え方です。

残りの部分を、残差と呼びます。ある値の残差は、その値からその対象者の平均値と、その履物の平均値を引き、全体の平均値を足し戻した値です。対象者間の違いと履物の効果だけでは説明できない部分にあたります。自由度は、履物が3から1を引いて2、対象者が8から1を引いて7、残差が2と7の積で14です。3つを合計した23は、全データ数24から1を引いた数と等しくなります⁠[18]。

図1の例では、平方和は、履物が14.31、対象者が623.99、残差が8.85でした。平均平方は、履物が14.31を2で割って7.16、残差が8.85を14で割って0.632です。F値は7.16を0.632で割った値で、丸める前の数で計算すると11.32になります。

履物による差がないと仮定すると、F値は自由度2と14のF分布に従います。この分布に当てはめると、p値は0.001でした。対象者についてもF値とp値が計算されます。ただし、この例で知りたいことは履物の差です。

p値は、真の差がないと仮定したときに、観察された差以上の差が偶然に生じる確率です。p値が事前に決めた基準より小さいとき、差は有意であるといいます。この基準を有意水準といい、5%がよく用いられます。有意水準の考え方は、統計的仮説検定の記事で説明しています。

繰り返しのない二元配置分散分析の利点

対象者間の違いを残差から取り除くので、対象者によって値が大きく異なっても、条件の小さな差を検出しやすくなります。米国のペンシルベニア州立大学は、実験計画法の講義資料を公開しています。この資料によれば、ブロックを分析に入れると残差のばらつきが小さくなり、条件の差を調べる検出力が上がります⁠[18]。検出力とは、真の差があるときに、それを有意として検出できる確率のことです。

同じ24個の距離を、対象者間の違いを考慮せずに、履物ごとの3群として一元配置分散分析にかけてみます。すると、対象者による平方和623.99は、そのまま残差に入ります。残差の平均平方は30.1になり、F(2, 21)=0.24、p=0.79でした。8人の例では、対象者を要因に入れないとp値は0.79、入れると0.001でした。

図3の左は、値をそのまま履物ごとに並べたもの、右は対象者ごとに、その人の3回の平均値を引いたものです。右の図では、運動靴からスリッパへと距離が短くなる差がはっきりわかります。これは、対応のあるt検定で対象者ごとに差をとるのと同じしくみです。

左は、24個の距離をそのまま履物ごとに並べた図で、どの履物の値も17cmから35cmほどまで広がり、平均の差は小さく見える。右は、対象者ごとにその人の3回の平均を引いた値で、運動靴はプラス0.8cm前後、裸足はプラス0.3cm前後、スリッパはマイナス1.1cm前後に集まり、履物の差がはっきりわかる

図3 左は、距離をそのまま履物ごとに並べた値。右は、対象者ごとに、その人の3回の平均を引いた値。横の線は8人の平均。図1と同じ架空のデータ

条件が2つだけであれば、この分析は対応のあるt検定と同じ結果になります。運動靴とスリッパだけで計算すると、対応のあるt検定は、t(7)=6.81、p=0.0003でした。同じ2列で繰り返しのない二元配置分散分析を行うと、F(1, 7)=46.35で、p値は同じ0.0003です。

条件が2つのとき、F値は対応のあるt検定のt値の2乗に一致します。46.35は、丸める前のt値6.808を2乗した値です(筆者の計算)。繰り返しのない二元配置分散分析は、対応のあるt検定を3つ以上の条件に拡張したものと考えることができます。

繰り返しのない二元配置分散分析の前提

前提は、交互作用がないこと、残差が正規分布に近く、残差の分散がどの条件でも等しいこと、対象者どうしが独立していることです。値は、手を伸ばせる距離のように差の大きさに意味がある、統計データの尺度水準でいう間隔尺度か比率尺度のデータです。

交互作用とは、一方の要因の効果が、もう一方の要因の水準によって異なることです。水準は、要因の中の個々の条件のことで、運動靴、裸足、スリッパがそれにあたります。

交互作用がないとは、履物による差が、どの対象者でも同じ大きさで現れることです。この分析では、1つの値を、全体の平均値に対象者の効果と履物の効果を足したものとみなします。そのため、交互作用がないという前提を、加法性とも呼びます⁠[18]。

正規分布は、平均を中心に左右対称に広がる釣鐘形の分布です。正規分布に近いかどうかは、距離そのものではなく、残差について確認します。残差の分布は、ヒストグラムなどの図で、大きく偏っていないか、外れ値がないかを確認します。検定で確かめる方法は、Shapiro-Wilk(シャピロ・ウィルク)検定の記事で扱っています。

対象者どうしが独立とは、ある対象者の値が、ほかの対象者の値に左右されないことです。同じ対象者の3つの値は互いに似ますが、その分は対象者の要因として取り除きます。

同じ対象者を条件ごとに測定するデータでは、球面性も前提になります。球面性とは、条件の組ごとに対象者ごとの差をとったとき、その差の分散がどの組でも等しいことです⁠[19]。運動靴と裸足の差、運動靴とスリッパの差、裸足とスリッパの差のばらつきが、同程度であることを求めます。球面性が成り立たないのに補正しないと、p値は本来より小さく算出されます⁠[19]。条件が2つだけなら、差は1組しかないので、球面性は問題になりません。

同じ対象者を3つの条件で順に測定するときは、測定の順序にも注意が必要です。全員が運動靴、裸足、スリッパの順に測定すれば、慣れや疲労による変化が、履物の差に混ざるおそれがあります。順序を対象者ごとに変えて、その影響が特定の条件に偏らないようにする考え方は、クロスオーバー試験と同じです。

繰り返しのない二元配置分散分析の限界

繰り返しのない二元配置分散分析では、交互作用と、偶然によるばらつきを分けることができません⁠[4]。交互作用の大きさは、同じ組み合わせの中のばらつきと比べて、はじめて判断できます。組み合わせごとに値が1つしかなければ、比べる相手がありません。交互作用を分析に入れると、残差の自由度が0になり、F値を計算できなくなります⁠[20]。そのため、交互作用はないと仮定して計算します。

交互作用が実際にあれば、その分も残差に含まれます。ペンシルベニア州立大学の講義資料によれば、この分析の残差は、条件の効果が対象者によってどの程度異なるかを表します⁠[18]。残差の平均平方が大きくなれば、F値は小さくなり、条件の差を見逃しやすくなります。

ワインの品評会での調べ方は、同じ組み合わせで2回以上測定すると何がわかるかを示しています。審査員は4人ずつの班に分かれ、班ごとに30本のワインが出されました。その中に、同じ瓶から注いだワインが3つ含まれていました⁠[2]。

同じ審査員が同じワインを3回審査した点数があれば、その審査員の中のばらつきを、ワインの違いと分けて測定できます。別の1割ほどの審査員は、同じワインに、銅賞から金賞までの異なる点数をつけたことがありました。分散分析の結果、ワインの質だけで賞を決めていたといえる審査の班は、半数ほどでした⁠[2]。

ワインを1回ずつ審査した点数でも、どのワインにも高めの点数をつける審査員の癖と、ワインごとの質の違いは分けられます。しかし、ある審査員があるワインにだけ高い点数をつけた場合、それがそのワインへの好みによるのか、その場のばらつきによるのかは分けられません。この好みが、審査員とワインの交互作用にあたります。履物の例であれば、ある対象者にだけスリッパがとくに合わない、といった違いです。

交互作用の一部を調べる方法として、先に述べたTukeyの加法性の検定があります。この検定は、対象者の効果と条件の効果の積の形をした交互作用だけを、自由度1で調べます⁠[11, 20]。図1の例では、F(1, 13)=0.29、p=0.60でした(筆者の計算)。

Tukeyの加法性の検定は、決まった1つの形の交互作用しか調べません。そのため、Tukeyの検定で有意にならなくても、交互作用がないとはいえません。交互作用そのものを調べたいときは、同じ組み合わせで2回以上測定し、繰り返しのある二元配置分散分析を用います⁠[4]。

ほかの分析方法との違い

同じ対象者のデータは反復測定分散分析でも分析でき、球面性を仮定して自由度を補正しない結果は、この分析の結果と一致します(文献6、筆者の計算)。反復測定分散分析は、同じ対象者を複数の条件や時点で測定したデータのための分散分析で、対応のある一元配置分散分析とも呼ばれます。結果が一致する理由は、どちらも、同じ対象者を条件ごとに1回ずつ測定したデータで、対象者1人ひとりをブロックとみなす同じ計算になることです。

ただし、反復測定分散分析には、球面性を確認し、成り立たなければ自由度を補正する手順が用意されています。補正の方法には、Greenhouse-Geisser(グリーンハウス・ガイザー)の方法などがあります⁠[19, 21]。補正した結果は、二元配置分散分析の結果とは一致しません。図1の例では、補正しないp値が0.0012、Greenhouse-Geisserの方法で補正したp値が0.0037でした(筆者の計算)。

残差が正規分布から大きく外れるときや、外れ値があるときは、Friedman(フリードマン)検定を用いる方法があります。Friedman検定は、対象者ごとに3つの条件の値に順位をつけ、その順位で比べる検定で、繰り返しのない、ブロックごとのデータのための方法です⁠[9, 22]。図1の例では、p値は0.004でした(筆者の計算)。

順位を用いる検定の考え方は、パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の記事で扱っています。ほかの分析方法との違いを、表1にまとめました。

分析方法使うデータと調べること
一元配置分散分析異なる対象者からなる3つ以上の群で、群の平均値の違いを調べる。同じ対象者を複数の条件で測定したデータには用いない
繰り返しのない二元配置分散分析2つの要因の組み合わせごとに値が1つのデータで、それぞれの要因による平均値の違いを調べる。交互作用は調べられない
繰り返しのある二元配置分散分析組み合わせごとに値が2つ以上あるデータで、2つの要因の効果と交互作用を調べる
反復測定の一元配置分散分析同じ対象者を3つ以上の条件や時点で測定したデータで、条件による平均値の違いを調べる。球面性を確認し、成り立たなければ自由度を補正する。補正しない結果は、繰り返しのない二元配置分散分析と一致する
Friedman検定繰り返しのない、ブロックごとのデータで、値の代わりに対象者ごとの順位を用いて比べる。残差が正規分布から大きく外れるときに用いる
対応のあるt検定同じ対象者を2つの条件で測定したデータで、平均値の差を調べる。条件が2つのときの繰り返しのない二元配置分散分析と同じ結果になる

表1 繰り返しのない二元配置分散分析と、ほかの分析方法の違い(文献4、6、22をもとに作成)

SPSSでの手順と出力の見方

SPSSでは、1つの値を1行に入力し、対象者と条件を表す2つの列を作って、交互作用を入れない主効果だけのモデルで分析します。主効果とは、1つの要因だけによる効果のことです。図1の例であれば、対象者の番号、履物の種類、手を伸ばせる距離の3つの列を作り、24行に入力します。

SPSSでは、調べたい値を従属変数、値を分類する要因を因子と呼びます。メニューの「分析」から「一般線型モデル」を選び、従属変数が1つのときの分析であるGLM 1変量の画面を開きます⁠[21]。GLMは、一般線型モデルの英語の略です。従属変数の欄に距離を、固定因子の欄に履物と対象者を移します。

次に、GLM 1変量のモデルを指定する画面で、モデルに入れる項目を自分で決める設定を選び、履物と対象者を主効果として入れます。IBMの説明書によれば、すべての因子によるモデルには、因子どうしの交互作用も含まれます⁠[21]。交互作用まで含むモデルのままでは、F値を計算できません⁠[20]。画面や欄、出力の表の名前は、SPSSの版によって少し異なることがあります。

出力では、「被験者間効果の検定」という表の、履物の行を見ます。図1の例では、平方和14.31、自由度2、F値11.315、有意確率.001で、残差にあたる誤差の行の自由度は14です。オプションで効果サイズの推定値を選ぶと、効果量の1つである偏η²(偏イータ2乗)も出力されます⁠[21]。

同じ対象者のデータは、「分析」→「一般線型モデル」→「反復測定」でも分析できます⁠[21]。この場合は、1人を1行とし、運動靴、裸足、スリッパの距離を3つの列に入力します。被験者内因子として履物を定義し、水準の数を3として、3つの列を割り当てます。

反復測定の出力には、Mauchly(モークリー)の球面性の検定と、自由度を補正した結果も含まれます⁠[21]。球面性を仮定した行のF値と有意確率は、GLM 1変量で求めた値と一致します(筆者の計算)。

結果の書き方

結果は、各条件の平均値と標準偏差、F値と2つの自由度、p値、効果量とその種類で示します。有意な結果は、いずれかの履物の平均値が異なることを示すにとどまります。どの履物の間に差があるかは、誤って有意となる確率を抑えながら2つずつ比べる多重比較で調べます。多重比較の方法と注意点は、一元配置分散分析の記事で扱っています。

結果に書く項目と、それぞれを書く理由は、表2にまとめました。図1の例であれば、次のように書けます。

手を伸ばせる距離は、運動靴で27.7cm(標準偏差5.1)、裸足で27.3cm(5.8)、スリッパで25.9cm(5.5)だった。対象者を要因に入れた繰り返しのない二元配置分散分析で、履物の違いは有意だった。F(2, 14)=11.32、p=0.001、偏η²=0.62、一般化η²=0.022だった。

多重比較をBonferroni(ボンフェローニ)の方法で調整すると、運動靴とスリッパの差は1.8cm、95%信頼区間は1.0〜2.6cmだった。

効果量は、効果の大きさを、対象者数に左右されにくい形で表した値です。η²の仲間は、全体のばらつき(平方和)のうち、その要因で説明される割合を表します。偏η²は、条件の平方和を、条件の平方和と残差の平方和の合計で割って求めます。一般化η²は、対象者間の違いによるばらつきも分母に含めます⁠[23]。

同じ対象者を測定する計画では、一般化η²を示すよう勧める解説があります。その解説は、偏η²もあわせて示すと読者の助けになる、とも述べています⁠[23]。対象者間の違いが大きい図1の例では、偏η²が0.62、一般化η²が0.022と、大きく異なります。どちらの効果量かが書かれていなければ、読者はほかの研究と比較できません。

上の例文の信頼区間は、3つの組を比べることを考慮し、Bonferroniの方法で幅を広げたものです。調整しない95%信頼区間は1.2〜2.4cmで、それより狭くなります(筆者の計算)。

有意であっても、差が臨床的に意味のある大きさとは限りません。運動靴とスリッパの差の1.8cmについては、臨床的に意味のある最小差が目安の1つになります。ただし、1.8cmのようなグループの平均の差では、重要かどうかは最小差と比べるだけでは決まりません。

書くこと理由と書き方
各条件の平均値と標準偏差値の水準とばらつきを示す
分析の名称と、対象者を要因に入れたこと同じ値でも、対象者を要因に入れるかどうかで、結果が大きく変わる
交互作用を仮定しなかったこと繰り返しがないので、交互作用は調べられない。Tukeyの加法性の検定などで確かめたときは、その結果も書く
F値と2つの自由度、p値「p<0.05」とだけ書かず、p=0.03のように値を書く
効果量とその種類偏η²か一般化η²かで、値が大きく違う⁠[23]
差の推定値と95%信頼区間差の大きさと、推定値のぶれの幅を示す⁠[24]
球面性の確認と補正同じ対象者を複数の条件で測定したデータを、反復測定分散分析で分析したときに書く

表2 結果に書くことと理由(文献23、24をもとに作成)

まとめ

繰り返しのない二元配置分散分析は、組み合わせごとに値が1つしかないデータで、2つの要因の効果を調べる方法です。各条件で同じ対象者を1回ずつ測定した場合、対象者を要因に入れて分析すれば、対象者間の違いを残差から除けます。そのため、対象者によって値が大きく異なっても、条件の小さな差を検出しやすくなります。

対象者間の違いを除く計算は、Fisherが畑の場所ごとの地力の違いを除くために示した、ブロックの分析に由来します。対象者1人ひとりが、畑のブロックにあたります。8人の手を伸ばせる距離では、18.8cmから35.0cmまでの対象者間の違いを除くと、2cmに満たない履物の差が有意になりました。

一方で、1回ずつの値からは、ある対象者にだけある履物が合わないといった交互作用と、偶然によるばらつきを分けられません。ワインの品評会では、同じワインを3回出したことで、同じ審査員の中のばらつきの大きさを測定できました。

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参考文献

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