コホート内症例対照研究


 コホート内症例対照研究とは臨床研究方法の一つです。言葉通り,コホート研究内で症例対照研究を行うことです。以下にその特徴として方法と利点と問題点をまとめました。

方法

 コホート内症例対照研究は,前向きコホート研究の参加者の中から, 追跡調査期間中に特定の疾病にかかった者の全員を症例として選び,それ以外の参加者の一部から対照を選び,症例対照研究としての分析を行います。コホート集団を設定した時に採取し保存しておいた生体試料 (血液検体など) を測定して,症例と対照を比較する場合にこの方法が使われます。例えば,コホート集団から発生した乳がん症例を選び出し,さらに性別や年齢をマッ チさせた対照を選んで,凍結保存しておいた血清中のPCB濃度を測定します。この時,PCBの血清濃度が対照より乳がん症例で高ければ,PCBの乳がんリスク上昇作用が示唆されることになります。

利点と問題点

利点

 前向きコホート研究の参加者全員について生体試料を測定すると費用がかかりますが,症例や対照として選んだ一部の参加者の生体試料だけを分析すれば,安価に研究を行えます。また,対象者が疾病に罹患する以前に生体試料を採取し保存しておくので,仮説要因 (生体指標) と疾病の時間的前後関係を正しく評価することができます。さらに,交絡要因に対する情報を最初に調査票などで収集しておけば,データ解析の段階で統計的な補正を行うこともある程度可能です。

問題点 (欠点)

 多数の集団を長期間にわたり追跡しなければならないという前向きコホート研究と共通の問題点に加えて,多数のコホート参加者から生体試料を採取し,後の分析に備えて凍結保存しなければならないため,多大な手間と費用がかかります。また,情報が収集されていない交絡要因については,その影響を統計的に補正することはできません。


コメント

 大規模なコホート研究を企画していても,社会的な背景から早期に成果を求められることもあると思います。そういった場合にこのデザインで研究を進め,成果を継続して出していくことも,長く研究を続けるためには大切かもしれません。

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