超音波治療は急性期の足関節捻挫に効果なし?


今回紹介する文献
Therapeutic ultrasound for acute ankle sprains
(Van den Bekerom et al., Cochrane Database Syst Rev. 2011 ; 6)

 コクラン・ライブラリーから急性期の足関節捻挫に対する超音波治療の効果についてのシステマテック・レビューを紹介します。

6件のランダム化比較試験が対象

 網羅的な文献検索の結果,6つのランダム化比較試験がみつかりました(患者さんの総数は606名)。それらの内5つの研究では,超音波刺激とSham刺激(患者に刺激していると思わせる)を比較していましたが,Sham刺激と比べて有意な治療効果は認められなかったそうです。また,3つの研究では超音波治療とそれぞれ別の治療法(固定療法,NSAIDゲル,電気療法)を比較していましたが,1つは固定療法と比べて超音波治療の治療効果を支持する報告,残り2つは電気療法やNSAIDゲルと比べると治療効果が乏しいという報告でした。

超音波治療に特出した効果はなかった

 結局,超音波治療の治療効果(疼痛,腫張,活動,歩行能力,スポーツ,病気による休暇,可動域に対する改善効果など)はSham刺激や他の治療法と比べて有利であるとはいえず,急性期の足関節捻挫に対する超音波治療は推奨されないと結論づけられました。ただし,このレビューではこれら6つの研究に研究方法と結果がしっかりと書かれていなかったために,どの程度バイアスの影響があるかを評価することできなかったそうです。

コメント

 急性期の捻挫ということで,疼痛軽減や治癒促進を狙って超音波治療を適用するセラピストも多いのではないでしょうか。しかし,残念ながら今回のレビューでは超音波治療を推奨しないと結論づけられました。一方で,今回のレビューで採用された論文が6文献と少なく,加えてそれら文献についてもバイアスなど研究の質を正しく評価できないレベルの報告である点がとても気になります。もしかすると,今後,研究の質が高い(デザインや規模,報告の正確性などが一定水準を満たしている)研究結果が増えてくると,この結論も変わってくるかもしれません。

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