こんにちはCharcot(@StudyCH)です。
二点識別覚は複合感覚の一つで、その検査はしばしば臨床で行われることもあります。しかしながら、二点識別覚について良く理解して検査を行っている方は少ないのではないでしょうか。
今回は二点識別覚の定義や中枢神経における責任領域、検査の方法についてまとめたいと思います。
二点識別覚とは
二点識別覚は複合感覚と呼ばれ、体性感覚の時間的・空間的識別能を示すものです。時間的二点識別覚とは、同じ部位に短い時間間隔で2回刺激を与えた時に2回と感じられるか判断できる能力を指します。
空間的二点識別覚とは、皮膚に二点同時刺激を与えた時に二点と感じられるかどうかを判断できる能力を指します。一般的に空間的な二点識別覚は、臨床的検査方法として広く用いられています。
二点識別覚の責任領域
空間的二点識別覚と時間的二点識別覚とでは、脳内の責任領域は異なるようです。空間的な二点識別は、体性感覚野 (SⅠ) と二次体性感覚野 (SⅡ) を経て、inferior parietal lobule (IPL) で情報が処理されると言われています。
特に左半球のIPLは、空間的な二点識別において重要な役割をはたすことが報告されています (Akatsuka K, Neuroimage, 2008)。その一方で、時間的な二点識別は前補足運動野が重要な役割を果たすと言われています。
二点識別覚検査の方法
二点識別覚の検査は、臨床では一般的に皮膚の空間的二点識別覚に対して行われます。以下に方法や注意点、指標となる正常値について述べます。
方法・手順
(1) コンパスやノギスを使って皮膚上の2点を同時に触れたり1点を触れたりします。
(2) 始めはデモンストレーションとして開眼で (1) を行います。
(3) 対象者が検査の方法に慣れてきたら閉眼で (1) を行います。
(4) 閉眼時に2点と感じた最小距離を測ります (数回計測してそれらの平均値を求めます)。
注意点
- 2点刺激は体の長軸に沿って与えて,必ず2点同時に触れるようにして下さい。
- 二点識別覚の閾値は変動することが知られています。2点の刺激と1点の刺激を混ぜながら数回計測して,それらの平均値を求めるようにして下さい。
- 検査結果は環境に左右されます。同一対象者で時間経過を追う時も必ず同じ環境で検査して下さい。
刺激の与えかた
二点識別覚は刺激の与え方によって検査結果に影響を与えることが知られています(Yokota et al)。刺激の強さや速度によって影響を受けるのだとすれば、信頼性に乏しく臨床で用いる検査としてこれほど不安定なことはありませんし、装置を用いてまで評価する意義があるのか。二点識別覚検査の是非に結論を得るためには、さらなる知見が必要なようです。
標準値
検査の標準値はおおむね以下の表の通りです。これに当てはまらなければすなわち異常であるというわけではありません。二点識別覚は環境や個人要因に左右されやすい感覚です。標準値は参考程度に留めて下さい。
身体部位 | 標準値 |
口唇 | 2~3mm |
指尖 | 3~6mm |
手掌・足底 | 15~20mm |
手背・足背 | 30mm |
脛骨面 | 40mm |
背部 | 40~50mm |
まとめ
二点識別覚は、複合的な体性感覚で、厳密に言えば空間的なものと時間的なものの2種類に分けられます。一般的に二点識別覚検査として行われているものは空間的二点識別覚の検査となります。
二点識別覚の中枢については未だ不明な点も多いですが、今の所、IPLが責任領域として重要であると考えられています。
このような複合感覚の評価は解釈が難しく、臨床上漠然と評価されていることが多い検査です。
ただ、本来患者さまに対して検査を行うのであれば、この検査によって何が評価できるのか、検査結果がどのような意味を持つのかを考えていかなければなりません。