エビデンス・グレーディング:研究デザインの重要性


 昨今,研究デザインによってエビデンス・グレーディング(grading : 格付け)がなされるようになりました。エビデンス・グレーディングを知るによって,研究の際にデザインを考慮したり,EBMを実践するときの判断基準に活かせます。エビデンス・グレーディングの意味や,実際の格付けの順序などを学びましょう。

エビデンス・グレーディングとは?

 エビデンス・グレーディングは,研究デザイン毎に研究の質を格付けすることです。これは,生理学や解剖学のような基礎研究ではなく,臨床研究に適応されます.研究の質を格付けすることで,臨床で医療従事者がエビデンスを使用する際の判断基準になります。ここ細菌で,文献の量は爆発的に増えてきていて,これらを整理・構築するために広ってきました。

研究の格付け順序

 基本的には,真実に最も近い結果が得られる研究デザインが上位に格付けされます.例えば,最も交絡やバイアスなどの影響が少ない研究デザインはランダム化比較試験(RCT)です。したがって,多数のRCTに基づいたシステマテックレビュー(メタアナリシス)が最も真実を示す可能性が高いものとして位置づけられています。ついで,単独のRCT,非ランダム化比較試験,観察研究と続き,最も下に位置づけられているのが患者データに基づかない専門家委員会や専門家個人の意見となります。

 以下に治療の有効性においてエビデンス・グレーディングが高い順に研究デザインを並べます(引用:財団法人厚生統計協会:図解 国民衛生の動向,p12,2000)。

エビデンス・グレーディング

  1. システマテック・レビューまたはメタ・アナリシス
  2. 1つ以上のランダム化比較試験による
  3. 非ランダム化比較試験による
  4. 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)
  5. 記述研究(症例報告や症例集積)
  6. 患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見

エビデンス・グレーディングの実際

 実際には,倫理的に介入研究が行えないこともあり,必ずしもランダム化比較試験が最上級のエビデンス・グレーディングだといえない場合もあります。また,エビデンス・グレーディングが低いからといって,患者さんに適用できないわけでもありません。患者さんによっては高いエビデンスを適用できない方もいるので,患者さんの状況を把握した上で,今あるエビデンスの中でより効果を得られるものを適用する必要があるかと思います。

まとめ

 臨床研究に取り組む場合は,このエビデンス・グレーディングを考慮してデザインを決めることが大切です。また,EBMの実践でエビデンスを使う場合も,エビデンス・グレーディングの意味を理解して患者さんに最も有効的なエビデンスを適用していく必要があります。しかし,この格付だけを基準に盲目的に患者さんに適用してはいけません。あくまで,患者ここの状況に合わさた実践が重要です。

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