脳卒中リハビリテーションに用いる評価指標


 質の高いリハビリテーションを提供するためには,臨床で脳卒中患者さんの経過を客観的に評価することが大切になります。この記事では,脳卒中患者さんの評価法のうち,信頼性 (誰が採点しても同じ点になる,同じ検者が 2 回採点しても同じ点になる) や妥当性 (測定すべき内容を測定している) が比較的に高いものについてまとめました。

総合評価スケール

Fugl-Meyer assessment

 上肢運動機能66点,下肢運動機能34点,バランス14点,感覚24点,関節可動域・疼痛88点からなる脳卒中の総合評価です.信頼性や妥当性を検証した報告が多く,比較的高い水準の評価法です。詳しくは「Fugl-Meyer assessment(FMA)」を参照して下さい。

Stroke Impairment Assessment Set (SIAS)

 麻痺側運動機能,筋緊張,感覚,関節可動域,疼痛,体幹機能,高次脳機能, 非麻痺側機能からなる機能障害の総合評価です。信頼性や妥当性を検証した報告が多く,その水準も必要十分です。ただし,日本で開発されたスケールで,国外ではあまり活用されていません。

脳卒中重症度スケール (JSS)

 意識,言語,無視,視野,眼球運動,瞳孔,顔面麻痺,足底反射,感覚, 運動の得点を統計的に算出された重み付けにより合計する評価法です。信頼性や妥当性を検証した報告多くありません。活用例も他のスケールと比べると少ないように感じます。

NIH stroke scale

 意識,瞳孔反射,注視,視野,顔面神経,上肢運動,下肢運動,足底反射,失調,感覚,無視,構音,失語症を 0 点から 2 ~ 4 点で評価する方法です。信頼性や妥当性を検証する報告があり,いずれも許容範囲程度の水準です。詳しくは「NIH stroke scale(NIHSS)」を参照して下さい。

ADL評価スケール

Functional Independence Measure (FIM)

 世界的に普及しているADL評価法です。18項目各々を1点 (全介助) から7 点 (自立) に採点し,合計点を算出します。13個の運動項目と5個の認知項目を分けて使用する例もあります。信頼性や妥当性は十分に検証済みで,特に信頼性については多くのメタアナライシス研究で裏付けられています。詳しくは「Functional Independence Measure(FIM)」を参照して下さい。

Barthel Index

 FIMより簡便に行えるADL評価法です。ADLの10項目を2 ~ 4段階で採点し100点が完全自立となります (英国では20点満点).各項目の自立の点数が異なることで項目の経験的な重み付けになっているのが特徴です。信頼性や妥当性は十分に検証済みです。詳しくは「Barthel Index(BI)」を参照して下さい。

麻痺・運動機能評価スケール

Brunnstrom stage

 中枢神経麻痺の運動パターンによる評価法です。上肢,手指,下肢に分けてStage 1 : 完全麻痺からStage 6 : 分離運動可能までの6段階に評価します。信頼性や妥当性を検証した報告はみあたりません。しかし,Brunnstrom stageの基準がFugl-Meyer assessmentの上肢肩/肘/前腕と下肢股/ 膝/足の項目,Chedoke-McMaster stroke assessmentのImpairment項目に使われており,これらの評価法の信頼性や妥当性は検証済みです。つまり,間接的にBrunnstrom stageの信頼性や妥当性も検証されているといえます。SIASの 運動機能の項目との相関も認められています。

Ashworth scale & modified Ashworth scale

 筋緊張の亢進を他動運動での抵抗感で分類する評価方法です。筋緊張が亢進していない0から屈曲伸展の不可能な4までの5段階。Modified Ashworth scaleでは,1と2の評価段階の間に1+が増えます。信頼性が低いとする報告もあります。詳しくは「Modified Ashworth Scale (MAS)」を参照してください。

臨床研究への活用

 今回まとめた各評価法は,程度の差はあれど信頼性や妥当性が検証済みのため,臨床研究に用いることができます。例えば,特定の介入をした際に,SIASがどのように変化して,FIMが何点から何点に上がったなど,介入結果を客観的に示す指標になりうるのです。病院内で評価法を統一して,正確な記載を心がけていれば,それだけで研究に耐えうるbig dataが構築されていきます。