脳卒中患者の肩痛の程度は,肩の構造的異常の程度とは関連しない?


今回紹介する文献
MRI Findings in the Painful Poststroke Shoulder 
(Shah et al., Stroke. 2010 ; 41 : 2402-2448)

 脳卒中患者の肩痛に関する断面研究を紹介します。

肩の痛みと構造的異常が一致しない場合がある

 肩に痛みのある脳卒中患者89名の肩をMRIで撮影して,構造上の異常が調べられました。結果は,35%の患者で回旋筋腱板,上腕二頭筋,三角筋のうち少なくとも一つが損傷し,53%の患者ではそれらのうち少なくとも一つに腱障害があったそうです。また,およそ20%の患者で回旋筋腱板と三角筋に萎縮が認められたとのこと。しかし,これらの構造異常と肩の痛みの程度とは関連しなかったそうです。

コメント

 ここで興味深いのは,構造異常と痛みの程度とのミスマッチです。亜脱臼を呈している脳卒中患者が必ずしも痛みを訴えないという報告もあり,構造異常と痛みの因果関係がどうもはっきりしません。ちなみに,脳卒中患者の肩痛に対する運動療法の効果については,今のところ絶望的にevidenceがありません。いったい,どんなアプローチが効果的なんでしょうか。脳卒中患者の肩痛について記事にまとめてあります。興味があれば御覧ください(→ 脳卒中片麻痺患者の肩の痛み:その発生率と原因)。

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