アクチンフィラメント系による細胞運動(筋収縮)


 アクチンフィラメントは細胞骨格の一つです。アクチンフィラメント系が関わる細胞運動は,筋収縮を理解する上でとても重要です。ここでは,アクチンフィラメント系による細胞運動について説明します。

アクチンフィラメントの構造

 アクチンは一本鎖の球状のタンパク質です。アクチンの線維が2本より合わさった構造を微小線維と呼びます。この微小線維をアクチンフィラメントと呼びます。筋細胞の筋原線維の細いフィラメントはα-アクチンからなります。このようなアクチンフィラメントは様々な機能を持っていて,今回紹介する筋収縮もその機能の一つです。

ミオシンの構造(図1)

 ミオシンはアクチン結合タンパク質で,2本の重鎖と4本の軽鎖からなります。重鎖は「N末端側の球状構造」と「C末端のα-ヘリックス構造」からなります。重鎖は二重螺旋構造をとっていて,軽鎖はN末端側の球状部分に結合しています。



ミオシンとアクチンフィラメントのズレ

 骨間筋の筋原線維ではミオシンは中央で極性が逆転する鎖を形成して,多数のミオシンがあわさることで筋原線維内の太い線維を構成します。一方でアクチンフィラメントは相対的に細い線維となります(図2)。

 ミオシンはATPの加水分解によって,アクチンフィラメント上を移動します。そのため,ミオシンとアクチンフィラメントとにズレが生じて,線維が収縮して細胞運動が起こります。このズレが筋の収縮を引き起こすのです。

 骨格筋の線維にはアクチンとミオシン以外にもいくつかタンパク質を含んでいます。トロポニン,トロポミオシンはカルシウム依存性に筋収縮を制御する大切な働きをします。


まとめ

 アクチンフィラメント系は2種類の細胞運動に関わります。

 一つはアクチン結合タンパク質であるミオシンがアクチンフィラメントの上をATP依存的に移動することで生じる細胞運動です。筋の収縮,収縮環による細胞質分裂,培養細胞のストレスファイバーによる張力の発生などに関与します。

 もう一つは,筋活動に直接関与しないため今回説明を省きました。アクチンフィラメントはその構築の変化に起因して細胞運動を生じさせます。アクチンフィラメントには極性があり,それぞれの端で会合と解離を生じます。これを利用してアクチンフィラメントの伸長や短縮を行い細胞の形態を変化させるのです。仮足形成などがこのメカニズムによるものです。

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