関節リウマチ患者への筋力練習は心配機能を向上させる


今回紹介する文献
The effects of strength and endurance training in patients with rheumatoid arthritis.
( Strasser B et al., Clin Rheumatol. 2011 May;30(5):623-32.

 運動によって機能障害の悪化が懸念される関節リウマチ患者に対して,運動療法の効果やリスクを調べたランダム化比較試験を紹介します。関節リウマチ患者は筋量の減少により,筋出力と筋持久力の低下を引き起こします。このような機能低下は,長期間の運動にって改善することが分かってきました。その一方で,運動によって筋力や運動耐用能が増加するだけではなく,除脂肪体重が減少したとの報告もあり,関節リウマチ患者への運動の効果は良い意味でも悪い意味でも必ずしも明確ではありません。そこで,この研究は以下のことを目的に行われました。
  1. 筋力強化と筋持久力強化トレーニングの組み合わせ練習(CT)がRA患者の疾患活動性と機能的能力にどう効果を及ぼすか評価すること
  2. CTプログラムを6ヶ月間継続して行うことで筋力,心肺持久力,身体組成に効果を及ぼすかを調査すること

対象をCT群とコントロール群にランダム割付

 関節リウマチ患者40名(41歳〜73歳)のうち,20名(女性19名、男性1名)は6ヶ月のCTプログラム群に,残り20名(女性17名、男性3名)はコントロール群にランダムに割り当てられました。筋力強化トレーニング(ST)は,すべての大筋群へのウエートトレーニングで構成されており,最初の2週は患者指導と,筋が運動になれることを目的に,3週目からは筋肥大を目的に実施されました。筋持久力トレーニング(ET)として,週に2度自転車エルゴメータが行われました。ETは最初の4週は15分を週に2度実施,5週目からは5分ずつ漸増されました。VO2maxが60%となるようにコントロールされました。

筋力練習によって心肺機能が向上した

 CT群とコントロール群(CO群)で患者特性に有意差はありませんでした。CTを6ヶ月間行った患者の疾患活動性(p=0.06)と痛み(p=0.05)は減少の傾向にあり,さらに全身の健康状態(p=0.04)と機能的能力(p=0.06)もまた改善の傾向がありました。心肺持久力は有意に改善していました(p<0.001)。CTトレーニングを行った患者の筋力は,平均で14%増加しました。除脂肪体重(全体重のうち、体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓などの総量)は増加し,体脂肪率は有意に減少しました(p < .05)。



 著者らは筋力トレーニングと持久力トレーニングを組み合わせたプログラムによって,関節リウマチ患者の心肺持久力に著明な改善を認め,同時に筋力,痛み,身体組成と機能的能力にも良好な変化をもたらしたと述べています。また,長期間のトレーニングは,疾患活動性や関連痛の減少に効果的であると思われ,有害な効果はないことがわかったそうです。

研究の限界

  • 重度の障害を持った患者と、RAが活動中の患者は除外したため,本研究は一般論としては読み取れない。
  •  CTに対する同意率は75%であり,概ねよい。 
  • しかし運動療法の安全性は、疾患活動の期間だけではなく,長期間の関節破壊の程度や大関節の障害によっても考慮されなければならない。

コメント

 多くのアウトカムで有意差が認められていないことは残念ですが,少なくともこの母集団に対しては運動による身体組成の悪化は認められなかったようです。程度の差はあれど関節リウマチ患者に運動療法は必要なのでしょう。一方であなたの担当する患者さんにこの負荷量の運動療法が適応になるかは個々で吟味しなくてはなりません。どういう患者さんにどのような負荷量が適切なのか,今後の検討が必要です。

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