断面研究(横断研究)


 断面研究 cross sectional study とは臨床研究方法の一つです。本邦では横断研究と呼ばれることもあります (多くの分野で横断研究と表現されていると思います) 。結果の解釈が難しく,ランダム化比較試験やコホート研究と比べて,エビデンスレベルはあまり高くありません。以下にその特徴として方法,利点と問題点をまとめました。

方法

 個人を対象として(集団を対象にするものは「地域相関研究」を参照下さい),仮説要因と疾病とを同時に調査します。例えば,βカロチンが慢性胃炎を予防する効果があるかどうかを調査する時に,両者を同時に調べてお互いの関係を調べる研究などがあります。

利点と問題点

利点

 断面研究は,仮説要因と疾病とを同じ時点で(断面で)調査するので,ランダム化比較試験やコホート研究のような追跡調査を行う必要がありません。そのため,比較的簡単に研究を行えます。

問題点 (欠点)

 原因と結果を同時に調査しているので,両者に統計的な関係が認められたとしても,それが因果関係を反映しているのかを判断するのが難しいという問題点があります。例えば,βカロチンの摂取が多い群ほど慢性胃炎の割合が低いという関係が断面研究で認められたとしても,βカロチンを多く摂取したから慢性胃炎の割合が低いのか,反対に,慢性胃炎の割合が低く健康な集団だからβカロテンを含む野菜をたくさん食べられるのかを区別することはできません。したがって,断面研究の結果に基づいて仮説要因と疾病の関係を調査する時には,結果の解釈に十分に注意する必要があります。

コメント

 断面的に調査することで,ある疾病の診断基準を判断できるかもしれません。しかし,この研究結果だけで,経過や予後を明らかにすることはできません。自分の知りたいことにあった研究デザインを設定することが重要です。

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