
こんにちは、Charcot(@StudyCH)です。
Pushing現象(プッシング現象)とは、脳卒中急性期によくみられる姿勢定位障害です。Pusher症候群(プッシャー症候群)と呼ばれることもあります。
患者さんの姿勢が麻痺側に傾いてしまい、介助者が正中に戻そうとしてもそれに抵抗します(非麻痺側の手や足で床や座面を押すような行動をとります)。
この記事ではPushing現象の特徴や治療介入の考え方について説明します。
どういう症例に多いか?
過去には右半球損傷の患者さんに多く、半側空間無視や病態失認などの高次脳機能障害を合併する例が多いとされてきました。
しかし、現在ではpushingがみられる患者とpushingがみられない患者の間で、高次脳機能障害を合併する割合に有意な差はないとされています。
つまり、pushingは他の高次脳機能障害と合併してみられる場合もあり、それ単独でみられる場合もあるということです。
責任病巣はどこか?
責任病巣(脳のどの領域が働かないとpushingが出現するか)については未明の部分が多い状況です。
視床、島後部、中心後回、下前頭回、中側頭回、下頭頂小葉、頭頂葉皮質下白質などの大脳の広範な領域が関連しており、これらの領域がネットワークを形成して姿勢を定位していると考えられています。
予後はどうなる?
Pushing現象(プッシング現象)は時間の経過とともにみられなくなる例が多いとされています。ただし、pushing現象がみられた患者さんはみられない患者さんと比べて入院期間が長くなると言われています。
また、左半球損傷例と比較すると右半球損傷例では回復が遅延する傾向があります。
評価方法
Pushing現象(プッシング現象)の客観的評価基準として代表的なものは、Clinical Assessment Scale for Contraversive Pushing (SCP) と pusher 重症度分類があります。
世界的な主流はSCPですが、日本では国内で開発されたpusher 重症度分類が使われる場合があります。
リハビリ介入の考え方
どういうメカニズムでPushing現象(プッシング現象)が生じているのかはっきりと分かっていないため、効果的な治療法もまだ分かっていないようです。
しかし、視覚による垂直判断は比較的保たれていることが多いため、視覚を利用させて姿勢の垂直判断と視覚によるそれが乖離していることを理解させることが推奨されています。
この場合、言語的にいくら声かけをしても理解されないことが多いため、姿勢矯正鏡などを使って何か目安になる軸(鏡の枠など)と姿勢との軸のずれを認識させていく必要があります。
まとめ
急性期脳卒中患者で広範な領域を障害された方はpushing現象(プッシング現象)が出現することが多い印象です。また、意識障害も併発しているためなかなか介入が思うように進まないことも少なくありません。
予後が良好とはいえ、pushingがみられると急性期初期から機能や能力を向上させるための効率的な介入ができなくなることは問題です。効率的な根拠のある介入方法の確立が求められます。
ちなみにpushing現象とは別に、脳幹由来で生じる姿勢定位障害にlateropulsionがあります。詳しくは「Lateropulsionの特徴とリハビリテーション」を参照して下さい。
それでは皆さまの学習がよりいっそう充実することを願って。