変形性股関節症 hip osteoarthritis, hip OA は,股関節周囲の痛みや筋力低下を引き起こし,患者さんの負担が大きい疾患の一つです。高齢者に多い疾患でもあるため,病院に限らず施設や訪問リハビリで担当になることも多いかと思います。そこでここでは,変形性股関節症の症状や有病率に加えて,発症/進行のリスクファクター(危険因子)ついてまとめました。
変形性股関節症の症状
変形性股関節症は世界共通にみられる疾患であり,特に高齢者に多くみられます。主な症状は,痛みや日常生活動作困難 (たとえば歩く,運転,階段昇降や家事などが難しくなる) で病気の進行とともに悪化します。
また,強い不安感を持ち,うつ状態に陥っていること (Murphy et al., Arthritis Care & Research 2012) や,疲れやすかったり,眠れなかったりすることも多いようです (Murphy et al., Arthritis Care & Research 2011)。
さらには,変形性股関節症に対して保存療法を行うにしても手術を行うにしても経済的な負担が大きくなり,仕事の生産性が低下し,QOLの低下を引き起こします (Dibonaventura et al., BMC Musculoskeletal Disorders 2011)。
また,強い不安感を持ち,うつ状態に陥っていること (Murphy et al., Arthritis Care & Research 2012) や,疲れやすかったり,眠れなかったりすることも多いようです (Murphy et al., Arthritis Care & Research 2011)。
さらには,変形性股関節症に対して保存療法を行うにしても手術を行うにしても経済的な負担が大きくなり,仕事の生産性が低下し,QOLの低下を引き起こします (Dibonaventura et al., BMC Musculoskeletal Disorders 2011)。
変形性股関節症の有病率
このような変形性股関節症に苦しむ患者さんはどのくらいいるのでしょうか。何を基準に変形性股関節症と判断したかによって有病率にばらつきがあります。つまり,変形性股関節症と判断する方法には,画像診断に基づいたもの,症状に基づいたもの,患者さん自身の自己申請に基づいたものなどがあって,研究によって異なる指標を用いると,その結果も違ってくるということです。
世界での有病率
最近,Pereiraらは国の変形性股関節症の発生率や有病率についての研究を集めたシステマティック・レビューを行いました (Pereira et al., Osteoarthritis & Cartilage 2011)。そのレビューによると,自己申告や症候による診断に基づくものよりもX線による画像診断に基づいたものが最も有病率を高く検出し,その割合は 0.9% 〜 45% だったそうです。
また,男性の有病率が 11.5% ,女性で 11.6% であり, 世界的には有病率に性差はみとめられないません (このレビューでは,発生率についてもふれているのですが,わずかな文献しか検出できずに判断が曖昧だったので割愛します.) 。
また,男性の有病率が 11.5% ,女性で 11.6% であり, 世界的には有病率に性差はみとめられないません (このレビューでは,発生率についてもふれているのですが,わずかな文献しか検出できずに判断が曖昧だったので割愛します.) 。
日本での有病率
世界の有病率が日本にもそのまま通用するわけではありません。日本のガイドラインによると,国内の変形性股関節症の有病率は 1.0〜4.3% であり,男性は 0~2.0% ,女性は 2.0~7.5% と女性で高いといわれており,欧米の報告に比べると有病率が低いようです (変形性股関節症診療ガイドライン) 。ただし,このガイドラインに用いられた日本国内の疫学調査はたった3調査のみであり,若干根拠として不十分な感は否めません。
変形性股関節症の発症/進行の危険因子
発症の危険因子
発症の危険因子は,肥満,高強度スポーツ,重量物作業を行う職業,脚長差 (左右の足の長さが違う) などだといわれています (Suri et al., Physical Medicine and Rehabilitation 2012) 。しかし,危険因子についても日本の研究は少なく,重量物作業を行う職業以外の要因については日本人にとっても危険因子になるか不明です (変形性股関節症診療ガイドライン)。
臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼の既往も危険因子とされています。最近では,大腿寛骨臼インピンジメント (活動的な若者に多い股関節の形態異常で,近位大腿骨と寛骨臼縁の間で摩擦が生じる) が変形性股関節症のリスクを高めることが示唆されています (Harris-Hayes and Royer, Physical Medicine and Rehabilitation 2011) 。
臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼の既往も危険因子とされています。最近では,大腿寛骨臼インピンジメント (活動的な若者に多い股関節の形態異常で,近位大腿骨と寛骨臼縁の間で摩擦が生じる) が変形性股関節症のリスクを高めることが示唆されています (Harris-Hayes and Royer, Physical Medicine and Rehabilitation 2011) 。
進行の危険因子
変形性股関節症の経過 (進行) には個人差があるといわれています。実は,疾患進行の危険因子は疾患発症のものとは異なります。Wright らは,hip OA の経過を追った18件の前向きコホート研究を集めたシステマティック・レビューを行いました (Wright et al., Arthritis & Rheumatism 2009) 。そのレビューによると,年齢,股関節の痛み,いくつかのX線画像の特徴 (関節腔の狭小化,大腿骨棘,骨硬化症,上外側大腿移行) が hip OA の進行を予測できる一方で,BMI とは関連しないのではないかという結果でした。
リハビリテーション専門職であれば,筋力低下などの要因が変形性股関節症の悪化につながるのではないかと考えることがあるのではないでしょうか。残念ながら今のところそういった機能低下が変形性股関節症の進行と関連があるかについては調べられていないようです。
リハビリテーション専門職であれば,筋力低下などの要因が変形性股関節症の悪化につながるのではないかと考えることがあるのではないでしょうか。残念ながら今のところそういった機能低下が変形性股関節症の進行と関連があるかについては調べられていないようです。
まとめ
変形性股関節症に罹患することで,患者さんは様々な負担を強いられます。有病率は欧米にくらべると日本では少ないようです。発症の危険因子は肥満や高強度スポーツなどが濃厚ですが,日本での研究が少なく,国内の状況がはっきりとわかっていません。
一方で股関節の形状が発症や進行の要因になっているようで,これはX 線画像などで確認できます.変形性股関節症については,まだまだわからないことが多い現状です。多くの研究が,変形性膝関節症患者と一緒に調査していることもその原因の一つです。今後,日本国内での詳細な研究が期待されます。
一方で股関節の形状が発症や進行の要因になっているようで,これはX 線画像などで確認できます.変形性股関節症については,まだまだわからないことが多い現状です。多くの研究が,変形性膝関節症患者と一緒に調査していることもその原因の一つです。今後,日本国内での詳細な研究が期待されます。