パラメトリック検定とノンパラメトリック検定:違いと選び方

パラメトリック検定とノンパラメトリック検定:違いと選び方

研究を始めたばかりの人が学会の質疑でよく指摘されることの一つに、検定方法の選び方があります。なかでも迷いやすいのが、パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の使い分けです。ノンパラメトリック検定の代表格は、統計学の専門家ではなく、殺虫剤などを研究してきた一人の化学者が、実験の結果を「手早く、おおまかに」判定したくて考えた方法から広がりました。

パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の違い

  • パラメトリック検定:データが正規分布などの決まった分布に従うと仮定し、平均値や標準偏差といったパラメータ(母数)を使って比べる。t検定、分散分析、ピアソンの積率相関係数など
  • ノンパラメトリック検定:分布の形を仮定せず、データの順位などを使って比べる。マン・ホイットニーのU検定、ウィルコクソンの符号付順位検定、クラスカル・ウォリス検定、スピアマンの順位相関係数など
  • 選び方:名義尺度・順序尺度のデータならノンパラメトリック検定。間隔尺度・比率尺度でも、分布が大きくゆがんでいたり外れ値があったりすれば、ノンパラメトリック検定を考える。正規性の検定のp値だけで決めない
  • 損得:正規分布のデータにノンパラメトリック検定を使っても、差を見抜く力の低下はわずか。分布が大きくゆがんでいると、むしろノンパラメトリック検定のほうが差を見抜きやすい

「パラメータ」で比べるか、順位で比べるか

パラメトリック検定の「パラメータ」は、分布の形を決める値(母数)のことです。正規分布なら、平均値と標準偏差の2つが決まれば形が一つに決まります。パラメトリック検定は、データがこうした決まった分布に従うと仮定し、平均値などのパラメータを使って群を比べます。t検定や分散分析が代表例です。平均値や標準偏差は、身長や体重のような間隔尺度・比率尺度のデータで意味をもつ値なので、パラメトリック検定もこれらのデータが対象になります(「データの代表値と散布度について」)。

これに対してノンパラメトリック検定は、分布の形を仮定しません。多くは、測った値を小さい順に並べた順位や、差のプラス・マイナスの符号を使って比べます。値を順位に置き換えると、外れ値があっても「いちばん大きい」というだけの扱いになるので、結果が外れ値に左右されにくくなります(図1)。

A群5人とB群5人の値を数直線に並べると、B群の外れ値60に引っぱられてB群の平均が27.6になるが、10人を順位に置き換えると60は10位になるだけで、平均順位はA群3.4、B群7.6となることを示した図

図1 値を順位に置き換える(架空のデータ):外れ値があっても、順位では「いちばん大きい」というだけになる

パラメトリック検定ノンパラメトリック検定
比べるもの平均値、分散順位、中央値など
分布の仮定正規分布などを仮定する(等分散を仮定する検定もある)分布の形を問わない
使える尺度間隔尺度、比率尺度名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度
外れ値の影響受けやすい受けにくい

化学者が始めた「順位の検定」

順位を使う検定の歴史は、20世紀の前半にさかのぼります。1904年に心理学者のスピアマンが順位を使った相関係数を発表し、1937年には、のちにノーベル経済学賞を受ける経済学者ミルトン・フリードマンが、正規分布を仮定せずに3つ以上の条件を比べる順位の方法(フリードマン検定)を発表しました。

そして1945年、アメリカの化学者フランク・ウィルコクソンが、2群の比較に順位を使う方法(順位和検定)と、対応のある2つの条件の比較に使う方法(符号付順位検定)を、わずか4ページの論文で発表します。ウィルコクソンは殺虫剤や殺菌剤の研究に携わり、化学会社では統計の相談を受けるグループを立ち上げた人物です。論文の目的は、実験で得られた差が意味のあるものかどうかを「手早く、おおまかに知る」ことでした。

2年後の1947年、数学者のマンと大学院生のホイットニーがこの順位和検定を発展させ、いまのマン・ホイットニーのU検定が生まれます。1952年には、3群以上の比較に使うクラスカル・ウォリス検定も発表されました。順位の検定は、統計学の専門家だけでなく、心理学者や経済学者、化学者が、自分の研究の必要から生み出してきたものなのです。

ノンパラメトリック検定を使うと損をするのか

「正規分布に従うデータにノンパラメトリック検定を使うと、本当はある差を見逃しやすくなる(第2種の過誤が増える)」という説明は、方向としては正しいものの、その大きさは意外なほど小さいことがわかっています。1956年、統計学者のホッジスとレーマンは、正規分布のデータでは、ウィルコクソンの順位和検定(U検定)がt検定と同じ精度を得るのに必要な人数は、t検定のおよそ1.05倍で済む(効率は3/π、約95%)ことを示しました。しかも、どんな分布であっても、効率が86%を下回ることはありません。反対に、分布が大きくゆがんでいたり、外れ値が出やすかったりすると、U検定のほうがt検定より効率が高くなります。

図2は、各群20人で、本当に差があるときに「差がある」と判定できた割合を、シミュレーションで比べたものです。正規分布のデータでは、t検定が68%、U検定が66%と、差はわずかでした。右に裾を引くデータでは、t検定が48%、U検定が71%と、U検定がはっきり上回りました。

各群20人のシミュレーションで、正規分布のデータではt検定の検出力68%、U検定66%とほぼ同じだが、右に裾を引く指数分布のデータではt検定48%、U検定71%とU検定が上回ることを示した棒グラフ

図2 t検定とU検定の検出力(各群20人で、本当に差があるときにp<0.05となった割合。シミュレーション各5000回。差がないときに誤って「差がある」と判定した割合は、どの条件でも約5%)

人数が少ないときの落とし穴

人数が少ないと、パラメトリック検定とノンパラメトリック検定のどちらにも、別々の弱点が出てきます。パラメトリック検定は、人数が少ないほど正規分布の仮定に頼る度合いが大きくなります。ところが、その仮定を確かめるための正規性の検定は、人数が少ないと外れをなかなか見抜けません(「Shapiro-Wilk検定(正規性の検定)」)。

一方、ノンパラメトリック検定は、順位の並び方の数が限られるため、人数が極端に少ないと、どれほど差があっても有意になりません。各群3人のU検定では、2群が完全に分かれても両側のp値は0.10より小さくならず、各群4人でようやく、完全に分かれたときにp = 0.029となります。対応のあるデータに使うウィルコクソンの符号付順位検定も、5組ではp値が0.0625より小さくならず、6組から有意になる可能性が出てきます。人数が少ない研究ほど、検定方法と必要な人数を、データを集める前に考えておくことが大切です(「研究計画書の書き方」)。

どう選ぶか:尺度、分布、人数の順に考える

実際に検定を選ぶときは、次の順に考えると整理しやすくなります。

  1. 尺度水準:名義尺度や順序尺度のデータなら、ノンパラメトリック検定を選びます(「統計データの尺度水準」)。徒手筋力検査の段階づけのような順序尺度では、平均値の意味そのものがあいまいだからです。
  2. 分布の形と外れ値:間隔尺度・比率尺度でも、ヒストグラムやQ-Qプロットで分布が大きくゆがんでいたり、外れ値があったりすれば、ノンパラメトリック検定を考えます。
  3. 人数:人数が多ければ、中心極限定理によってt検定は分布のゆがみに強くなります。人数が少ないときは、上で見た弱点を踏まえて判断します。

「正規性の検定で有意でなければt検定、有意ならU検定」という2段階の手順は広く使われていますが、前段の検定がその後の検定の性質を変えてしまうことも指摘されています。測定値の性質や先行研究、図をあわせて、データを集める前に方法を決めておくのが理想です。

たとえば、作業療法の介入の前後で、同じ患者さん12人のADLの点数を比べるとします。同じ人を2回測っているので、「対応のある2つの条件の比較」です。点数が順序尺度の性質をもつと考えるなら、ウィルコクソンの符号付順位検定を選びます。点数を間隔尺度とみなせて、介入前後の差の分布が左右対称に近いなら、対応のあるt検定も候補になります。どちらを使うかは、結果を見てからではなく、データを集める前に決めておきます。

主な検定の組み合わせは次のとおりです。

比べたいものパラメトリック検定ノンパラメトリック検定
対応のない2群の差2標本t検定(対応のないt検定)Mann-WhitneyのU検定
対応のある2条件の差対応のあるt検定Wilcoxonの符号付順位検定
対応のない3群以上の差一元配置分散分析Kruskal-Wallis検定
対応のある3条件以上の差繰り返しのない二元配置分散分析(乱塊法)フリードマン検定
2つの変数の関連Pearsonの積率相関係数Spearmanの順位相関係数
名義尺度の割合や関連―カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定

まとめ

パラメトリック検定は分布を仮定してパラメータで比べ、ノンパラメトリック検定は分布を仮定せず順位などで比べます。ノンパラメトリック検定は「正規分布でないときの代わり」と思われがちですが、正規分布のデータでも差を見抜く力の損はわずかで、ゆがんだデータではむしろ有利です。尺度水準、分布の形と外れ値、人数を手がかりに、データを集める前に検定を決めておきましょう。統計的仮説検定の基本は「研究と統計学の関係性:統計的仮説検定」で解説しています。

さらに学びたい人へ:おすすめの本

  • 新谷歩『今日から使える医療統計 第2版』(医学書院):数式を抑え、例を多く使って医療統計の考え方を解説した入門書です。2024年の第2版では、欠測データや反復測定、P値を使わないベイズ法も扱っています。
  • 対馬栄輝『SPSSで学ぶ医療系データ解析 第2版』(東京図書):医療系の研究者に向けて、SPSSの操作手順と分析の考え方をあわせて解説した入門書です。検定の選び方を独立した章で扱い、差の検定から分散分析、多変量解析まで進みます(2016年刊行、SPSS 24に対応)。
  • 神田善伸『EZRでやさしく学ぶ統計学 改訂4版』(中外医学社):無料の統計ソフトEZRの開発者による解説書です。EZRの導入から連続変数・カテゴリー変数の検定、生存解析、サンプルサイズの計算まで、操作しながら学べます(2026年刊行)。

参考文献

  1. Spearman C. The proof and measurement of association between two things. Am J Psychol. 1904;15(1):72-101. doi:10.2307/1412159
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  5. Kruskal WH, Wallis WA. Use of ranks in one-criterion variance analysis. J Am Stat Assoc. 1952;47(260):583-621. doi:10.1080/01621459.1952.10483441
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  7. Rochon J, Gondan M, Kieser M. To test or not to test: preliminary assessment of normality when comparing two independent samples. BMC Med Res Methodol. 2012;12:81. doi:10.1186/1471-2288-12-81

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