外来の医師たちは、調べたいことが週に1回くらい出てくると答えていましたが、実際には、患者さん3人につき2つの疑問を口にしました。米国の外来で、医師たちは前もって質問票に答えたあと、半日の診療の間、診察を終えるたびに聞き取りを受けました。疑問は、どの診療科にもわたり、目の前の患者さんの問題に即した、具体的なものでした。しかし、その多くは、その場では答えが得られませんでした[1, 2]。
回復期リハビリテーション病棟で、実習生が担当する脳卒中の患者さんは、右の片麻痺があり、歩くのに介助が要ります。実習生は、短下肢装具をつけて歩く練習を増やすか、ベッドの上で麻痺した脚の筋力増強運動を先にするかで迷います。答えが出ないまま次の患者さんの時間になり、夕方には、その疑問を思い出すこともありません。説明のための架空の場面です。この疑問を4つの要素に分けて書くと、何が変わるのでしょうか。
この記事の要約(押すと開閉します)
- 目的:診療で生まれた前景の疑問を、患者さん(P)、介入(I)、比較(C)、結果(O)の4つの要素を含む1文の問いにする。この問いで、探す研究のデザインと検索の語、見つかった論文を選ぶ基準が決まる
- 疑問を書き留める:答えに困った疑問を、その場で短く記録する。診療中の疑問の多くは、その場では答えを探されていない
- 疑問を見分ける:一般的な知識を問う背景の疑問は教科書で調べ、目の前の判断に必要な知識を問う前景の疑問をPICOで形にする
- 4つに分ける:患者さんは答えが変わりうる特徴まで、介入と比較は実際に行う方法を具体的に書く。結果は「よくなる」ではなく、何を、何で、いつ測るかまで書き、害の結果も含める。実際の疑問には4つに分けにくいものも多く、リハビリテーションの疑問には場面や期間などの要素も入る
- 1文にする:4つの要素をつなぎ、比べられる問いの形にする。短い説明と書き方の見本を渡した小さな試験では、4つの要素がそろった疑問が増えた
- 探す研究を決める:治療、診断、予後、原因や害のどの疑問かを決め、答えを探す研究のデザインを選ぶ。PICOは治療の疑問に最も合う。研究者が人に割り当てられない要因を問う予後や原因の疑問は、介入の代わりに曝露(E)を置くPECOの形でも書ける
- 検索の語を選ぶ:検索の語には主に患者さんと介入を使い、研究デザインの語と組み合わせる。比較と結果は、見つかった論文が疑問に合うかを選ぶときに使える。PICOで検索の成績が上がるかは、まだはっきりしていない。見つからない疑問は、研究の問いの候補になる
PICOとは
PICO(ピコ)は、臨床の疑問を4つの要素に分けて書く方法です。PICOのPは患者さん(Patient)、Iは介入(Intervention)、Cは比較(Comparison)、Oは結果(Outcome)です[3]。Pは、対象の集団(Population)や問題(Problem)の頭文字とされることもあります。
根拠にもとづく医療(EBM)は、個々の患者さんのケアを決めるときに、いま手に入る最良の根拠を使う考え方です[4]。2005年には、根拠にもとづく医療を教える人たちが、シシリー声明をまとめました。声明によると、根拠にもとづく実践の最初のステップは、診療の中の不確かさを、答えられる疑問に置き換えることです。医師に限らず、すべての医療者がその原理を理解する必要があるともしています[5]。
PICOは、この最初のステップで使う方法です。この記事では、疑問を書き留めてから検索の語を選ぶまでを、6つの段階に分けて説明します(図1)。6つの段階を終えると、4つの要素を含む1文の問いと、探す研究のデザイン、検索の語が決まります。根拠を探して吟味する2つ目以降のステップは、EBMの実践方法の記事で説明しています。

図1 PICOで臨床の疑問を形にする6つの段階。背景の疑問は教科書で調べ、答えの見つからない疑問は研究の問いの候補になる
疑問を書き留める:その場で短く記録する
診療中に答えに困った疑問を、その場で短く書き留め、あとで答えを探せるように残しておきます。病棟の実習生なら、患者さんの状態、迷った2つの方法、知りたい結果を書いておきます。診療中の疑問の多くは、その場では答えを探されていません。書き留めておけば、その場で調べる時間がなくても、あとで答えを探せます。
1985年に報告された米国の研究では、外来の医師47人による409人の診察で、269の疑問が出ていました。その場で答えが得られた疑問は、3割でした[1, 2]。ただし、聞き取りによって、ふだんなら口にしない疑問が引き出された可能性もあります[2]。
1999年に報告された研究では、米国アイオワ州の家庭医103人の診療に、研究者が半日ずつ2回付き添いました。医師が口にした疑問は1,101個でした。家庭医の疑問の64%は、その場では答えを探されませんでした。探した場合も、かけた時間は平均2分足らずでした[6]。
系統的レビューは、1つの問いについての研究を、決まった手順で集めてまとめる研究です。2014年の系統的レビューは、診察のたびに医療者へ疑問を聞き取った研究などをまとめました。研究を統合した推定値では、答えが探された疑問は51%でした[7]。2つの研究の結果を、図2に示します。

図2 診療中に出た疑問のゆくえ。1999年の値は、診療の場で答えを探したかどうか。2014年の値は、系統的レビューが統合した推定値から計算した。答えを探した疑問は51%で、そのうち78%で答えが見つかった(文献6、7をもとに作成)
2014年の系統的レビューでは、答えを探す妨げとなる主な要因は、時間がないことと、役に立つ答えがあるとは思えないことでした。インターネットで根拠を調べられるようになっても、疑問の半数ほどが探されない様子は、あまり変わっていませんでした[7]。
疑問を見分ける:一般的な知識かを確かめる
書き留めた疑問が背景の疑問か前景の疑問かを見分け、前景の疑問をPICOで形にします。背景の疑問は、1つの事柄について一般的な知識を問います。前景の疑問は、目の前の判断に必要な、具体的な知識を問います[8]。
「機能的自立度評価法(FIM)とはどんな評価か」は背景の疑問で、教科書で調べます。病棟の実習生の、装具をつけた歩行練習と筋力増強運動のどちらがよいかという疑問は、前景の疑問です。
4つに分ける:要素ごとに具体的に書く
前景の疑問を、患者さん、介入、比較、結果の4つの要素に分け、探す研究が決まるほど具体的に書きます。1995年、米国の医師Richardson(リチャードソン)らは、論説で、疑問を4つの部分に分けて書くことを示しました[9, 10]。ねらいは、疑問が目の前の問題に直接つながることと、正確な答えを探しやすい形で書くことでした[11]。
1999年の研究と同じグループは、2002年に、答えを探すときの59の障害を報告しました。特に大きなものの1つは、はじめの疑問があいまいなことが多く、いく通りにも解釈でき、答えを探せる形に直すのが難しいことでした[12]。病棟の実習生の疑問を4つの要素に分けると、表1のようになります。
| 要素 | 書くことと、病棟の実習生の疑問の例 |
|---|---|
| P 患者さん | 病気、時期、状態など、答えが 例:回復期リハビリテーション病棟に |
| I 介入 | 実際に 例:短下肢装具を |
| C 比較 | 代わりに 例:装具を |
| O 結果 | 何を、何で、いつ測るか。害も含める 例:3か月後の |
表1 PICOの4つの要素の書き方(文献13、14をもとに作成。例は説明のための架空のもの)
患者さんには、病気の種類だけでなく、発症からの時期や歩ける程度のように、答えが変わりうる特徴を書きます。介入と比較には、実際に行う方法を書きます。
比較が具体的でないと、探す研究が決まりません。偽薬と比べるのか、何もしない場合や、いつもの練習と比べるのか、別の方法と比べるのかで、探す研究が変わるからです[13]。AとBのどちらがよいかを知りたいときに、Aと偽薬を比べた試験しか見つからないこともあります[12]。
結果を「日常生活動作(ADL)が向上する」と書くと、まだわからない答えを先に書いたことになります。結果は、比べられる形で、何を何で測り、いつ見るかまで書きます。表1の例では、3か月後の点数と、その間の転倒の回数を書きました。
系統的レビューの作り方の指針も、結果を、生活の質のような領域と、その領域を測る具体的な尺度に分け、測る時期も前もって決めるよう求めています。よい効果だけでなく、害の結果も扱います[13]。Minds(マインズ)は、日本で診療ガイドラインの作り方を示している事業です。その資料も、患者さんにとって本当に大事な結果を取り上げ、益と害の両方を見るよう求めています[14]。
4つに分けにくい疑問
実際の疑問は、いつも4つに分けられるわけではありません。2006年、米国の研究者らは、地域で最初に患者さんを診る医療、つまりプライマリケアで出た実際の疑問59個を、4つの要素に分けました。59個の疑問のうち、4つの要素がそろっていた疑問は2つだけでした。比較が書かれていた疑問は3つで、介入と結果の両方がそろっていた疑問も37%にとどまりました[15]。
2014年に報告された研究では、脳卒中の患者さんを担当する作業療法士、理学療法士、言語聴覚士15人が、129の疑問を記録しました。疑問には、どの場面の話か、誰がかかわるか、どのくらいの期間かといった要素が含まれていました。研究者らは、PICOの型だけでは、リハビリテーションの専門職の疑問を十分に表せないと結論しています[16]。
1文にする:比べられる問いの形に整える
4つの要素をつないで1つの問いの文にし、何と何を比べ、何で確かめたいのかが1文でわかるようにします。病棟の実習生の疑問は、次の1文になります。
疑問の例:回復期の脳卒中片麻痺で、歩くのに介助が要る人に、短下肢装具をつけた歩行練習を中心に行うと、ベッドの上での筋力増強運動を中心に行う場合と比べて、3か月後のFIM運動項目の点数は高いか
4つの要素がそろった1文にしておくと、何を探せばよいかが決まり、見つかった論文が自分の疑問に合うかも判断しやすくなります。ガイドラインでは、結果を疑問の文に入れず、別に決めておく作り方もあります[14]。日本の理学療法ガイドライン第2版は、「発症48時間以内の脳卒中患者に対して理学療法は有用か」のような疑問の形で作られています[17]。
疑問の書き方を示すと、4つの要素がそろった疑問が増えた小さな試験があります。2001年に報告された試験は、オーストラリアの病院で、根拠の検索と吟味を引き受けるサービスで行われました。このサービスに初めて疑問を寄せた医療者52人を、偶然に任せて2つの群に分けました。看護師と医師のほか、理学療法士なども含まれていました。片方の群にだけ、疑問の書き方の短い説明と、書いた指示、図の見本を渡しました[18]。
2001年の試験で最初に寄せられた疑問のうち、患者さん、介入、比較、結果のすべてが書かれていた疑問は、両方の群を合わせて20%でした。見本を受け取った群では、4つがそろっていなかった14の疑問のうち7つが、次には4つとも書かれるようになりました。見本を受け取らなかった群では、変化はありませんでした。ただし、解析できた参加者は39人と少なく、長い期間の効果や、患者さんへの影響はわかっていません[18]。
探す研究を決める:疑問の種類から選ぶ
前景の疑問が、治療、診断、予後、原因や害のどれにあたるかを決め、答えを探す研究のデザインを選びます。疑問の種類によって、答えを探す研究のデザインが変わるからです(表2)。先に述べた2006年の研究者らは、PICOは治療の疑問には合うものの、診断や予後、原因の疑問には合いにくいと報告しています。それでも、EBMを実践する医師の役に立つ道具だと、あらためて認めています[15]。
病棟の実習生の疑問は治療の疑問なので、人を偶然に任せて2つの群に分けて比べる、ランダム化比較試験を探します。表2の研究デザインは、ランダム化比較試験、横断研究、前向きコホート研究、症例対照研究などの記事で説明しています。
環境などの曝露と健康の関係を問うために、介入の代わりに曝露(Exposure)を置く、PECO(ペコ)という型も提案されています[19]。年齢や入院時の状態のように、研究者が人に割り当てられない要因を問う疑問にも使えます。
| 種類 | 疑問の例と、書き方・答えを探す研究 |
|---|---|
| 背景の | FIMとは 1つの |
| 治療 | 短下肢装具を PICOで |
| 診断 | 改訂水飲みテストは、嚥下造影検査で 介入の |
| 予後 | 入院時に PECOでも書ける。要因の |
| 原因や | 睡眠薬を PECOでも書ける。コホート研究や、病気に |
表2 臨床の疑問の種類と、答えを探す研究(文献8、20、21をもとに作成。例は説明のための架空のもの)
検索の語を選ぶ:主に患者さんと介入から
検索の語には主に患者さんと介入の要素を使い、研究デザインの語と組み合わせます。系統的レビューの検索式も、多くの場合、病気や状態、介入、研究デザインの3つのまとまりの語で作ります[22]。
比較と結果は、論文の題名や抄録にうまく書かれていないことがあります。論文に付けられる索引の語でも、うまく分類されていないことが多いとされます。比較と結果を検索の語にすると、必要な論文を落とすおそれがあります。同じ意味の語はORで、まとまりどうしはANDでつなぎます[22]。
PubMed(パブメド)は、医学の論文を探すときに広く使われる無料のデータベースです。表1の疑問をPubMedで探すときの検索式の例を、図3に示します。ひとりで疑問を調べるときは、比較と結果を、見つかった論文が自分の疑問に合うかを選ぶときに使えます。検索の手順は、臨床でエビデンスを探す方法の記事で説明しています。

図3 表1の疑問をPubMedで探すときの検索式の例。同じ意味の語はORで、まとまりどうしはANDでつなぐ。比較と結果の使い方は、ひとりで疑問を調べる場合の例(検索式の組み立ては文献22をもとに作成。語は説明のための例)
検索の成績への効果
PICOで検索の成績が上がるかは、まだ確かめられていません。2007年に報告された小さな試験では、米国の研修医31人を、PubMedの3つの検索画面にランダムに分けました。PICOの欄に分けて入力した群では、見つかった論文のうち関連する論文の割合が高い傾向がありました[20]。
2007年の試験で予後の疑問を探したとき、関連する論文の割合は、PICOの2つの画面で35%と28%、通常のPubMedで20%でした。ただし差は統計的に示せず、渡された疑問も、研究者があらかじめよく絞ったものでした[20]。
2018年の系統的レビューは、PICOを使うと検索の質が高まるかを調べた研究を、3本しか見つけられませんでした。PICOが検索の質を高めるかについて、確かな結論は出せないとしています[10]。
Klodaらは、2014年にリハビリテーションの疑問を調べたあと、見つけた要素をもとに、PICOとは別の型を作りました。2020年には、作業療法と理学療法の学生を、PICOで習う群と、この型で習う群にランダムに分けて比べています。検索の成績にも、疑問の書き方の点数にも、差はありませんでした[23]。
PICOでなければならないという根拠は、まだ示されていません。型による差は示されておらず、使う型はPICOに限らないと考えられます。疑問を書き出すことで、検索の成績や患者さんへの結果が変わるかは、まだわかっていません。
答えが見つからないとき
PEDro(ペドロ)は、理学療法の介入を調べた試験、系統的レビュー、ガイドラインを集めたデータベースです。2026年10月の時点で、70,940件が登録されています[24]。それでも、自分の疑問の4つの要素にぴったり合う研究があるとは限りません。
答えの見つからなかった疑問は、研究の問いの候補になります。先行研究をあらためて探し、研究の問いに決めるまでの手順は、研究テーマの決め方の記事で説明しています。研究の目的をPICOやPECOで1文にする書き方は、研究計画書の書き方の記事にあります。
まとめ
PICOで臨床の疑問を形にするには、まず疑問を書き留め、背景の疑問か前景の疑問かを見分けます。前景の疑問は4つの要素に分けて1文にし、疑問の種類から探す研究を決めて、主に患者さんと介入から検索の語を選びます。
4つに分けて書くと、何を探せばよいかが決まり、見つかった論文が疑問に合うかを選ぶ基準になります。小さな試験では、短い説明と書き方の見本を渡すと、4つがそろった疑問が増えました。一方で、PICOで検索の成績が上がるかは確かめられていません。
背景の疑問を先に除き、要素が決まってから疑問の種類と検索の語を決めるため、この順に進めます。装具か筋力増強運動かという病棟の疑問も、比べる方法と、3か月後に何で測るかまで書くことで、論文を探して選べる問いになります。
さらに学びたい人へ:おすすめの本
- 名郷直樹『名郷直樹のその場の1分,その日の5分』(日本医事新報社):日常の診療で生じた疑問を、EBMの5つのステップに沿って、疑問が起きた時点で1分、その日の仕事のあとに5分調べる方法を紹介した本です。診療所の医師向けですが、第1章の1節で、5つのステップとPECOによる疑問の立て方を扱っています(2015年刊行、272ページ)。
- ダイアン・V・ジュエル『理学療法エビデンス大事典』森山英樹 総監訳(西村書店):米国の理学療法の教育課程で使われている、根拠にもとづく理学療法の教科書の翻訳です。エビデンスの検索と評価の方法を、章末の演習とともに学べます(2019年刊行、473ページ)。
参考文献
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