ビタミンD不足がアルツハイマー病の発症と関連する


今回紹介する文献
Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer disease
(Littlejohns TJ et al., Neurology. 2014 Sep 2;83(10):920-8. )

 ビタミンD不足がアルツハイマー病の発症と関連することを示したコホート研究を紹介します。以前に著者らのグループが行なったメタ分析によって,血中ビタミンD濃度とアルツハイマー病を含む認知症とが関連していることが分かりました。しかし,この結果からは実際に高齢者のビタミン不足がアルツハイマー病を含む認知症を引き起こすのか分かりません。そこで,今回ご紹介する研究は,低ビタミンD濃度がアルツハイマー病を含む全ての認知症と関連しているのか明らかにするために行われました。

米国の65歳以上の高齢者が対象

 米国の心血管健康調査に参加した65歳以上の高齢者1650名を対象とされました。対象者らは歩行可能で,認知症,心血管疾患および脳卒中ではありませんでした。血中ビタミンD濃度は,採取した血液サンプルから調べられました。また,アルツハイマー病を含む認知症の発症は,”National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke/Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association” の基準を用いて評価されました。統計解析には発症Cox比例ハザードモデルを用いられました。

低ビタミンD濃度だと認知症になりやすい

 約6年(5.6年)間で171名が認知症を発症しました(そのうちアルツハイマー病102名)。充分なビタミンD濃度の参加者と比べて,深刻な低ビタミンD濃度 (25 nmol/L以下)の参加者はハザード比が2.25 (95% CI: 1.23-4.13) で,低ビタミン濃度 (25〜50 nmol/L) の参加者は1.53 (95% CI: 1.06-2.21) でした。同じようにビタミンD濃度の参加者と比べて,多変量調整ハザード比(学歴,喫煙歴,およびアルコール摂取などの他のリスク要因で調整)においても深刻な低ビタミンD濃度の参加者は2.22 (95% CI: 1.02-4.83) で,低ビタミン濃度の参加者は1.69 (95% CI: 1.06-2.69) でした。アルツハイマー病を含む認知症の発症リスクはビタミンD濃度が50nmol/Lを下回ると著しく増加しました。




ビタミンDには様々な効果がある

 この研究は,ビタミンD欠乏症がすアルツハイマー病を含む認知症の発症リスクの増加と関連していることを示しました。また,著者らは従来ビタミンDにはカルシウムの吸収を高めて骨を強くしますが,それ以外の役割もある可能性を議論しなければならないと述べています。

コメント

 Kaplan-Meier curveをみても2〜3年の内に認知症リスクが増加していることが分かります。学歴などで調整もしても同様のハザード比ですから,明らかにビタミン不足の方は認知症発症リスクが1.5〜2倍は高いと言えるのかもしれません。ビタミンDはマグロやサバなどの脂肪性魚類,牛乳,チーズなどの乳製品に多く含まれます。また日光浴でも体内で生成されることが分かっています。ビタミンD摂取すれば発症リスクが減らせるかはまだ分かりませんが,歳をとったら日向ぼっこを日課にしようと思いました。

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