
Fugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢の肩・肘・前腕の項目は、片麻痺の回復の段階の順に並んでいます。反射の確認から始まり、肩や肘などがひとまとまりに曲がる、あるいは伸びる共同運動の中での動き、共同運動を組み合わせた動き、共同運動から離れた動きへと続きます。この並びは、項目の難しさの順と一致しているのでしょうか。
発症から2か月たった片麻痺の患者さんで、FMAの上肢運動項目が30点から40点に上がったとき、この10点は、麻痺が回復の段階を一つ上ったことを示すのでしょうか。それとも、本人が実感できるほどの変化なのでしょうか。
FMAは、1975年にスウェーデンのFugl-Meyerらが発表した、脳卒中後の片麻痺の評価です。運動、バランス、感覚、関節の動きと痛みを、合計226点で表します。脳卒中後の感覚運動の回復を数量で評価する最初の方法として作られ、40年あまりたった2017年にも、脳卒中の回復を調べるすべての臨床試験に含めるべき中心的な評価として、その運動項目が推奨されました。ところが、FMAの土台になった「回復には決まった段階がある」という考えは、のちの分析で必ずしも裏づけられませんでした。FMAの点数は、何を測っているのでしょうか。
Fugl-Meyer Assessment(FMA)の要点
- 構成:運動(上肢66点、下肢34点)、バランス14点、感覚24点、他動的な関節可動域44点、関節痛44点の、合計226点。各項目を0〜2点の3段階で採点する
- 成り立ち:TwitchellとBrunnstromが記載した「回復の段階」にもとづく。上肢の肩・肘・前腕の項目は、反射、共同運動の中での動き、共同運動から離れた動き、正常な反射の順に並ぶ
- 信頼性:別の検者どうしの一致を表す検者間信頼性は、級内相関係数で全体0.96と高い。採点方法を標準化し、研修を受けた検者では、運動項目全体で0.98。痛みの項目は0.61と低め
- 段階の順序:512人の分析では、反射の項目はほかの項目とまとまらず、項目の難しさの順も想定した順とは一致しなかった。反射の項目を除いた上肢30項目は、随意運動を測る1つの尺度として働く
- 変化の目安:上肢運動項目で臨床的に意味のある改善と推定されたのは、発症後数か月で9〜10点、慢性期で4.25〜7.25点
- 運動以外の領域:感覚の項目は、多くの人が満点に集まる天井効果が大きく、座位バランスの項目は妥当性が低い。臨床試験での推奨も運動項目に限られる
回復には順序がある、という考えから生まれた
1975年のFugl-Meyerらの論文は、片麻痺の患者の運動機能、バランス、いくつかの感覚、関節の機能を評価し、点数を積み上げて表す方法を詳しく記載したものです。著者らは、脳卒中の発症から1週間以内の患者を1年間追跡しました。そして、発症直後に筋の緊張がほぼ失われた弛緩性の麻痺がある場合、回復が起こるなら、それは決まった経過をたどることを示しました。
この方法の土台になったのは、TwitchellとBrunnstromが記載した、片麻痺の運動の回復には順番に進む段階があるという考えです。麻痺した上肢では、まず腱反射が戻り、次に肩や肘などがひとまとまりに曲がる、あるいは伸びる共同運動が現れ、やがて関節を一つずつ動かせるようになる、という順序です。脳卒中の評価全般については「脳卒中リハビリテーションに用いる評価指標」、腱反射のしくみについては「伸張反射:伸ばされた筋が縮むしくみ」も参考にしてください。
評価の構成と採点
FMAは5つの領域からなり、各項目を、できない(0点)、部分的にできる(1点)、完全にできる(2点)の3段階で採点します(表1)。
| 領域(合計) | 上肢 | 下肢 |
|---|---|---|
| 運動(100点) | 66点 | 34点 |
| 感覚:触覚、位置覚(24点) | 12点 | 12点 |
| バランス:座位3項目、立位4項目(14点) | 全身で評価 | |
| 他動的な関節可動域(44点) | 24点 | 20点 |
| 関節痛:他動運動時(44点) | 24点 | 20点 |
| 合計 | 226点 | |
表1 FMAの領域と配点(下肢の感覚、関節可動域、関節痛は、合計から上肢の点数を引いた値)
上肢の運動項目の66点は、肩・肘・前腕(36点)、手関節(10点)、手指(14点)、協調性と速さ(6点)からなります(図1)。肩・肘・前腕の項目は、回復の段階の順に並んでいます。最初が反射の確認で、次が屈筋や伸筋の共同運動の中での動き、さらに共同運動を組み合わせた動き、共同運動から離れた動きと続きます。最後の正常な反射の項目は、その前の段階で満点のときだけ評価します。

図1 FMA上肢運動項目の構成。肩・肘・前腕の36点は、回復の段階の順に並ぶ(ヨーテボリ大学の公式プロトコルをもとに作図)。ただし、発症145日以内の512人の分析では、灰色で示したIとVの反射の3項目はほかの項目とまとまらず、項目の実際の難しさの順も、この並びとは一致しなかった(Woodburyら 2007)
腱反射を調べる打腱器のほか、つまみや握りを調べるための紙、鉛筆、缶のような円筒、ボール、時間を計るストップウォッチなどを使います。カナダの評価データベースStrokEngineによると、全体を行うには30〜35分ほどかかり、運動、感覚、バランスだけで34〜110分(平均58分)かかったという報告もあります。
半世紀使われてきた理由
2002年の総説は、FMAを、よく設計され、実施しやすく、効率のよい臨床検査であり、脳卒中の患者で広く検証されてきたと評価しています。中心になるのは運動の100点で、最も詳しく検証され、検者間と検者内の信頼性、測ろうとする概念を理論どおりに反映しているかを表す構成概念妥当性は、いずれも優れていました。一方で、運動の領域には、天井効果があること、関係しうる動きの一部が含まれていないこと、下肢より上肢の比重が大きいこと、といった限界も指摘されています。
信頼性は、検査の手順をそろえることで高まります。経験10年以上の理学療法士3人が、事前に手順をそろえたうえで12人を評価した研究では、全体の級内相関係数(ICC)は0.96で、項目ごとでは痛みの0.61から上肢の0.97まででした。複数の施設で行う臨床試験のために、採点方法と検者の研修を標準化した研究では、熟練した検者と研修を受けた理学療法士17人の一致は、運動項目全体でICC 0.98、上肢0.99、下肢0.91、感覚項目全体で0.93でした。
2017年、脳卒中の回復とリハビリテーションに関する国際的な会議(Stroke Recovery and Rehabilitation Roundtable)は、今後のすべての脳卒中の回復の臨床試験で測るべき中心的な評価として、FMAの上肢と下肢の運動項目を挙げました。どの時期の試験でも測ることが推奨されています。ただし、ほかの評価は全体を使うよう求めた一方で、FMAについては運動の部分だけを推奨しています。
回復の段階の順に、本当に難しくなるのか
FMAの上肢の項目は、回復の段階の順に並んでいます。では、段階の後ろにある項目ほど、本当に難しいのでしょうか。ウッドベリーらは2007年、発症から145日以内の脳卒中の患者512人のデータを、ラッシュ分析という方法で調べました。ラッシュ分析は、項目の難しさと人の能力を同じものさしの上に並べ、それぞれの項目が1つの尺度としてまとまるかどうかを確かめる方法です。
分析の結果、安静時の腱反射を調べる3つの項目は、ほかの項目とはまとまりませんでした。この3項目を除いた30項目は、随意的な動きを測る1つの尺度としてまとまりました。ところが、30項目の実際の難しさの順は、FMAの土台にある回復の段階から想定される順と一致しませんでした。著者らは、この結果は、FMAの考え方の前提にある段階的な構造に疑問を投げかけるものだと述べています(図1)。
この結果は、反射の項目を除けば、FMAの上肢運動項目を、随意運動の回復を測る1つのものさしとして使えることを支持しています。一方で、「この項目ができたから次の段階に進んだ」という読み方には、根拠が乏しいことになります。上肢運動項目が30点から40点に上がった10点の改善も、回復の段階を一つ上ったと読むより、随意的に動かせる範囲が広がった量として読むほうが、この結果に合っています。
点数の変化をどう読むか
では、10点の改善は、患者さんにとって意味のある変化なのでしょうか。インドのアーヤらは、発症後平均8.4週の患者71人で、上肢運動項目の臨床的に意味のある最小の変化を推定しました。障害の程度を表すmodified Rankin Scaleを基準にすると9点、患者本人が感じた変化を基準にすると10点でした。一方、米国のペイジらは、上肢の麻痺が軽度から中等度の慢性期の患者146人で、担当の療法士による改善の評価を基準に、4.25〜7.25点と推定しました(図2)。

図2 上肢運動項目の臨床的に意味のある変化量。基準にした評価も対象者も違うので、2つの値をそのまま比べることはできない。発症後数か月の値は、2つの基準それぞれでの推定値(9点と10点)
発症から2か月で10点上がった患者さんなら、この改善は、アーヤらの推定値に届いています。ただし、2つの研究は対象者も基準にした評価も違い、数字をそのまま一般化することはできません。発症後早い時期は自然な回復も大きいので、改善を治療の効果と結びつけるには、さらに慎重な検討が必要です。
運動以外の領域の弱点
FMAの運動以外の領域には、弱点も報告されています。台湾のリンらは、初めて脳卒中を起こした176人で、感覚の項目を発症14日から180日まで調べました。検者間の一致(ICC 0.93)や、項目どうしのまとまりを表す内的整合性(クロンバックのα 0.94〜0.98)は良好だった一方で、44.4%を超える人が満点となる天井効果があり、触覚の項目の検者間の一致は低めで、妥当性も低いから中程度でした。著者らは、感覚の項目の性質は、臨床での使用を支持しないと結論しています。
バランスの項目にも問題があります。カナダのマルーアンらは、発症後平均64.5日の患者32人で、FMAと別の運動評価であるMotor Assessment Scaleを比べました。2つの合計点の相関は0.96と高く、対応する項目どうしも0.65〜0.93の相関を示しましたが、座位バランスの項目だけは−0.10でした。著者らは、FMAの座位バランスの検査はバランスを測るのに妥当でないと結論しています。バランスの項目には、時期によって、点数が0点近くに集まる床効果や天井効果が見られたという報告もあります(「Berg Balance Scale (BBS):45点で転倒を予測できるか」)。2017年の推奨がFMAの運動項目に限られているのは、こうした弱点とも一致します。
まとめ
FMAは、1975年に、片麻痺の回復には決まった段階があるという考えにもとづいて作られ、運動、バランス、感覚、関節可動域、関節痛を合計226点で評価します。運動の100点は信頼性が高く、2017年には脳卒中の回復の臨床試験で必ず測るべき評価として推奨されました。一方で、512人の分析では、項目の難しさの順は回復の段階の順と一致せず、反射の項目はほかの項目とまとまりませんでした。FMAの上肢運動項目の点数は、回復の段階を示すものというより、随意的に動かせる程度を測る1つのものさしとして読み、変化は時期に応じた臨床的に意味のある変化量を目安に解釈するのがよいでしょう。感覚やバランスの項目を使うときは、天井効果や妥当性の低さに注意が必要です。
1975年のFMAは、TwitchellとBrunnstromが記載した回復の段階にもとづいて、上肢の項目を並べました。その並びを、ウッドベリーらは2007年に512人のデータで、項目の難しさと人の能力を同じものさしに置くラッシュ分析にかけました。この分析のあとでは、FMAの上肢の点数は、回復の段階ではなく、随意的に動かせる量として読むことになります。
さらに学びたい人へ:おすすめの本
- 道免和久『脳卒中機能評価・予後予測マニュアル』(医学書院):脳卒中の機能予後の予測に必要な機能評価法を解説したうえで、従来から最新までの予後予測の方法を幅広く取り上げた本です。代表的な症例を通して、臨床での使い方も紹介しています(2013年刊行、272ページ)。
- 原寛美・吉尾雅春 編『脳卒中理学療法の理論と技術 第5版』(メジカルビュー社):解剖生理学の知識から、病態と治療、評価、理学療法の理論と技術までをまとめた本の第5版です。『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕』に合わせて内容を更新し、評価の章には運動機能検査の項目があります(2025年刊行、552ページ)。
参考文献
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