Fugl-Meyer Assessment(FMA)


 Fugl-Meyer Assessment (FMA,フーゲルメイヤー アセスメント) は脳卒中片麻痺患者の回復を定量的に評価するため,臨床や研究で幅広く使用されている総合評価指標です。以下にFMAの概要,信頼性および妥当性についてまとめました。

評価の目的と対象

 FMAはBrunnstrom stage(ブルンストロームステージ)に基いて作成されていて,脳卒中患者の機能に関わるパフォーマンスを評価する指標です。FMA得点は脳卒中の重症度とみなすことができて,患者さんの運動機能やパフォーマンスの回復を定量的に表現できて,治療効果の判定に用いることもできます。

評価の特徴と方法

評価の項目

 上肢,下肢それぞれについて運動機能,感覚機能,バランス機能,関節可動域および関節痛の5項目で構成されています。

評価の得点

 各項目を0〜2までの3段階で評価します。全くできない場合は「0」,部分的にできるは「1」,完全にできるは「2」となります。最大スコアは226点です。内訳は運動機能100点(上肢66点,下肢34点),感覚機能24点,バランス機能16点(座位6点,立位8点),関節可動域44点,関節痛44点となります。

使用する物品や環境

 プラットフォームやある程度広い空間が必要です。使用物品には紙,ボール(球),綿ボール,鉛筆,打鍵器,シリンダ(空き缶や瓶),ゴニオメータ,ストップウォッチ,アイマスク,椅子,ベッドサイドテーブルなどが適宜必要になります。

評価にかかる時間

 検査内容が多く,慣れていても30分程度の検査時間がかかってしまいます(Poole & Whitney, Physical & Occupational Therapy in Geriatrics, 2001)。報告によると最大で約2時間(110分)かかってしまうというものもあります (Malouin et al., Arch Phys Med Rehabil, 1994)。

評価の信頼性,妥当性など

床・天井効果

 急性期脳卒中患者の感覚機能の項目で天井効果があるようです (Lin et al, Clinical Rehabilitation, 2004)。

信頼性

(1) 再試験信頼性(いつ評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 運動機能,感覚機能,他動的関節可動域の項目で確認されています (Platz et al, Clinical Rehabilitation, 2005)。

(2) 検者間信頼性(誰が評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 全項目で確認されています (Duncan et al, Phys There, 1983;Sanford et al, Phys There, 1993;Lin et al., Clinical Rehabilitation, 2004)。

(3) 検者内信頼性(同じ人が数回評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 確認されていません。

(4) 内的整合性(評価したいことが評価できているかどうか)

 確認されています (Wood-Dauphinee et al, Stroke, 1990;Lin et al, Clinical Rehabilitation, 2004)。

妥当性

(1) 基準関連妥当性(他の似たような評価指標と関連するかどうか)

 Moter assessment scaleの座位項目以外と関連があります (Malouin et al, Arch Phys Med Rehabil, 1994)

(2) 構成概念妥当性(評価内因子を合わせて評価したいものを評価できているか)

 急性期,慢性期の脳梗塞患者で確認されています (Dettmann et al, Amer J Phys Med, 1987;Shelton et al, Stroke, 2000;Mao et al, Stroke, 2002)。

(3) 内容的妥当性(項目に評価したい内容を含んでいるか)

 確認されています (Crow et al, Physical Therapy, 2008;Woodbury et al, Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 2008)。

(4) 表面的妥当性(その道の専門家からみて妥当かどうか)

  確認されています (Gladestone et al, Neurorehabilitation and Neural Repair, 2002)。

まとめ

 古くから用いられている評価指標なので,十分に信頼性,妥当性は検討されてるといってもいいでしょう。しかし,評価の項目が多く,診療を妨げる程の時間がかかってしまいます。研究に用いられることは多いですが,臨床ではあまり使われている印象はありません。こういった問題を解決しようと,項目ごとに評価内容を改変して用いている報告も散見します。いずれにせよ,より簡便で,信頼性,妥当性の高い評価指標が求められています。