EBMを実践する意味や効果


 EBM(根拠に基づいた医療)を実践するためには,いくつもの手順を踏まなくてはならなりません。難しい文献も読まなければなりません。その労力に見合っただけの効果があるのでしょうか。EBM実践の意味や効果について考えてみましょう。

EBMの効果とは何か

 EBMは医療の方法論なので,患者さんの「回復」がその効果です。また,医療者にとって患者さんは顧客でもあるので,「医療の満足度」も効果指標の一つです。つまり,EBMを実践しないことに比べて,EBMを実践した方が患者さんがより回復して,満足してくれれば,EBMに効果があるといえます。

 また,EBMの実践によって医療の標準化が進み,どの地域でも同程度の医療が受けられることも副次的な効果です。同様に,EBMは定量化された情報に基づいた医療なので,EBMの継続とともに社会全体の医療の質が向上していく効果もあるでしょう。

EBMに効果はあるのか

 結論から言うと,EBMの有効性についてまだ良く分かっていません。EBM自体の有効性を証明するエビデンスが乏しく,明確な結論をだす段階にないのです。材料 (エビデンス) がなければ,料理(EBM実践))ができず,料理(EBM実践)ができなければその味(有効性)は調べようがありません。EBMの有効性を結論づけるには多くの時間がかかります。

 一方で,現状でもエビデンスに基づいたガイドラインを導入する前後で,患者さんへの効果を検討した結果,多くのガイドラインでその有効性が確認されています。また,EBMが医療の質(標準化や効率性)を向上させつつ医療費の削減に貢献できるかどうかも議論されています。これらはEBMの本来の目的ではありませんが,EBMの導入が副次的に医療を良い方向に導いている可能性があります。

効果を示すために大切なこと

 現状では,医師の領域でもEBMが確立されている治療法は20%程度と言われています。臨床研究に取り組む人の少ない医療専門職ではもっと少ないと思います。EBMが効果的だという推測はされていますが,実際に効果を調べるためにはもっと多くの研究成果やEBMの実践者が必要です。

 医療の細分化が進むなかで,患者さん本人に,あるいは他領域・他職種間で自身の医療行為が有効であることを理解してもらうためには,医療専門職こそが臨床研究やEBMの実践に取り組まなければなりません。どの医療専門職も第三者を納得させることのできる根拠を提示して社会的な要求に応える必要があります。

まとめ

 現状ではEBMの効果を定量的に示すことができていません。今後,質の高い臨床研究成果が増えて,EBMが容易に実践できるようになれば,効果についても明らかになっていきます。今後の発展に注目したいところです。

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