等張性筋収縮(等張性収縮,等張性運動)は筋の収縮様式の一つで,関節運動を伴う筋収縮です。厳密にいえば人で等張性筋収縮は起こりませんが,ここでは関節運動を伴うダンベルや腕立て伏せなど一般的な筋力増強トレーニングを等張性筋収縮による筋力トレーニングと定義することにします。それでは,等張性筋収縮による筋力増強トレーニングの詳細を説明します。
どんな人に適用があるか
等張性筋収縮は関節を動かすことのできる全ての人に適用できます。反復的に筋を収縮させるトレーニングを想像して下さい。冒頭でも述べたように,同じ重さのダンベルを持って肘を屈曲させたとしても,関節角度によって筋張力は変化するので,「等張性」ではありません。等尺性筋収縮と対応させて,関節運動を伴う反復的な筋収縮を指して等張性筋収縮による筋力トレーニングと定義しています。
適切な負荷量(抵抗量)
等張性筋収縮による筋力増強トレーニングは,反復最大負荷(RM, repetition maximum)によって定量化します。RMとは,例えば1度だけ肘関節屈曲できる最大の重さを1RM,なんとか10回反復して肘関節を屈曲できる場合を10RM(11回目は同じ負荷でできない)と規定する方法です。
1RMを基準として負荷量を考えると,筋力増強には約60%以上の負荷が必要だと言われています。下に1RMに対する負荷量と反復可能回数の表を示したので参考にしてください(Buhrle, 1971より改変)。
負荷量:
1RMに対する割合(%) |
反復可能回数(回)
|
100
|
1
|
95
|
2〜3
|
90
|
4〜5
|
85
|
6〜7
|
75〜80
|
8〜10
|
例えば,1RMの75〜80%の負荷量でトレーニングさせたい場合は,最大で8から10回反復できる回数(つまり8〜10RM)でトレーニングすれば良いことになります。
長所と短所
筋力増強トレーニングでは筋の収縮様式によって長所と短所があります。等張性筋収縮の長所と短所には以下のようなものがあります。
長所
等張性筋収縮による筋力増強トレーニングの長所は,負荷量を定量化しやすいことです。RMを用いれば,1RMに対する負荷量を相対的に定量化できます。
短所
関節運動によって痛みや損傷の危険性がある患者さんには使えません。また,最初に1RMを測定しなければならず,必ず患者さんに最大負荷での筋収縮を行なってもらわなければいけないことも,場面によっては短所になりえます。
まとめ
等張性筋収縮による筋力増強トレーニングは,負荷量の定量化が簡単で,動作に直結した(関節運動を伴う)トレーニングを行うことができます。臨床場面では筋力増強トレーニングとして一般的に選択されます。一方で,関節痛や炎症を助長しやすいため注意が必要です。筋の収縮様式の種類や適用対象,その長所や短所を理解した上で,適切な筋力増強トレーニングを選択して下さい。
運動療法学(関連記事一覧)
運動療法学(関連記事一覧)