肩甲上腕リズム:正しく理解する


 肩甲上腕リズムは,リハビリ専門職の養成校で必ず教わる身体運動学の古典的知識です。この記事では肩甲上腕リズムの一般的な理解について説明して,その値が全ての人に当てはまるのかについて考えてみます。

肩甲上腕リズムの一般的な理解

 肩甲上腕リズムとは,肩関節挙上 (あるいは腕−体幹挙上) したさいの肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の共同運動を表したものです。古典的には,外転30°から一定のリズム (肩甲上腕関節 2° 外転すると肩甲胸郭関節が 1° 上方回旋する) が続くとされ,その比は約 2:1 となるいわれています (McClure PW, JShoulder Elbow Surg, 2001)。

実際は研究によって比率が異なる

 これまで肩甲上腕リズムについて多くの報告がなされてきましたが,各研究の結果には相違点が多い状況です。例えば,肩甲上腕リズムの比率が挙上角度とともに変動することが報告されており (Bagg SD & Foreest WJ, Am J Phys Med Rehabil, 1988; Graichen H et al., Clin Orthop, 2000),常に一定の比率で両関節の運動が生じているわけではなさそうです。

肩甲上腕リズムの正しい見解

 それでは何が肩甲上腕リズムについての正しい見解なのかについて,各研究で同じように確認されている点について考えてみましょう。

肩甲上腕リズム研究の類似点

  1. 肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節は,肩関節挙上のほぼ全可動域を通して共同して運動
  2. 肩甲上腕リズムの比率は,運動面と関節の角度によって変動
  3. 肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の可動域の比率は,筋活動に依存する
  4. 肩甲上腕リズムの形成には個体差が大きい

 つまり,この時点ではっきりと言えるのは少なくとも「全可動域を通して肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節は共同して運動」しており,「その比率は個体差や筋活動のによって左右されうる」ということです。

まとめ

 肩甲上腕リズムを肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の共同運動として意識することは臨床上で重要だと思いますが,「2:1」という一般的な比率をそのまま患者さんに適用できないので注意が必要です。

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