Numeric Pain Rating Scale (NPRS) は,痛みの評価として最も頻回に用いられている指標です。本邦では用語を簡略化してNumeric Rating Scale (NRS) と呼ばれることもあります。以下にその目的,方法および特性(床・天井効果,カットオフ値,信頼性や妥当性など)について説明します。
評価の目的や対象
NPRSは痛みの主観的な強さを評価するための指標です。慢性痛および急性痛の程度を評価します。これまで疾患としては,術後疼痛,複合性局所疼痛症候群 (CPRS) ,リウマチ性の関節炎など様々な疾患の疼痛に対して用いられています。認知機能が低下している場合も,MMSE18点以上であれば適応可能です。
評価の方法
評価の項目と手順
NPRSは,「0:痛みなし」から「10:想像しうる最も強い痛み」までの11段階で評価します。対象者(患者)は痛みの程度を口頭で示します(紙面で評価することもできます)。ただし,評価できる痛みは24時間以内に対象者が感じたものでなくてはなりません。つまり,過去(例えば2週間前)に対象者が体験した痛みについて評価することができないので注意が必要です。
評価にかかる時間
簡便な評価なため,3分以内には評価できます。必要以上に時間がかかる場合は,NPRSが評価に適切でない可能性があります(例えば高度認知機能低下や失語症などが並存しているなど)。
評価に必要な物品
口頭評価の場合は特にありません。紙面上で評価する場合には紙と筆記用具が必要になります。
評価の特性
床・天井効果
渉猟した限り現在のところ確立されていません。
カットオフ値
一般的に,NPRSの得点を一定の基準で軽度,中等度,高度の3グループに分けることができるとされています。しかし,その基準は文献によって様々で一定した見解は得られていません。National Comprehensive Cancer Network (NCCN) のガイドラインでは,1~3を軽度,4~6を中等度,7~10を高度と定義しているようです。
信頼性
(1) 再試験信頼性(いつ評価しても同じ結果が得られるかどうか)
慢性疼痛患者で確認されています (Jensen & McFarland, 1993) 。
(2) 検者間信頼性(誰が評価しても同じ結果が得られるかどうか)
渉猟した限り確認されていません。
(3) 検者内信頼性(同じ人が数回評価しても同じ結果が得られるかどうか)
健常者の疼痛で確認されています (Herr et al, 2004) 。
(4) 内的整合性(評価したいことが評価できているかどうか)
慢性疼痛患者と健常者の疼痛で確認されています (Jensen & McFarland, 1993; Herr et al., 2004) 。
妥当性
(1) 基準関連妥当性(他の似たような評価指標と関連するかどうか)
健常者の疼痛でVisual analogue scale (VAS) との相関関係が示されています (Herr et al, 2004) 。
(2) 構成概念妥当性(評価内因子を合わせて評価したいものを評価できているか)
渉猟した限り確立されていません。
(3) 内容的妥当性(項目に評価したい内容を含んでいるか)
渉猟した限り確立されていません。
(4) 表面的妥当性(その道の専門家からみて妥当かどうか)
渉猟した限り確立されていません。
まとめ
Numeric Pain Rating Scale (NPRS) は,患者自身が痛みの主観的な程度を数値で表す評価指標です。痛みの主観的な評価指標としては最も簡便で,頻繁に使用されています。様々な性状の痛みに使用されていて,軽度の認知機能低下であれば適用することができます。しかしながら,信頼性や妥当性については確認されていないことも多く,疑問が残ります。また,小児や極度の認知機能低下の対象に対しては用いることができず,個人要因や環境要因に影響を受けやすいと考えられています。対象の特性に応じてその他の評価指標 (VASやFace scaleなど) と使い分けてください。評価の特徴や方法(評価指標一覧)