金属支柱付き短下肢装具の特徴と適応


Charcot(@StudyCH)です。

短下肢装具(AFO)は主に中枢神経系疾患患者、特に脳卒中片麻痺患者に多く用いられます。短下肢装具には様々な種類があって、その素材や構造によって特徴や患者さんへの適応が異なります。

この記事では、金属支柱付き短下肢装具(金属支柱付きAFO)に焦点を当てて、その利点や問題点、構造、付属品、適応患者などについて説明します。

金属支柱付き短下肢装具とは

短下肢装具は、下肢装具の中でも足底から下腿までを支持する構造を持ち、主に足関節の動きを制御するものです。

その中でも、金属支柱付き短下肢装具とはその名が示す通り、金属製の支柱によって支えられた強固な装具です。支柱以外は、半月、カフバンド、足継手、あぶみなどで構成されています。また、ストラップやパッドなど付属して加算要素をつけやすいという特徴があります。

図 短下肢装具の構成

金属支柱付き短下肢装具の利点と問題点

金属支柱付き短下肢装具には、金属支柱ならではの利点や問題点があります。以下に利点と問題点に分けて述べます。

利点(メリット)

  • 金属支柱のため強度が高く,破損しにくい
  • 継手に様々な種類があり,関節運動を簡単に制御できる
  • ストラップやパットなどの加算要素によって足関節内外反の制御を行いやすい
  • 仮合わせや完成してからの修正,破損時の修理,部品交換が行いやすい
  • 下腿を覆う部分が少なく,通気性が良好

問題点(デメリット)

  • 金属製のため重い
  • 外観が悪い(いかにも装具)
  • 金属が錆びて劣化する
  • 使用状況によって継手が摩耗して可動角度が変化する可能性がある
  • 使用時に金属が擦れる雑音が生じる可能性がある


金属支柱の構造と耐用年数

金属支柱の構造には両側支柱、片側支柱、S型支柱、銅線支柱および板ばねがあります(下図参照)。また、硬性という構造にも金属支柱をつけることがありますが、プラスチック製であることが多いため、ここでは割愛します。

図 金属支柱の構造

これらの構造の概要と耐用年数を表にしました。

基本構造
概要
耐用年数
両側支柱 下腿の長軸に沿って内外の両側に金属の支柱をもち,両支柱を結ぶ一つ以上の金 属の半月をもつもの。
3年
片側支柱 下腿の長軸に沿って内外のどちらか一方に金属の支柱をもつもの。
S型支柱 下腿の周囲をらせん状に走る金属の支柱をもつもの。
銅線支柱 下腿の長軸に沿って走る鋼線の支柱と両支柱を結ぶ金属の半月をもつもの。鋼線の支柱は,足関節の高さ付近で円形に曲げられて,コイルばねの機能をもたせてある。
板ばね 下腿の後方に長軸に沿って走る金属又はプラスチックのばねをもつもの。ばねの上端は,金属又はプラスチックの半月につながる。

足継手の種類と特徴

足継手には前後にポケットがあって、その中に金属ロッドを入れる場合と、コイルスプリングを入れる場合があります。

固定、誘導、底屈制動、背屈制動、底背屈二方向制動を目的とする場合は金属ロッドを用います。一方で、背屈補助や底屈補助、底背屈二方向補助を目的とする場合はコイルスプリングを用います。

コイルスプリングを後方ポケットのみに入れる継手をクレンザック足継手(背屈補助)、前方のみに入れる継手を逆クレンザック足継手(底屈補助)、両方に入れる場合をダブルクレンザック足継手(底背屈二方向補助)とそれぞれ呼びます。

内外反矯正ストラップ

金属支柱付き短下肢装具では、足関節の内外反をストラップによって矯正することができます。ストラップにはTストラップとYストラップがあり、Tストラップは足関節内反の矯正に、Yストラップは足関節外反の矯正に用いられます(図参照)。

図 内外反矯正ストラップ

Tストラップは外側から水平方向に内側支柱に向かって外果部を牽引します。一方で、Yストラップは内側アーチの低下を補うため、内果下方から斜め上方に外側支柱に向かって牽引します。

金属支柱付き短下肢装具の適応患者

弛緩性麻痺や重度痙性麻痺の方に

一般的に金属支柱付きの短下肢装具は、足関節が下垂足になるような弛緩性麻痺や、反対に足関節が痙性によって尖足になってしまうような中等度から重度の麻痺を持つ患者さんに対して処方されます。また、内反や外反変形が強い患者さんにも、ストラップによる補助が可能で、固定性も高い金属支柱付き装具が適していると言われています。

膝のコントロールが不良な方に

さらに、反張膝や膝折れ、膝屈曲拘縮を合併して、膝関節のコントロールが困難な患者さんにも適応となります。反張膝に対しては0°から10°の角度で底屈制限・後方制動を行ない、膝折れや軽度の屈曲拘縮には背屈制限・前方制動に足継手を調整します。 

症状が変化する時期の装着に適している

金属付き短下肢装具には、足継手が付いているため、その種類を変えることで足関節の可動域に制限を与えたり、コイルスプリング付きの継手(クレンザックやダブルクレンザック)を使用することで底背屈の補助を行うこともできます。そのため、 金属支柱付き短下肢装具は症状が変化するような急性期や回復期の脳卒中患者さんに適応があると言えます。

金属支柱付き短下肢装具の適合度チェック

リハビリ専門職(特に理学療法士)は、実際に作成された装具が患者さんに適しているかチェックする必要があります。チェック項目は以下のBoxを参照して下さい。

適合度のチェックポイント

  1. 下腿半月の上縁の位置が腓骨頭から2〜3cm下にあるか
  2. 半月の幅は4cm程度か
  3. 足継手の位置は内果の下端と外果の下端を結ぶ線で,この線が下腿長軸と内側で約80度の角度であるか
  4. 支柱や継手の位置と皮膚との間隔が体重負荷した場合に5〜10mmであるか
  5. 装具着用時に異常歩行がみられないか
  6. 歩行時に足継手が抵抗なく作動しているか,また雑音はないか

まとめ

金属支柱付き短下肢装具は、短下肢装具の中でも強固で、カスタマイズしやすく、優秀な機能を持ち合わせています。一方で、その重さや、外観の悪さで実際に使用する患者さんからの評価はあまり高くありません。

弛緩性麻痺から痙性麻痺まで、麻痺を持たれている方の状態は多様です。患者さんの活動量によってもその状態は変化します。

われわれリハビリテーション専門職は、患者さん個々の状態に合った装具を選択する必要があります。

それでは皆さまの学習がよりいっそう充実することを願って。

Charcot(@StudyCH)でした。All the best。

参考図書


関連記事:プラスチック製短下肢装具の特徴と適応