コホート研究 (前向き,後ろ向き) と症例対照研究の違い


 前向きコホート研究,後ろ向きコホート研究と症例対照研究は,どれも観察研究と呼ばれるものですが,前2つの似たような名称に加えて,どれも同じように疾病の発生リスクを調査するものであり,大変分かりにくいと思います。この記事では,これらの研究デザインの違いを説明します。

各研究デザインの違い

 前向きコホート研究,後ろ向きコホート研究,症例対照研究の特徴を下記にまとめてました。項目を見比べるとその違いが見えてくるはずです。

前向きコホート研究

  • 要因の分類を行ってから観察 (データ収集) をする 
  • 指標は相対危険度

後ろ向きコホート研究

  • 既にあるデータに基づいて要因を分類し,更に観察 (データ収集) を続ける 
  • 指標はO/E比など

症例対照研究

  • 要因を分類してからその要因についてのみ過去に遡って調査 (データ収集) をする 
  • 指標はオッズ比

 ポイントは調査の時系列です。前向きコホート研究は,現在に曝露要因を定めて,未来に向かって調査していきます。つまりこの時点では対象者は疾病に罹患していません。一方,症例対照研究は,対象者が疾病に罹患した状態である現在に,過去の曝露状況を調査します。後ろ向きコホート研究はすでに曝露が起こった現在に,過去の曝露状況を調査して,さらに未来に向かって調査を継続します。

まとめ

 過去の記録を用いない点から,前向きコホート研究がエビデンスレベルでは有利ですが,実際はそれぞれに得意,不得意の研究環境があります。これら研究のメリット,デメリットについては,それぞれを扱った記事に詳細に説明しています。