脳卒中患者への筋トレ効果:伸張性収縮 vs 短縮性収縮


今回紹介する文献
Eccentric Versus Concentric Resistance Training to Enhance Neuromuscular Activation and Walking Speed Following Stroke
(Clark DJ, Patten C. Neurorehabil Neural Repair. 2013 May ; 27(4) : 335-44)

 脳卒中患者に対する筋トレ方法の違いが機能向上に及ぼす影響を調査したRCT研究を紹介します。


短縮性収縮群と伸張性収縮群にランダム割付

脳卒中患者34名を麻痺側下肢のレジスタンストレーニングを短縮性収縮で行う群(CON群)と伸張性収縮で行う群(ECC群)に分けて,それぞれレジスタンストレーニング後に歩行練習を行いました。各群の歩行速度や筋力,神経筋活動の変化を調べて比較したそうです。

伸張性収縮で歩行速度や筋活動がより改善

結果として, ECC群の麻痺側大腿直筋と内側直筋の神経筋活動や,麻痺側の筋力がCON群に比べ有意に増加したそうです。また,ECC群はトレーニングしていないはずの非麻痺側の筋力も有意に増加したそうです。さらにECC群はCON群より歩行速度が有意に向上したそうです。著者らは伸張性収縮によるレジスタンストレーニングが両側性の筋活動や筋力および歩行速度を改善させることを示唆しています。

コメント

 この研究結果のように,片側の機能回復がもう対側の機能回復につながることをCross Education効果といいます。昔から知られている効果ですが,脳卒中患者でこういったことを聞くようになったのは最近のような気がします(ただの勉強不足かもしれない)。ちなみにeccentricとconcentricを遠心性収縮と求心性収縮と訳す方もいますが,私には違和感があります。どうしても遠心性は中枢から末梢へ向かうefferent,求心性は末梢から中枢へ向かうafferentを思い浮かべてしまいます。だからといって伸張性収縮という言葉も厳密にはおかしいんですけどね(収縮と伸張が対義語なので…)。

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