医療従事者が臨床でエビデンス(文献)を探す方法


 EBMを実施するためには,臨床上の疑問をPICOによって定式化した後,それに関連したエビデンス (文献) を探さなくてはなりません。PICOの詳細は「 PICOによる臨床疑問の定式化」を参照して下さい。さて,我々医療従事者は文献をどうやって探せばいいでしょうか。この記事ではエビデンスの探し方について学びましょう。

教科書

 何か知識を得たいとき,最も一般的な方法は教科書を読むことです。教科書は,ある程度にその分野の研究が進んでいる情報,つまり一般化された情報を知りたい場合には適切な情報源です(例えば,解剖学で骨や筋の位置や名称を知りたいなど)。

 だだし,教科書はある分野について決められたページ内で網羅的に説明しなければならず,定量的な情報が不足しています。そのため,必要な情報の概要を把握することはできても,EBM実践に重要な文献の批判的吟味を行えません。それに教科書の作成に際して,その内容が審査されることは通常ありません。つまり,内容や引用が誤っていることがあります。さらに,改訂はせいぜい数年ごとであり,情報の更新が遅いというデメリットがあります。

雑誌

 雑誌は定期的に出版されており,購読していればその雑誌の分野について最新の知見を提供してくれます。しかし,過去の文献から現在の文献まで網羅的に文献を探そうと思うと,文献検索に多くの時間がかかり,大変な作業になってしまいます。忙しい臨床の合間に必要な情報の記載された文献を数ある雑誌から探すのは困難です。

文献データベース

 結局,忙しい臨床の合間をぬって効率的に文献を探すためには,文献データベースを用います。文献データベースとは,雑誌に掲載された文献を集め,検索しやすいようにデータベース化したものをいいます。以下にいくつかの文献データベースをまとめましたので参考にして下さい。

コクラン・ライブラリー Cochrane Library

 コクラン・ライブラリーとは,イギリスではじまり各国に広まった「コクラン共同計画」の成果を集めたデータベース群です。いくつかデータベースがあるのですが,システマティックレビューを収録した The Cochrane Database of Systematic Reviews,CDSR がその中核をなしています。

 各国のボランティア組織が比較臨床試験を見つけライブラリーに登録する仕組みになっており,ボランティアのレビューアーが組織的にシステマティックレビューを行い,徹底的に批判的吟味を行った上でデータベースに提供しています。

 コクラン・ライブラリーの文献を全文読みたい場合は,CD-ROM版を購入するか,インターネット版でオンライン購読 (有料) するかしかありません。大学や病院で法人契約を結んでいることがあるため,ご自身の所属先に確認して下さい。また,インターネット版では無料で抄録 abstract を読むことができ,後述するPubmedにも無料で公開しています。

外部リンク: The Cochrane Library

MEDLINE

 米国国立医学図書館で作成されている医学文献データベースです。 1966年以降の文献1,500万件以上,医学雑誌5,000誌以上をカバーしています。このMEDLINEにアクセスすることがエビデンス探しの王道です。 一方で,治療に関する論文については,コクラン・ライブラリーの方がランダム化比較試験とそれに準ずるトライアルのみをデータベース化しているため知りたい情報を集めやすいかもしれません。

PubMed

 PubMed はおそらく一度は耳にしたことがある文献検索サイトだと思います。PubMed はインターネット上で MEDLINE のデータベースにアクセスするためのシステムです。Clinical Queries という機能を使用して絞り込みます。PubMed では「治療」「診断」「病因」「予後」の4つの領域について,あらかじめ研究デザインを意識しなくても目的の論文を検索することができます。また,感度と特異度のどちらを優先して検索するかを選ぶこともできます。PubMed は使いこなすのは難しいのですが,慣れてくると目的の文献をある程度絞り込んで探すことができます。

外部リンク:Home - PubMed - NCBI

CINAHL

 CINAHL は,CINAHL Information Systems が運営・維持していて,主に看護,保健関連領域の文献を収録しています。また,雑誌論文の他に図書,博士論文,クリティカルパス,測定用具など多用な資料を収録しています。

PEDro

 PEDro は,CEBP (The Centre for Evidence-Based Physiotherapy) が運営・維持していて,設立者が理学療法士グループであるため,理学療法領域の文献を収録しています。特徴は,PEDro に収録された臨床試験がPEDro scale と呼ばれるチェックリストによりランク付けされていることです。

 PEDro scale では11の評定項目のうち外的妥当性を判断する最初の項目を除いた10項目,合計10点で評価します。そのため,MEDLINE などとは違い,数ある文献を一定の水準でフィルターにかけた状態で検索できるため,最も有効なエビデンスを迅速にみつけられます。

 文献を全文で入手したい場合,配布してくれる機関・出版サイトへのリンクがついていれば,そこから入手が可能です。しかし,リンクがない場合は,PubMed にリンクされている機関・出版サイトを通しての入手となります。どちらの場合も,有料の場合と無料の場合があるので注意して下さい。日本語化されたサイトもあるのですが,ページを開くのが少し重たい印象です。それだけ頻繁にアクセスされているのだと思いたいところです。

外部リンク: 日本語 - PEDro

まとめ

 それぞれの文献データベースの詳細な使い方は,そのデータベース名で検索するとたくさん出てきますので,そちらを参考にして下さい。MEDLINE (PubMed) のようなノンフィルターのデータベースを活用するよりは,コクラン・ライブラリーやPEDroのように専門家が批判的吟味を行い,文献をふるいにかけたものを収録しているデータベースを利用するのが良いと思います。自分で文献をみつけてしっかり批判的吟味ができれば良いのですが,忙しい臨床の合間です,そのような時間がない方もいるでしょう。効率的に目的の文献を探すために,それらのデータベースから文献検索を着手するのが得策です。

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