脳卒中発症後14日間は身体活動量が低い


今回紹介する文献
Inactive and alone: physical activity within the first 14 days of acute stroke unit care.
(Bernhardt J et al., Stroke. 2004 Apr;35(4):1005-9. )

 今回は脳卒中発症直後の患者の身体活動パターンを調べた観察研究を紹介します。 脳卒中患者を早期に離床させることによって,不活動による廃用症候群の発生を減らすと言われています。一方で脳卒中発症直後の患者さんが実際どのくらい不活動なのかについては良く分かっていません。 そこで,この研究は,急性期脳卒中ユニットに入院中の脳卒中患者に対して以下のことを目的として行われました。
  1. 発症14日以内の身体活動量を評価すること
  2. 身体活動の場所と他者との活動を記述すること
  3. 身体活動の量に影響を与える因子を明らかにすること

発症14日以内の患者64名を対象とした観察研究

 この研究は観察研究として行われました。対象は,5つの脳卒中ユニットから発症14日以内の患者64名とされました。除外基準は,緩和ケアを受けているものとして,再発の脳卒中患者は取り込まれました。

 研究者らは2日間午前8時から午後5時まで10分毎に一人あたり1分間の観察を行いました。頻回な観察によって,身体活動内容,場所,他者の存在を調べて,観察できた活動の最大を記録されました。観察することは患者に通知されました。担当セラピストによって患者に対する療法内容(介入内容と時間)が詳細に記載されました。記述的な情報は質問紙にて聴取されました。

 この研究ではベッド外での座位姿勢は健康維持上の活動とみなされました。経験のある臨床家の判断によって11の身体活動は5つ(①身体活動がない,②健康維持上の活動ではないもの,③軽度の健康維持効果のあるもの,④中等度の効果のあるもの,⑤高度の効果のあるもの)のカテゴリに分類されました(Table1を参照)。


急性期脳卒中患者は身体活動量が低い

 最終的に対象患者は58名になり,その平均年齢は71.3歳でした。脳卒中の重症度は軽度(NIHSSスコア1点)から重度(NIHSSスコア27点)まで幅広く,観察時点での平均発症日数は5.6日(範囲は0日から13日)でした。58名中9名は医療者の都合によりベッドに拘束されていました。拘束の理由は,血圧の変動,意識障害,PE,肺炎および出血性合併症でした。

 治療期間中,患者の50%以上がベッドで安静にしており,28%は離床していました。しかしながら,合併症を予防し,機能改善を図る事のできる程度の活動を行っていたのは全体の13%でした。また,患者の60%以上は一人で活動していました。初発か再発か,また家族がいる時間は身体活動レベルとは関係がありませんでした。脳卒中の発症日数も身体活動と関連しませんでした。


コメント

 この研究によって発症初期の脳卒中患者は身体活動量が低く,また一人で過ごすことが多いことが分かりました。著者らは今後,標準的なケアと比較して,早期の身体活動レベルの増加が与える影響を検討するためのRCTを企画しているようです。身体活動量が低下すれば廃用症候群が生じる可能性が危惧されますが,一人で過ごすことが多い環境もまた問題だと私は感じました。刺激的で豊かな環境が推奨されている脳卒中リハビリテーションですが,入院環境に働きかけるような関わりが必要なのかもしれません。

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