対応のあるt検定


Charcot(@StudyCH)です。

t検定はある変数間の平均差を検定するパラメトリックな手法で、3つの種類があります。今回ご紹介する対応のあるt検定もその一つです。ここでは対応のあるt検定の特徴をSPSSを使った実践例も含めてわかりやすく説明します。

どんな時に使うか

ある集団に対して何かしらの介入をした前後の変数を比較したい場合に対応のあるt検定を用います。

例えば、B地区T校の小学6年生に食事指導を行なった前後の体重を比較する場合、比較対象はT校小学6年生の同じ集団(同じ人たち)です。このように、対象が同じ集団であるところがこの検定のポイントです。

使用できるデータの尺度や分布

正規分布に従っていて、尺度水準が比率か間隔尺度のデータ(例外として順序尺度のデータを用いることもあります)に用います。

ただし、正規分布に関しては考慮しなくても良いという意見もあります。比較する母集団の分布は同じ集団のためほぼ等しいと考えて良いことと、そもそもどのような分布のデータでも平均にしてしまうと正規分布に従う性質があるためです。

もしデータが正規分布していない場合は、ノンパラメトリック検定である「Wilcoxonの符号付順位検定」を使います。正規性の確認を怠らないようにして下さい。

検定結果の指標

統計結果の指標には値を用います。95%信頼区間の場合は p < 0.05 で、99%信頼区間の場合は p < 0.01 で有意差があると判断できます。

しかし、t検定は「差が0である」ことを検定しているため、差の程度については不明です。つまり、その差が0.0000001であったとしても、t検定で有意差ありと判断できる可能性があるので、結果の解釈には注意して下さい。

実際の使用例(SPSSの使い方)

実際のSPSSによる解析方法を模擬データを使って説明します。今回は、B地区T校の小学6年生に2ヶ月間の食事指導を行なった前後の体重データが手元にあるとします。食事指導前後の体重の平均の差を実際に比較してみます。

この例では帰無仮説と対立仮説を以下のように設定します。

帰無仮説 (H0) :食事指導前体重の平均 = 食事指導後体重の平均
対立仮説 (H1) :食事指導前体重の平均 ≠ 食事指導後体重の平均

  1. データをSPSSに読み込みます。この時、食事指導前後のデータを2列に並べて入力して下さい。
  2. メニューの「分析 → 平均の比較 → 対応のあるサンプルのt検定 (P)…」を選択します(下図)。


  3. 「食事指導前_体重」と「食事指導後_体重」を「↪」で検定変数に移動させます(下図①)。
  4. 「オプション」をクリックして「オプション」ダイアログを開きます。信頼区間(一般的に95%か99%で設定)を入力して下さい(下図②)。
  5. 「続行」で「オプション」ダイアログを閉じたら、「OK」ボタンを押せば検定が開始します。



  6. 結果のダイアログがでたら「平均値」と「標準偏差」をみて比較対象の大小やばらつきを確認して下さい。
  7. 次に「有意確率(両側)」で、p < 0.05(あるいは < 0.01)を満たしているかを確認して下さい。


今回の結果だと有意確率(両側)が「.001」とでたので p < 0.01 を満たしていますね。帰無仮説を棄却(否定)できたので、食事指導前後の平均を比較すると食事指導後に体重が有意に差があり、平均差で2kgほど減少したと結論できます。

まとめ

対応のあるt検定は、正規分布に従っていて、比較対象が同じ集団であれば用いることができます。臨床研究デザインでいえば、前後比較研究で多く使われる検定方法です。臨床研究よりは実験系の基礎研究でも頻出する検定です。

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