Wilcoxonの符号付順位検定


Charcot(@StudyCH)です。

今回ご紹介するWilcoxon(ウィルコクソン)の符号付順位検定は中心分布の差を検定するノンパラメトリックな手法です。パラメトリックな手法である対応のあるt検定を使うことができないデータに対してこの検定を選択することになります。ここではWilcoxonの符号付順位検定の特徴をSPSSを使った実践例も含めてわかりやすく説明します。

どんな時にこの検定を使うか

ある集団に対して何かしらの介入をした前後の変数を比較したい場合で正規分布に従っていない場合はWilcoxon(ウィルコクソン)の符号付き順位検定を用います。

例えば、B地区の高齢者に運動指導を行なった前後で運動習慣についてアンケート調査を行なって、アンケートの得点を比較したい場合、比較対象はB地区高齢者の同じ集団(同じ人たち)です。このように、比較対象が同じ集団であるところがこの検定のポイントです。

使用できるデータの尺度や分布

正規分布に従っておらず、尺度水準が比率尺度、間隔尺度および順序尺度のデータを用いることができます。

もしデータが正規分布に従う場合は、パラメトリック検定である「対応のあるt検定」を使うことになります。正規分布に従うデータをノンパラメトリックな手法で検定することも可能ですが、いくつか問題がありますので正規性の検定を怠らないようにして下さい。

検定結果の指標 

検定結果の指標はp値を用います。95%信頼区間の場合は p < 0.05 で、99%信頼区間の場合は p < 0.01 で有意差があると判断できます。

実際の使用例(SPSSの使い方)

模擬データを使ってSPSSによるWilcoxon(ウィルコクソン)の符号付順位検定を実践してみましょう。B地区の高齢者に運動指導を行なった前後で運動習慣についてアンケート調査を行なったデータが手元にあるとします。

アンケートは「毎日運動する=1、週4回以上運動する=2、週2〜3回運動する=3、週1回運動する=4、全く運動しない=5」という5段階で得点化しました。運動指導前後のアンケート結果に差があるか実際に比較してみます。

この例では帰無仮説と対立仮説を以下のように設定します。

帰無仮説 (H0) :運動指導前得点の中心分布 = 運動指導後得点の中心分布
対立仮説 (H1) :運動指導前得点の中心分布 ≠ 運動指導後得点の中心分布

  1. データをSPSSに読み込みます。この時、運動指導前後のデータを2列に並べて下さい。
  2. メニューの「分析 → ノンパラメトリック検定→ (SPSSバージョンが新しい場合は過去のダイアログ)→2個の対応サンプルの検定 (L)…」を選択します(下図)。


  3. 「運動指導前_運動週間」と「運動指導後_運動週間」を「↪」でテストペアに移動させます(下図①)。
  4. 検定の種類のWilcoxon (W) にチェックを入れます(下図②)。
  5. 「オプション」をクリックして「オプション」ダイアログを出します。四分位 (Q) にチェックを入れて下さい(下図③)。
  6. 「続行」で「オプション」ダイアログを閉じたら、「OK」ボタンを押せば検定が開始。


  7. 結果のダイアログがでたら、「漸近有意確率(両側)」で、p < 0.05(あるいは < 0.01)を満たしているかを確認します(下図)。



今回の結果だと漸近有意確率(両側)が「.000」とでたので p < 0.01 を満たしていますね。帰無仮説は棄却(否定)できるので、運動指導前後の運動習慣アンケート結果の中央値を比較すると有意な差があると結論できます。

まとめ

Wilcoxon(ウィルコクソン)の符号付順位検定は、正規分布に従っておらず、比較対象が同じ集団であれば用いることができます。臨床研究デザインでいえば、前後比較研究コホート研究で多く使われる検定方法です。実は正規分布に従うデータで用いることができますが、その場合、第2種の過誤が生じる可能性があるので注意が必要です(詳しくは「パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の違い」を参照して下さい)。

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