
同じデータなのに、ある検定では5%の水準で有意になり、別の検定では有意になりません。ダーウィンが育てたトウモロコシ15組の草丈の差(Darwin 1876)は、符号付順位検定では両側p値が0.041、フィッシャーが示した並べ替え検定では0.053でした(筆者が計算)。4つの検定を当てはめると、p値は0.0074から0.053まで分かれます。違うのは、それぞれの検定がデータのどの情報を使うかです。
地域の高齢者12人に運動指導を行い、前後で運動の頻度を5段階(1=まったくしない〜5=毎日)で尋ねると、7人は段階が上がり、1人は下がり、4人は変わりませんでした。この変化に意味があるかは、どう確かめればよいでしょうか。よく使われるのが、Wilcoxon(ウィルコクソン)の符号付順位検定です。
この検定は、1945年、化学者のFrank Wilcoxonがわずか4ページの論文で示したものです。前後の差をそのまま使わず、差の大きさの順位に置き換えて計算します。では、順位に置き換えると、何が残り、何が消えるのでしょうか。
Wilcoxonの符号付順位検定の要点
- 何に使うか:同じ人を2回測ったデータなど、対応のある2つの値を比べる。大小の順序だけに意味がある順序尺度のデータや、外れ値の出やすいデータにも使える
- しくみ:2つの値の差をとり、差の絶対値に小さい順の順位を付け、正の差と負の差に分けて順位を足す。差がなければ、どの順位にも+と−が半々の確率で付くはずなので、順位の和の偏りからp値を求める
- 何を検定しているか:差がないことを表す帰無仮説は「差の分布が0を中心に左右対称」。差の分布が対称なときに限り、差の中央値の検定と読める
- 人数:差が0でない組が5組以下では、符号の付き方をすべて数え上げる正確なp値で求める限り、どんな結果でも両側p値は0.05未満にならない
- 差が0の人:除いて順位を付ける方法(Wilcoxon)と、含めて順位を付けてから除く方法(Pratt)がある。同順位の多いデータでは、正確なp値と、正規分布で近似して求めるp値も違うことがある
- t検定との比較:正規分布のデータでは、同じ検出力を得るのに必要な組の数で比べた効率が、対応のあるt検定の約95%(3/π)。外れ値の出やすいデータでは、t検定より差を見抜きやすい
- 結果の書き方:各時点の中央値と、データの中央の半分が入る範囲である四分位範囲、差が正・負・0の人数、検定統計量、p値、差の大きさを表す効果量を示す
化学者が4ページで示した方法
Frank Wilcoxon(1892〜1965年)は、もともとは統計学者ではなく、物理化学の博士号をもつ化学者でした。ボイス・トンプソン植物研究所にいたころ、同僚のYoudenらと、フィッシャーが1925年に出した『研究者のための統計的方法』を読む勉強会を開いています。WilcoxonもYoudenも、のちに統計学で大きな仕事を残しました(Brooks 2004)。その後、化学会社アメリカン・サイアナミッドに移り、殺虫剤と殺菌剤の研究室を率いました。Wilcoxonの論文を再録した解説によれば、彼は実験室の測定値を分析するたびに必要になる、果てしないt統計量の計算を何とか置き換えたいと考え、測定値をその順位に置き換える方法を提案しました(Noether 1992)。
1945年の論文「順位による個々の比較」には、対応のない2群を比べる順位和検定と、対応のある2つの値を比べる符号付順位検定の両方が含まれていました(Wilcoxon 1945)。順位和検定はその2年後、マンとホイットニーによって、人数の違う2群へ広げられます(MannとWhitney 1947、Mann-WhitneyのU検定)。
対応のある場合の例として使われたのは、ダーウィンの実験のデータでした。ダーウィンは1876年の著書で、他家受粉と自家受粉でできたトウモロコシの苗を1本ずつ組にして同じ条件で育て、草丈を比べました(Darwin 1876)。15組の草丈の差は、フィッシャーが1935年の『実験計画法』で、対応のあるt検定と、後で見る並べ替え検定の例に使ったものです(Friendlyら 2026)。そしてWilcoxonも、同じ15組の差を符号付順位検定の例にしました(SciPy 1.18.1の説明書)。同じデータを3つの方法で分析した歴史が残っているので、方法の違いを比べるのにちょうどよい材料です。
手順:差に順位を付け、符号ごとに足す
15組の差(他家受粉−自家受粉、単位は1/8インチ)は、13組が正、2組が負でした。符号付順位検定では、まず差の絶対値に、小さい順に1から15の順位を付けます。−48は絶対値で10番目、−67は14番目の大きさです。次に、正の差の順位と負の差の順位を、それぞれ足します。負の差の順位の和W−は10+14=24、正の差の順位の和W+は96で、両方を合わせると、1から15までの和の120になります(図1)。

図1 符号付順位検定の手順(ダーウィンのトウモロコシのデータ)。15組の草丈の差(他家受粉−自家受粉、単位は1/8インチ)を絶対値の小さい順に並べ、1から15の順位を付けた。W−とW+の合計は、1から15までの和の120になる。データはRのHistDataパッケージのZeaMays(出典 Darwin 1876)で、Fisher(1935)とWilcoxon(1945)もこの15組の差を例に使った
では、W−=24は小さすぎるのでしょうか。他家受粉と自家受粉で草丈に違いがなければ、差が正になるか負になるかは五分五分です。それなら、1から15のどの順位にも、+と−が半々の確率で付くはずです。15個の順位の符号の付き方は2の15乗、32,768通りあり、どれも同じ確からしさで起こります。すべての付き方についてW−を計算すると、図2の分布になります。このうちW−が24以下になるのは片側で2.1%、反対側のW+が24以下(W−が96以上)になる場合も合わせると4.1%です。これが両側のp値0.041です。

図2 差がないときのW−の分布(15組)。符号の付き方32,768通りのそれぞれでW−を計算した。色をつけた部分は、観測値24以下と、反対側の96以上。W−とW+の合計はいつも120なので、W−が24以下になることとW+が96以上になることは同じ。この分布は、同じ値や差が0の組がなければ、差の値によらず組の数だけで決まる
この分布は、差の値そのものによらず、組の数だけで決まります。順位に置き換える利点の一つがここにあります。順位に置き換えれば、どんな測定値でも、組の数ごとの表を一度作っておけば判定できるからです。
裏返すと、組が少ないと、どんなに偏った結果でもp値は小さくなれません。すべての差が同じ符号でも、そうなる符号の付き方は全体の中で2通り(すべて+かすべて−)しかないからです(表1)。差が0でない組が5組以下では、正確なp値は両側で0.05を下回りません。ところが、とびとびの値をとる統計量を正規分布で近似するときの補正である連続修正を行わずに正規近似で求めると、すべての差が同じ符号なら5組でも0.05を下回り、近似の粗さが問題になります。
| 組の数 | 符号の | 両側p値の |
|---|---|---|
| 5組 | 32通り | 0.063 |
| 6組 | 64通り | 0.031 |
| 7組 | 128通り | 0.016 |
| 8組 | 256通り | 0.0078 |
| 10組 | 1,024通り | 0.0020 |
表1 組の数と、符号付順位検定で得られる両側p値の最小値(差が0の組と同順位がない場合、筆者が計算)
同じ15組、4つの検定
順位に置き換えると何が消えるのかは、同じ15組にほかの検定を当てはめると見えてきます(図3)。

図3 同じデータに4つの検定を当てはめた結果(筆者が計算)。ダーウィンのトウモロコシ15組の差で、p値はいずれも両側。符号検定は13組が+、2組が−という数だけを使う。並べ替え検定のp値は、符号の付け方32,768通りのうち、差の合計が観測値以上に偏る1,726通りの割合
符号検定は、差が正か負かだけを数えます。15組中13組が正という偏りは大きく、p値は0.0074でした。符号付順位検定は、符号に加えて差の大きさの順位を使います。負の2組はどちらも大きな差(順位10と14)なので、その分だけ偏りが割り引かれ、p値は0.041になりました。対応のあるt検定は、差の値そのものの平均と標準偏差を使います。−67と−48という大きな負の差がそのまま効いて標準偏差が大きくなり、p値は0.0497でした。フィッシャーが『実験計画法』で示した並べ替え検定は、差の値はそのままに、符号の付き方32,768通りのうち差の合計が観測値以上に偏る割合を数えるもので、0.053でした。
つまり符号付順位検定は、差の値の「どれだけ大きいか」を捨て、「何番目に大きいか」だけを残します。最も大きい+75が+750でも、順位は15のまま変わりません。外れ値に引きずられにくいのはこのためです。一方で、順位の間隔が実際の差の間隔を表さないことも受け入れることになります。4つのp値がこれだけ違うのは、どの検定も間違っているからではなく、データのどの情報を使うかが違うからです。だからこそ、検定はデータを見る前に決めておく必要があります。結果を見てからp値の小さい検定を選べば、5%の有意水準は守れません。
何を検定しているのか
符号付順位検定は「差の中央値が0かどうかの検定」と説明されることがあります。しかし、統計ソフトRの説明書が書くように、帰無仮説は「差の分布が0を中心に左右対称である」というものです(R Core Team 2026)。IBM SPSS Statisticsの説明書も、2つの変数の分布は仮定しないが、対応のある差の母集団の分布は左右対称と仮定する、と書いています。差の分布が対称なときに限って、この検定は差の中央値の検定と読めます。
差の分布が対称でないと、何が起こるでしょうか。図4は架空の40組の差で、21組が1点下がり、19組が5〜10点上がった場合です。差の中央値は−1点ですが、符号付順位検定のp値は0.014で、「上がった」方向に有意になります。下がった21組の差はどれも小さく、小さい順位しかもたないからです。差の正負だけを数える符号検定は、21対19でp値0.87でした。差の中央値が0なのに符号付順位検定がはっきり有意になった実際の臨床試験のデータも、医学論文の解説で紹介されています(Divineら 2013)。

図4 差の分布が非対称なときの符号付順位検定(架空のデータ)。40組のうち21組が1点下がり、19組が5〜10点上がった。符号付順位検定のp値は正規近似で求め、同順位の補正を行い、連続修正は行っていない。Hodges–Lehmann推定値は、2組ずつ選んだすべての平均の中央値
符号付順位検定に対応する推定値は、差の中央値ではなく、Hodges–Lehmann推定値です(HodgesとLehmann 1963)。差を2つずつ選んだすべての組み合わせで、同じ差を2回選ぶ場合も含めて平均を計算し、その中央値をとったもので、差の母集団の分布が対称なら、差の中央値と同じものを推定します。ダーウィンのデータでは差の中央値が24、Hodges–Lehmann推定値が25(いずれも1/8インチ)とほぼ同じですが、図4のデータでは−1と+3.5で、向きまで違います。結果を報告するときは、各時点の中央値だけでなく、差の分布の形も図で確かめておくと誤解を防げます。
差が0の人と、同じ大きさの差
5段階で尋ねた運動の頻度のように、段階が少ないデータでは、差が0の人や、同じ大きさの差(同順位)がたくさん出ます。差が0の人をどう扱うかには、2つの方法があります。Wilcoxonは1949年の手引きで、差が0の組を除いてから順位を付ける方法を示しました(Wilcoxon 1949)。これに対しPratt(1959)は、差が0の組も含めて順位を付け、そのあとで0の組の順位だけを除く方法を提案しました。
Prattは、0を除く方法には奇妙な性質があることを指摘しました。差が0、2、3、4、6、7、8、9、11、14、15、17、−18の13組を考えます。0を除いて片側の正確なp値を求めると0.017です。ところが、すべての値を0.5ずつ小さくして、正の方向への証拠を弱めたはずのデータでは、p値は0.013と、かえって小さくなります(筆者が計算)。−0.5になった組は最小の順位1しか持たないので、W−は12から14へわずかに増えるだけで、順位の和全体に占める割合は12/78と14/91で、どちらも約15%と変わりません。一方、組の数が12から13に増えると、差がないときの分布は全体に対する割合で見て狭くなるので、同じ15%でもより珍しいと判定されるのです。
統計ソフトによって、扱いも違います。SPSSの出力では、差が0の人は「同順位」として人数が示され、順位は0でない人だけで付けられます。後で見る図7でも、順位和の合計1,711は、0でない58人の順位の合計58×59÷2と一致します。Rは、バージョン4.5までは差が0の組を除き、同順位や0があると正規近似でp値を求めていました。4.6.0からは、50組未満なら同順位や0があっても、観測された同順位の形をそのままにして数え上げる、条件付きの正確なp値を計算し、その際は0をPrattの方法で扱います。正規近似のときは、今も0を除きます。いずれもR 4.6のソースコードと変更履歴で確認しました。
運動指導を受けた高齢者12人のデータで、計算方法によるp値の違いを見てみます。前後の差は、+1が5人、+2が2人、−1が1人、0が4人でした(表2)。
| 計算方法 | 両側p値 |
|---|---|
| 正確なp値 | 0.055 |
| 正規近似 | 0.040 |
| 正規近似 | 0.033 |
表2 同じ12人のデータでの計算方法によるp値の違い(架空のデータ、筆者が計算)
正確なp値は、差が0の4人を除いても、Prattの方法で扱っても0.055で、0.05を上回りました。一方、正規近似で求めたp値は0.05を下回ります。0でない差が8組しかなく、しかも1と2の2種類の大きさしかないので、正規分布による近似が粗くなるのです。人数が少なく同順位の多いデータでは、正確なp値を求められる設定を使い、どの方法で計算したかを論文に書きます。
対応のあるt検定とどちらを選ぶか
順位に置き換えると情報が捨てられるのだから、差を見抜く力、つまり検出力は落ちるはずだ、と考えるのが自然です。ところが、その損失は意外なほど小さいことが分かっています。差の分布が正規分布なら、符号付順位検定の効率は対応のあるt検定の3/π、約95%であることが知られています。組の数が多いとき、同じ検出力を得るのに必要な組の数が、t検定のおよそ1.05倍で済むということです。しかもHodgesとLehmann(1956)は、連続で対称な分布なら、効率が0.864を下回らないことを示しました。
反対に、外れ値の出やすいデータでは、符号付順位検定のほうが差を見抜きやすくなります。20組の差のデータを2万回ずつ作って比べると、正規分布では検出力がt検定56.6%、符号付順位検定54.5%とほぼ同じでしたが、極端な値が正規分布より出やすい裾の重い分布では68.7%と78.4%、1割に外れ値が混ざる分布では32.4%と41.5%と、符号付順位検定が上回りました(図5)。

図5 対応のあるt検定と符号付順位検定の検出力(筆者のシミュレーション)。20組の差のデータを2万回ずつ作り、本当にある差を有意(p<0.05)と判定できた割合。本当の差は、外れ値のない正規分布の標準偏差を1としたときの0.5。裾の重い分布は自由度3のt分布、外れ値の混ざる分布は1割の値の標準偏差を5倍にした正規分布。差がないときに有意になった割合は、t検定で3.6〜4.9%、符号付順位検定で4.7〜5.0%だった
正規性の検定の結果でt検定か符号付順位検定かを決める2段階の手順には、問題も指摘されています。詳しくは「Shapiro-Wilk検定:正規性の検定の結果をどう読むか」で、使い分けの考え方は「パラメトリック検定とノンパラメトリック検定:違いと選び方」で説明しています。差の値そのものの平均に意味があり、差の分布が大きく崩れていなければ「対応のあるt検定」を、順序尺度のデータや外れ値の出やすいデータには符号付順位検定を、データを集める前に選んでおきます。対応のない2群には「Mann-WhitneyのU検定」を使います。
SPSSでの手順
運動指導の前後で、94人に運動の頻度(1=毎日運動する、2=週4回以上、3=週2〜3回、4=週1回、5=まったく運動しない)を尋ねたデータで手順を示します。1が「まったくしない」、5が「毎日」だった12人の例とは得点の向きが逆で、得点が小さいほど運動の頻度が高いことに注意してください。
- 指導前と指導後の得点を、2つの列に入力します。1人分のデータが1行に並ぶようにします。
- メニューの「分析」→「ノンパラメトリック検定」→「過去のダイアログ」→「2個の対応サンプルの検定」を選びます(図6)。
- 指導前と指導後の変数を「テストペア」に移し、「検定の種類」で「Wilcoxon」にチェックを入れます。「オプション」で「4分位」にチェックを入れると、各時点の中央値と25・75パーセンタイルも出力されます。「OK」を押します。


図6 SPSSでの操作

図7 SPSSの出力
出力の「順位」の表では、指導後の得点が指導前より小さい人(負の順位)が41人、大きい人(正の順位)が17人、変わらない人(同順位)が36人でした。この例では得点が小さいほど運動の頻度が高いので、負の順位は「運動が増えた人」です。順位和は負の順位が1,300.5、正の順位が410.5です。「検定統計量」の表のZは−3.537、「漸近有意確率(両側)」は「.000」と表示されています。これは正規近似で求めたp値が0.0005未満で、小数第3位まで丸めると0になるという意味で、p値が0なのではありません。論文には「p<0.001」と書きます。
効果の大きさには、マッチドペアの順位双列相関(rank-biserial correlation)が使えます。仮説の方向(ここでは運動が増えた方向)の順位の和から反対方向の順位の和を引き、順位の和の合計で割ったもので、−1から1の値をとります(Kerby 2014)。この例では(1,300.5−410.5)÷1,711=0.52で、運動が増えた方向に偏っていたことを表します。ダーウィンのデータなら(96−24)÷120=0.60です。
結果の書き方
中央値と四分位範囲、差が正・負・0の人数、検定統計量、p値、効果量をそろえて示します。差が0の人の扱いと、p値の計算方法(正確なp値か正規近似か)も書いておくと、読み手が結果を確かめられます。
運動の頻度の得点の中央値(四分位範囲)は、指導前○(○〜○)、指導後○(○〜○)だった。指導後に得点が下がった(運動が増えた)人は41人、上がった人は17人、変わらなかった人は36人で、Wilcoxonの符号付順位検定(差が0の人を除いて順位を付け、正規近似でp値を算出)で有意な差を認めた(Z=−3.54、p<0.001、順位双列相関 r=0.52)。
まとめ
Wilcoxonの符号付順位検定は、対応のある2つの値の差に、絶対値の小さい順の順位を付け、正の差と負の差の順位の和の偏りからp値を求める検定です。1945年に化学者のWilcoxonが、計算の手間を減らす方法として提案し、ダーウィンのトウモロコシのデータで示しました。順位に置き換えると、差が「どれだけ大きいか」は消え、「何番目に大きいか」だけが残ります。そのため外れ値に引きずられにくく、正規分布のデータでも効率の損失は5%ほどにとどまります。ただし、帰無仮説は「差の分布が0を中心に左右対称」で、差の分布が非対称だと差の中央値の検定とは読めません。差が0の人や同順位が多い少人数のデータでは、0の扱いとp値の計算方法によって結論が変わることもあります。差の分布を図で確かめ、計算方法を明記して報告します。
同じ15組に4つの検定を当てはめて並べると、それぞれの検定が使わずにいる情報が、p値の違いになって現れます。符号検定は13組が正、2組が負という数だけを使って0.0074となり、符号付順位検定は、負の2組が順位10と14の大きな差だったことを加えて0.041になりました。運動の頻度を尋ねた高齢者12人のデータでは、同じ符号付順位検定でも、正確なp値なら0.055、連続修正なしの正規近似なら0.033と、計算方法によって0.05の両側に分かれます。検定と計算方法をデータを見る前に決めておくのは、結果を見てからp値の小さい方法を選べば5%の有意水準を守れないからです。どの方法で計算したかを論文に書いておけば、読み手は、どの情報を使った結論なのかを確かめられます。
ほかの検定は「統計学(関連記事一覧)」にまとめています。
さらに学びたい人へ:おすすめの本
- 内田治『SPSSによるノンパラメトリック検定』(オーム社):ノンパラメトリック検定だけを扱った解説書です。例題をSPSSで解きながら進み、少人数のデータに使う正確確率検定や、必要なデータ数の決め方も解説しています(2014年刊行、SPSS 22に対応)。
- 内田治『Rによるノンパラメトリック検定』(オーム社):同じ著者が、無料の統計ソフトRでノンパラメトリック検定を解説した本です。例題形式で、正確確率検定やデータ数の決め方も扱っています(2017年刊行)。
参考文献
- Darwin C. The Effects of Cross and Self Fertilisation in the Vegetable Kingdom. London: John Murray; 1876.
- Brooks EB. Frank Wilcoxon. Tales of Statisticians. Warring States Project, University of Massachusetts Amherst; 2004. https://www.umass.edu/wsp/resources/tales/wilcoxon.html(2026年10月17日閲覧)
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- Wilcoxon F. Individual comparisons by ranking methods. Biometrics Bulletin. 1945;1(6):80-83. doi:10.2307/3001968
- Mann HB, Whitney DR. On a test of whether one of two random variables is stochastically larger than the other. Ann Math Stat. 1947;18(1):50-60. doi:10.1214/aoms/1177730491
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