地域相関研究(エコロジカル・スタディ)


 地域相関研究 ecological study とは,臨床研究方法の一つです。断面研究が個人を対象にしているのに対し,この研究は集団を対象として行います。以下に特徴として方法,利点と問題点をまとめました。

方法

 個人ではなく集団(国・都道府県・市町村など)を単位として,集団レベルでの仮説要因(曝露要因)の特性と疾病の死亡率と罹患率との関係を調査します。世界各国の人口一人当たり脂肪消費量と乳がん死亡率の関係を調べた研究などがあります。

利点と問題点

利点

 地域相関研究では,個人ではなく集団を分析の単位としており,集団全体における平均的な曝露状況や,集団の罹患率・死亡率が指標として用いられるのが特色です。データを特定の研究のために新しく調査する場合もありますが,別の目的で収集された既存の資料を用いることもあります。行政的な目的で収集された既存の統計資料を用いれば,データ収集にかける時間を省くことができて,容易に研究を行えます。

問題点 (欠点)

 ある要因と疾病死亡率との正の相関が認められたとしても,それがその要因そのものの影響なのか,別の要因の影響を見かけ上に反映しているだけなのかを区別することが難しい(交絡要因を制御しにくい)ことが問題となります。例えば,国ごとの脂肪消費量が増えるほど乳がん死亡率が高くなる関係が見られたとしても,それが脂肪そのものの影響なのか,脂肪摂取と関連する何か別の要因(例えば脂肪を含む総カロリー摂取)の影響なのかを区別しにくいということです。

 また,集団を対象とした研究の結果をそのまま個人に適用できるとは限らないという問題点があります(個人レベルでは成り立たない可能性がある)。一般的に,地域相関研究のデータの質(信頼性)は,無作為割付臨床試験やコホート研究などと比べ相対的に低いと考えられているようです。

まとめ

 分かりにくいデザインですが,対象が特定のグループである点が他の研究との違いです。この研究デザインで得られたグループ間での結果を個人に当てはめることはできません。あくまで,研究成果はグループへの特性を調べたり,グループへの対策に役立てたりすることに用います。日本国内の研究としては,古松らが末期腎不全発症率とエリスロポエチンの消費量との関係を示したものがあります (Furumatsu Y,et al. Nephrol Dial Transplant, 2008)。

その他の研究デザイン一覧