医療従事者のための大学院選びのポイント:研究室と指導教員をどう選ぶか

医療従事者のための大学院選びのポイント:研究室と指導教員をどう選ぶか

1963年5月、東京の国立療養所東京病院に、日本で初めての理学療法士・作業療法士の養成校が開かれました。3年制の各種学校として始まったリハビリテーション学院です(中村 2022)。専門科目を教えたのはWHOから派遣された外国人の教師で、教科書は手作りの英語のプリントでした(高橋 2010)。理学療法士と作業療法士の資格を定めた法律ができるのは、その2年後です。

それから半世紀あまりで、学ぶ場所は大学院にまで広がりました。2015年3月に報告された全数調査では、理学療法士を養成する大学が95校、大学院が57校ありました。同じ調査の資料には、修士号の取得者が合計2,548人、博士号の取得者が合計479人と記されています(長澤 2016)。

選べる大学院が増えた今、迷うのは「どの大学院か」だけではありません。大学院での研究は、指導教員とその研究室の中で進みます。大学院選びとは指導教員選びだ、というのが私の考えです。その教員を、外からどう見きわめればよいのでしょうか。

大学院選びの要点

  • 大学院までの歩み:1963年に最初の養成校が開かれ、1992年に4年制の大学教育、1996年に修士課程、1998年に博士課程が始まった。2015年の全数調査では、理学療法士を養成する大学が95校、大学院が57校あった
  • 研究室の探し方:関心のある分野の論文を読み、著者の名前と所属から研究室をたどる。教授は筆頭、2番目、最後のいずれかの著者であることが多い、というのが筆者の経験
  • 著者の並び順:ICMJEは著者の条件を4つ定め、並び順は著者のグループで決めるとしている。北米の医学部の調査では、最後の著者は研究の着想や指導を担った人とみなされていた。職位の高い研究者ほど最後に並ぶ傾向も報告されている
  • 面談:出願の前に指導教員との相談を求める大学院がある。筆者は、面談を、論文の業績から離れて教授を人として見きわめる場だと考えている
  • 研究費:2025年度の科研費の新規採択率は28.8%で、ある年に採択されていないことだけでは研究者の力は測れない。過去の採択課題はKAKENで調べられる
  • 修了の状況:2025年4月から、大学院は研究科や専攻ごとに、標準の修業年限以内に修了した人の割合などを公表することになった。研究室ごとの様子は在籍している院生に聞くよう、筆者は勧めている

最初の養成校から大学院へ

最初の学院は、定員20人の3年制の各種学校でした(宮前 2010)。1965年に理学療法士及び作業療法士法が公布され、理学療法士と作業療法士は国家資格になりました(理学療法士及び作業療法士法)。

大学での教育は、段階を追って始まります。1977年、日本学術会議が、理学療法士と作業療法士を4年制の学士課程で教育するよう提言しました(宮前 2010)。2年後の1979年には、金沢大学医療技術短期大学部に理学療法学科と作業療法学科が置かれ、3年制の短期大学での教育が始まります(中村 2022)。4年制の大学教育が始まったのは、提言から15年後の1992年で、広島大学医学部保健学科でした(宮前 2010)。広島大学は、この学科の理学療法学専攻と作業療法学専攻が、わが国で最初の4年制大学教育になったとしています(広島大学医学部保健学科)。

大学院の教育は、その4年後に始まりました。1996年4月、広島大学大学院医学系研究科保健学専攻に修士課程が設置され、1998年4月には博士課程後期が加わりました(広島大学医学部保健学科)。宮前(2010)は、この修士課程を作業療法で初めての修士課程としています。広島大学の作業療法学専攻も、大学院博士課程を全国で初めて設置したと紹介しています(広島大学医学部保健学科作業療法学専攻 2018)。理学療法の大学院教育も、1996年から始まっています(高橋 2010)。

日本の理学療法士・作業療法士の教育が大学院まで広がった歩みを示す年表。1963年に東京の国立療養所東京病院に最初の養成校が開かれ、1965年に理学療法士及び作業療法士法が公布された。1977年に日本学術会議が4年制の学士課程教育を提言し、1979年に金沢大学医療技術短期大学部に理学療法学科と作業療法学科が置かれて3年制の短期大学での教育が始まり、1992年に広島大学で最初の4年制大学教育が始まった。1996年に広島大学で修士課程、1998年に博士課程後期が設置された。2009年には理学療法を教える71大学のうち35校で大学院教育が行われ、2015年の全数調査では理学療法士を養成する大学が95校、大学院が57校あった

図1 理学療法士・作業療法士の教育が大学院まで広がった歩み(中村 2022、高橋 2010、宮前 2010、広島大学医学部保健学科、長澤 2016をもとに作成)。2009年と2015年の数は理学療法士を養成する大学についてのもの

その後、大学院は増えていきました。2009年には、理学療法の教育を行う71の大学のうち35校で大学院教育が行われていました(高橋 2010)。全国大学理学療法学教育学会が2015年3月に報告した全数調査では、その数が大学95校、大学院57校に増えていました。修士課程の定員は合わせて538人、博士課程の定員は推計で最大296人でした(長澤 2016)。作業療法でも、全国の大学で大学院の設置が広がっています(中村 2022)。

臨床家が大学院に進む理由

医療専門職が大学院を目指す理由は、大きく2つに分かれると私は考えています。1つは、臨床の中で研究できる力と方法を身につけたいという理由です。もう1つは、研究機関や養成校の教員になりたいという理由です。どちらがよいということはありません。

2015年の全数調査には、その両方が表れています。修士課程の入学者のうち社会人の割合は、国立の大学院で50%、公立と私立の大学院で75%に達していました。博士課程では、国立で70%弱、公立と私立で80%強です。一方、調査の対象となった大学では、理学療法士の資格をもつ助教以上の教員の94%が修士号以上の学位をもっていました(長澤 2016)。大学院は、働きながら学ぶ社会人の場であり、養成校の教員を育てる場でもあるのです。

日々真剣に患者さんと向き合っていると、自分のしていることに本当に効果があるのか、自己満足で終わっていないかを知りたくなります。私は、その疑問を確かめたいのなら、大学院への進学はよい選択だと考えています。文献を探す力と読み解く力が伸び、疑問を確かめるための研究の方法にも通じるからです。

ただ、研究室の中には、一般社会の常識が通じないところもあると私は感じてきました。よく調べずに選ぶと、それまで高めてきた意欲と貴重な時間を、無駄にしかねません。臨床に戻って研究を続けたい人ほど、研究室を選ぶ目が要ると思います。

論文の著者欄から研究室をたどる

研究室を探す方法はいくつかありますが、私がいちばん勧めるのは、関心のある分野の論文を探して読むことです。研究を臨床に生かしたいと考えている人なら、論文を読む習慣はすでにあると思います。論文には、著者の名前と所属が書かれています。私の経験では、研究室の教授は、筆頭著者、つまり最初に名前のある著者か、2番目の著者、あるいは最後の著者であることが多いと思います。名前と所属で検索すれば、大学や研究室のホームページが見つかり、その人の業績や研究の内容を確かめられます。

では、著者の並び順に決まりはあるのでしょうか。医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)の勧告は、著者となるための条件を4つ挙げ、そのすべてを満たすことを求めています。前の2つは、研究の構想や設計、またはデータの収集・分析・解釈に実質的に貢献したことと、原稿を書くか重要な内容を批判的に見直したことです。後の2つは、出版される原稿を最終的に承認したことと、研究のあらゆる部分の正確さと誠実さに責任を負うと同意したことです。研究費を得たことや、研究グループを全般的に監督したことだけでは、著者の条件を満たしません。並び順については、決め方の基準は一つに限らず、編集者ではなく著者のグループが決めるとしています(ICMJE 2026)。

それでも医学には、慣習としての並び方があります。北米の医学部で昇進の審査を担う委員会の代表者142人に調査票を送り、87人が答えた調査があります。3人の著者が並ぶ論文について、位置ごとに功績を割り振ってもらうと、実際の作業の功績は筆頭著者が57%で最も大きくなりました。研究の着想と指導の功績は、最後の著者がそれぞれ49%と54%で最も大きくなりました(Wrenら 2007)。少なくとも北米の医学部で昇進を審査する人たちは、最後の著者を、研究を着想し指導した人として読んでいたことになります。

実際の貢献を調べた研究もあります。2015年に米国の内科の雑誌Annals of Internal Medicineに載った研究論文119本を調べた研究では、著者1,139人が申告した貢献を位置ごとに比べました。最後の著者の位置と最も強く結びついていたのは、研究費の獲得でした。研究費の獲得を申告したのは、最後の著者で52.9%、筆頭著者で38.0%です。原稿の批判的な見直しも、最後の著者が96.6%で最も多く申告していました。一方、研究の設計を申告した割合は、筆頭著者の95.3%が最後の著者の87.4%を上回っていました(Pernegerら 2017)。ただし、貢献は著者自身の申告で、ほかの方法で確かめられたものではありません。

職位や年齢と並び順の関係も調べられています。スペインの公的な研究機関の常勤の研究者1,064人について、1994〜2004年の論文を調べた研究があります。若い研究者や職位の低い研究者は筆頭に、年長で職位の高い研究者は最後に並ぶ傾向がありました。生物学・生物医学の分野では、最も職位の高い研究教授が筆頭著者だった論文は10%未満で、最後の著者だった論文は約50%でした。この分野で、筆頭より最後に並ぶことが多くなる年齢は35〜36歳でした。著者らは、年長で職位の高い研究者が、研究の中で指導の役割を担うためだと解釈しています(CostasとBordons 2011)。

日本の論文でも、並び方は1つではありません。臨床研究中核病院が2017年に厚生労働省へ出した業務報告には、臨床研究の論文が載っています。そこから集めた580本のうち、責任著者が1人の576本を調べた報告があります。責任著者、つまり投稿から出版まで雑誌とのやり取りを主に受け持つ著者の位置は、筆頭が54%、2番目が24%、最後が19%でした(Uedaら 2021)。著者欄を読むときは、並び順に加えて、責任著者の印と所属もあわせて見る必要があります。

年長の教授が筆頭著者を続けているとき

著者欄を見るときに、私が注意してほしいと考えているのは、それなりの年齢の教授が、近年の論文でも筆頭著者であることが多い場合です。自ら論文を書き続けている、実績のある研究者に見えます。しかし私は、そうした教授は、助教や大学院生などの若手を育てる力に欠けているのかもしれないと考えています。

スペインの研究機関の調査を見ると、生物学・生物医学で最も職位の高い研究教授が筆頭に並ぶ論文は、少数でした(CostasとBordons 2011)。年長の教授が筆頭著者を続けているのは、その傾向から外れた姿です。ただし、これは手がかりの1つにすぎません。1人で書く総説や、若手がまだいない新しい研究室の立ち上げのように、筆頭になる理由はほかにも考えられます。分野による違いもあり、同じ調査で自然資源の分野の研究教授は、筆頭著者の論文が約20%ありました(CostasとBordons 2011)。

さらに私は、大学院生が行った研究を、教授が自分を筆頭著者にして投稿した例も見聞きしてきました。私は、キャリアの後半にいる研究者の役目は、後に続く人を育てることだと考えています。それはどの会社でも同じだと思います。そうした考えをもつ教授は、最後の著者として名前が並んでいることが多いと私は感じています。

ICMJEの勧告に照らせば、誰が著者になるかは貢献にもとづいて決まり、どの順に並ぶかは著者のグループで決めることです(ICMJE 2026)。文部科学省のガイドラインは、著者が適正に示されない「不適切なオーサーシップ」が、不正行為として認識されるようになってきたと述べています。他の研究者のデータや研究結果を、了解や適切な表示なく流用することは「盗用」とされ、捏造、改ざんとともに特定不正行為にあたります(文部科学省 2014)。日本学術振興会の研究倫理の教材は、筆頭著者や責任著者の資格と順序の決め方について、すべての共同研究者が計画の初期に合意しておく必要があるとしています(日本学術振興会 2025)。大学院生にとっては、この合意を研究の初めにしておくことが、自分の仕事を自分の名前で発表するための備えになります。

面談では、教授を見る

大学院での研究は、指導を引き受けてくれる教員がいて初めて始まります。そのため、出願の前に、指導を希望する教員と相談するよう求める大学院があります。たとえば順天堂大学大学院保健医療学研究科は、2025年度の博士後期課程の募集要項で、出願書類を送る前に研究指導教員と連絡を取るよう求めています。そのうえで、研究内容などを必ず相談するよう定めています(順天堂大学大学院保健医療学研究科)。私の知る限り、まず教授にメールを送り、後日、面談するのが一般的な流れです。

形式ばっていて、面倒に感じるかもしれません。それでも、この面談がいちばん大事な場面です。私はそう考えています。面談のときは、その教授が書いたすばらしい論文のことは一度忘れて、曇りのない目で目の前の人を見てください。話し方、考え方、そして、どこか怪しいところはないか。面談では、あなたが見られると同時に、あなたもその教授を評価するのだと私は考えています。人として尊敬できないと思ったら、迷わずほかの研究室を選んでください。

面談では、研究の進め方や、論文の著者の順番をどう決めているかを尋ねることもできます。患者さんと医療従事者の関係が人と人の関係であるように、教授と大学院生の関係も人と人の関係です。私は、相性の合う教授を選ぶことを勧めます。

院生がいるか、研究費があるか

大学や研究室のホームページには、所属する院生の数や、同じ大学から進んだか他の大学から来たかといった内訳が載っていることがあります。私は、できれば院生がまったくいない研究室は避けたほうがよいと考えています。そうした研究室は、何らかの問題を抱えていることが多いと感じてきたからです。

私が思い当たる問題の1つは、研究費です。大学の研究者が応募できる国の研究費に、科学研究費助成事業、つまり科研費があります。科研費は、人文学から自然科学まですべての分野の研究を対象とした競争的な研究費で、研究者どうしが審査するピアレビューで助成先が決まります(日本学術振興会)。

応募した研究のうち、採択されるのは一部です。2025年度に基盤研究や若手研究などの主な研究種目へ新しく応募された80,146件のうち、採択されたのは23,109件で、新規採択率は28.8%でした。最も応募の多い基盤研究(C)は27.4%、博士の学位を取ってから8年未満の研究者が応募できる若手研究は40.2%です(図2、文部科学省 2025)。

2025年度の科研費の新規採択率を研究種目ごとに示した横棒グラフ。基盤研究(S)12.1%、基盤研究(A)26.1%、基盤研究(B)26.7%、基盤研究(C)27.4%、若手研究40.2%で、特別推進研究と学術変革領域研究を含む合計は28.8%だった。応募件数は基盤研究(C)が46,497件で最も多い

図2 2025年度の科研費の新規採択率(文部科学省 2025をもとに作成)。棒の下の数字は採択件数と応募件数。合計は特別推進研究と学術変革領域研究を含む。2025年5月の時点で交付内定前だった挑戦的研究、研究活動スタート支援、国際先導研究は含まない

研究費を用意できない研究室では、やりたい研究が思うようにできず、院生も集まりにくいと私は考えています。科研費を得られていない研究者は、新しさのある研究計画を立てられていないか、過去の実績が乏しい可能性もあると思います。ただし、採択率が3割に満たない以上、ある年に採択されていないことだけで、研究者の力を判断することはできません。見るべきは、何年にもわたる履歴です。国立情報学研究所のデータベースKAKENでは、科研費で採択された研究課題と、その成果の報告書を研究者の名前で調べられます(国立情報学研究所)。

もう1つは、途中でやめる院生です。私は、大学院に進んだものの途中でやめてしまう院生は少なくないと感じています。本人の事情によることもありますが、教授の指導に問題があることもあります。私の見てきた範囲では、そうした研究室には、とくに同じ大学の学部から進む院生が寄りつかなくなります。

大学院ごとの修了の様子は、数字でも確かめられるようになりました。2025年4月から、大学院をもつ大学は、研究科や専攻ごとに、入学した人のうち標準の修業年限以内に修了した人の割合などを公表することになっています。この改正について文部科学省の文書は、人文科学・社会科学系の大学院教育を議論した中央教育審議会大学分科会の指摘を引いています。進学前の情報が足りないために、入学してから学生が失望するずれが生じている、という指摘です(文部科学省 2024)。

ただし、公表されるのは研究科や専攻ごとの数字で、研究室ごとの数字ではありません。私は、その研究室のある大学に知り合いがいるなら、必ず話を聞いてみることを勧めます。できれば、いま研究室にいる院生から、直接話を聞いてください。

研究室を選んだあとで

よい研究室を見つけて、やると決めたら、とにかく力を尽くしてください。研究に通じれば、それまでの臨床の見え方が変わります。私は、そう約束できると思っています。臨床経験で培った、患者さんの気持ちや状況を考える力に、大学院で得た、自分の医療行為を客観的に観察する力が加わるからです。そのときに身についている、新しいエビデンスを生み出す力は、未来の患者さんへの希望になると私は信じています。

まとめ

日本の理学療法士と作業療法士の教育は、1963年に各種学校で始まり、1992年に4年制の大学、1996年に修士課程、1998年に博士課程へと広がりました。2015年には、理学療法士を養成する95の大学に対して、57の大学院がありました。研究室は、関心のある分野の論文から著者と所属をたどって探せます。ICMJEの基準では、著者は貢献にもとづいて決まり、並び順は著者のグループが決めます。北米の医学部の調査では最後の著者が着想と指導を担った人と読まれ、スペインの研究機関の調査では職位の高い研究者ほど最後に並ぶ傾向がありました。面談では教授を人として見きわめ、科研費の履歴はKAKENで、修了の状況は公表された数字で確かめ、研究室の中の様子は在籍している院生に聞くことができます。

著者欄の並び順だけでは、誰が何をしたのかはわかりません。並び順と貢献の関係を調べた研究によって、医学の慣習がどこまで当てはまるかが見えるようになりました。科研費の採択の履歴はデータベースで調べられ、大学院ごとの修了の状況も2025年から公表されています。それでも、研究室の中で人がどう育てられているかは、数字や著者欄からは見えません。そこを見るのが、面談と、その研究室で学ぶ院生との対話です。

研究の始め方は「研究計画書の書き方:データを見る前に決めておくこと」で紹介しています。論文を書くときの文献の示し方は「引用文献の書き方:読者が原典をたどれるように」にまとめています。臨床研究の方法の例としては、「臨床研究におけるランダム化の方法:なぜくじ引きで分けるのか」もあります。

ほかのコラムは「コラム一覧」で紹介しています。

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参考文献

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