基礎(医学)研究の必要性について


 臨床で用いるEBM(根拠に基づく医療)は主に臨床研究に基づく研究成果を用います。この臨床研究とは別に,基礎(あるいは基礎医学とよばれる)研究も存在します。この記事では基礎研究の必要性について説明します。

基礎(医学)研究とはなにか?

 基礎研究とは解剖学,生理学などの基礎医学を構成するための研究です。例えば,京都大学山中教授はiPS細胞についの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞されたました。このiPS細胞の研究は基礎研究といわれるものです。彼らは細胞を対象に研究していますが,他にも動物を対象としたものや,人を対象とした研究があります。
 

基礎研究はEBMの実践に用いない

 EBMを実践する上で大切なのは,臨床研究による成果です。それでは,EBM実践に用いるのは臨床研究で得られた成果であるのだから,基礎研究は医療において必要ないのでしょうか。仮に必要だとしても,臨床研究ほど重要ではないのでしょうか。実際に必要がないと考えている医療従事者の方は少なくないのではないかと思います。

臨床研究とのつながり

 私は基礎研究が臨床研究と同じくらい必要だと考えています。臨床研究のブレイクスルーは,基礎研究の発展によってもたらされるからです。ブレイクスルーとは,進歩や前進,あるいはこれまで障壁となっていた事柄を突破することを意味します。

 例に挙げたiPS細胞は,今現在,患者さんに適応できるものではありません。しかし,iPS細胞の基礎研究が進んでくると,今まで移植ドナーがみつかるのを待たなければいけなかった患者さんが,自分の臓器を移植することができる可能性がでてきます。これは大きなブレイクスルーです。続いて臨床研究によって,実際にiPS細胞で作った臓器が患者さんに適用できるか,さらにその適用に効果があるのかを確かめる段階へと進んでいきます。

何事も基礎が大切

 医療の基盤は生物学です.人の解剖学,生理学,病理学を通して,人の身体,病態を理解し,手術,投薬,採血や静注,運動処方,栄養指導の仕方を発展させてきました。どの医療職も養成校の過程で解剖学や生理学を学んできたと思います。テキストなど分かりやすい形にまとまっているため認識されにくいのですが,これらは全て地道な基礎研究の積み重ねによって構築されたものです。こうした点からも基礎研究の重要性を理解していただけるかと思います。

まとめ

 医療の発展には基礎研究が必要です。今までもこれからもそうなのです。基礎研究より臨床研究の方が重要かというとそうではなく,それらのバランスのとれた発展こそが大切だと思います。臨床研究に精通し,基礎研究の知見に造詣が深い,そんな医療従事者になりたいものです。