椎体間連結は2つの隣接する椎体をつなぐ連結です。腰痛を持つ患者さんに対してはこの連結の構造や特性を考えることが重要になります。そこで,この記事では椎体間連結の構造や機能に加えて,この連結由来の腰痛について説明します。
椎体間連結の構造と機能
椎体間連結は,椎体終板と椎間板(線維輪と髄核)から構成されています。以下に,椎体終板と椎間板に分けて説明します。
椎体終板
椎間板と椎骨の境界,椎体上面および下面の骨端輪内側縁の中部にある厚さ約 0.6〜1.0 mm の組織です。硝子軟骨と線維性軟骨からなり,椎体より椎間板と強固に結合しています。椎体終板の特定の場所では厚さが薄くなっています(あるいは存在しない)。この隙間は,骨髄や椎間板の間に組織液を循環させるための入り口として作用しています。椎間板は無血性組織(血管がない組織)なので,このような椎体終板の形態は栄養供給に重要であるといえます。
椎間板
線維性の線維輪とその内側に位置するゲル状の髄核からなります。
(1)線維輪
多重の層(10〜20 層)を形成していて,それぞれの層はコラーゲン線維が斜め方向に並ぶような構造をしています。線維輪は椎体と椎体終板の外側部に強固に付着しています。線維輪の前方は前縦靭帯,後方は後縦靱帯で補強されています。線維輪は髄核を保護するための組織ですが,その外側層には固有感覚受容器と自由神経終末が豊富に分布していることが知られており,固有感覚や疼痛を受容する役割もあることが示唆されています。
(2)髄核
約 70〜90% が水分であるムコ多糖ゲルで構成されています。この水分量は加齢によって減少するといわれています。柔らかなゲル状の組織であるため,線維輪の境界面に水圧による負荷支持システムとして機能します。
椎間板は,脊椎に生じる力を吸収し,適度に伝導する機能を持っています。この機能は,髄核がゲル状の組織であることによって,椎体間に流体効果が働くために生じるといわれています。また,この柔軟な組織が椎体間にあることで,脊椎におけるすべての運動に対応する柔軟な関節としても機能します。
髄核の移動について
腰椎の運動に伴って,髄核が移動することが知られています。具体的には腰椎を屈曲させると髄核は後方に移動して,伸展させると前方に移動します。McKenzeiエクササイズでは,こうした現象を考慮した上で,腰痛患者さんに疼痛を緩和するような姿勢(腰椎の伸展)を促します。一方で,椎間板が退行性変性した症例や,ヘルニアが生じている症例では,この原則に従わない場合もあることが知られています。症例によっては伸展運動が増悪因子になる場合があるので注意が必要です。
椎体間連結由来の腰痛
椎体終板は,転倒,転落などによって力学的な負荷が生じた際に椎体から乖離する場合があります。このような椎体終板の損傷は腰痛の原因になりえますが,通常の骨折のようにレントゲンで発見することが困難なので注意が必要です。
椎間板に由来する腰痛には以下の3つの要因があるといわれています。
- 線維輪外層(疼痛を受容する自由神経終末が豊富に分布)に対する直接外傷
- 髄核が線維輪を逸脱して(ヘルニア),椎孔内の侵害受容器を力学的,化学的に刺激
- 退行性変性により椎間板の厚さが減少して椎体同士が接触,分節の安定性が減少する
不思議なことに,上記の3要因が存在しても痛みを訴えない患者さんがいることが知られています。つまり,椎間板ヘルニアや退行性変性が起こっても,症状としてあらわれないことがあるのです。このようなミスマッチは臨床で評価や治療を行う上で大きな問題となります。この問題をどう考えていくかが今後の課題として残されています。
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