腰回旋筋と横突間筋の機能と役割:小さな筋群の本当の役割とは


 腰回旋筋と横突間筋は腰椎に付着するとても小さな筋群です。臨床上では他の大きな筋群に隠れてなかなか注目されない筋群ですが,これらの筋群はどんな役割をもっているのでしょうか。この記事ではこの筋の機能と役割について私見も交えて説明します。

腰回旋筋の一般的な構造と機能

  回旋筋は隣接する椎骨に付着するとても小さな筋です。中でも腰回旋筋は胸椎に付着する胸回旋筋にくらべてもあまり発達していません。腰回旋筋の付着と神経支配と作用を以下にまとめます。

下位付着:椎骨横突起の上方および後方

上位付着:椎弓板下方および外側縁

神経支配:脊髄神経後枝

作用:脊椎の回旋

 主な作用は脊椎の回旋です。しかし,生理学断面積の極端に小さな筋であるため実際に生み出す軸回旋トルクはわずかです。

横突間筋の一般的な構造と機能

 横突間筋も回旋筋同様に脊椎に付着する小さな筋です。腰部の横突間筋は,内側と外側に2つの筋束があり,外側はさらに腹側と背側部に分けることができます。横突間筋の付着と神経支配,作用を以下にまとめます。

下位付着:椎骨横突起

上位付着:上位の椎骨横突起

神経支配:腰部外側が脊髄神経前枝,内側が脊髄神経後枝

作用:脊椎の側屈

 主な作用は脊椎の側屈です。これも,腰回旋筋と同様に生理学断面積の小さな筋なので,側屈への力学的な関与はわずかだといえます。

腰回旋筋と横突間筋は本当の役割とは?

 これらの筋は脊椎の回旋や側屈に補助的な作用をもっています。しかし,これだけ小さな筋がわずかばかりの力を生み出すためだけにヒトの身体に退化せずに残っているとは思えません。

 これらの筋群の特徴として,隣接している脊椎どうしに付着していること,脊椎の分節に従って神経支配されていることがあげられます。さらに,これらの筋群には脊椎に付着する他の筋よりも筋紡錘の数が多いことがわかっています(多裂筋の 4.5〜7.3 倍)。

 これらの事実を鑑みると,回旋筋や横突間筋は脊椎の運動知覚に積極的に関与している可能性が考えられます。

まとめ

 腰回旋筋と横突間筋が脊椎の回旋や側屈の他に運動知覚に関与しているなら,腰痛患者などにみられる体幹筋の異常な活動パターンはこれらの筋群の機能不全も一つの原因なのかもしれません。

 触診も困難な深部に位置する筋なので,どのような評価をするか,治療アプローチをどうするかなど,課題は山積ですが,臨床上,考慮するべき筋群だと思います。

 しかし,あくまでこれは状況証拠から導き出される一つの仮説です。これらの筋群の本当の役割を知るには,さらなる研究が必要となります。

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