仙腸関節の構造と機能:本当に動くか?痛むか?


 仙腸関節といえば何を思い浮かべるでしょうか。私は仙腸関節を動かすことでどんな痛みもたちどころに治してしまうあの集団を思い浮かべてしまいます。彼らのことはさておき,仙腸関節がどのような関節で,実際に関節運動が起きるのか,はたまた痛みが生じることがあるのかについては興味のあるところです。そこでこの記事では,仙腸関節の構造とその機能についてまとめたいと思います。

仙腸関節は何関節に分類されるのか?

 仙腸関節が線維軟骨で結合された半関節であるのか,それとも滑膜や関節腔をもつ滑膜性関節なのかについては昔から議論が続けられてきましたが,なかなか結論がでませんでした。それもそのはず,仙腸関節は関節面の構造が複雑な上に,性差個人差左右差があり,加えて加齢による退行性変性(Box.1)が起きやすいのです。様々な研究報告の蓄積や度重なる議論の末,現在では滑膜性関節であるとの見解で一致しました。

 具体的には,腸骨耳上面と仙骨耳上面との結合が滑膜性関節であり,仙骨粗面と腸骨粗面は緻密性結合組織を形成しています。この関節は一般的に平面関節に分類されていますが,実際は複雑な構造をしていて,副関節が関節面のどこに形成されるかについては性差(男性の方が後方に位置することが多い)や個人差が大きいようです。

 耳上面を覆う関節軟骨についても研究者の間で見解が分かれるところです。多くの研究者が仙骨耳上面を覆う軟骨は硝子軟骨で,腸骨耳上面側は線維性軟骨であると主張していますが,どちらも硝子軟骨だと主張する研究者もいます。結局のところ,基本的には両耳上面ともに硝子軟骨で覆われているが,一部,線維性軟骨で構成されているようです。


仙腸関節を支持する3つの靭帯

 仙腸関節を象徴するのがそれを補強する3つの靭帯,すなわち腹側・背側仙腸靭帯骨間仙腸靭帯です。前者が主に,耳上面の関節を補強し,後者が仙骨粗面と腸骨粗面を結合しています。これらは人体で最も大きな靭帯であり,仙腸関節を強固に結合しています。各靭帯の付着と走行を下にまとめます。

1. 腹側仙腸靱帯
 関節包の前面にあって仙骨外側部の前面と腸骨の耳状面の辺縁につく

2. 背側仙腸靱帯
 前者の表層にあって腸骨と仙骨の後面を結ぶ.上部の線維束は,ほぼ水平に横走して仙骨粗面と外側仙骨稜から腸骨粗面へ走り,下部の線維は斜め上外方へ箸って,外側仙骨稜と上後仙骨棘へ達する

3. 骨間仙腸靱帯
 関節包の後方で,腸骨の腸骨粗面と仙骨の仙骨粗面とを結ぶ強い短い靱帯で,仙骨と腸骨の間隙を埋めている

仙腸関節は動くのか?

 仙腸関節が動くのかどうかについては,この関節,最大の争点です。仙腸関節は,上記のように複雑な関節面を持ち,強固な靭帯で結合されているのに本当に動くのでしょうか。

 結論からいいますが,仙腸関節はごくわずかな可動性を持っているようです。1〜8° (平均 2〜3°) ほど,矢状面で仙骨は回旋して,0.5〜8 mm (平均 2〜3 mm)ほど並進運動可能です。このような仙腸関節の運動は,やはり個体差や性別,年齢の影響が大きく,関節が未熟な若年者ほどはっきりとみられるそうです。

  一般的には,仙骨に対して左右の寛骨が一体となって動く対称性運動や,左右の寛骨が相半的に動く非対称性運動が生じると言われています。

仙腸関節に痛みが生じるか?

 仙腸関節が滑膜性関節であるなら,豊富に神経支配を受けているはずです。実際,閉鎖神経や上臀神経 (S1−4) から支配を受けているとする報告があります。また,神経線維は,無随や有随,あるいは太さの神経が幅広く分布しており,どうやら仙腸関節に痛みが生じると考えても良さそうなエビデンスが整っているようです。


まとめ

 結論として,仙腸関節はごくわずかに動くし,痛くもなることもありえます。もしかすると腰痛患者の何割かの根源的要因として,仙腸関節の可動性の拡大や,逆に退行性変性による可動性の縮小があるのかもしれません。

 ただし,今回,説明した事実は,この関節を徒手的に動かせるか,あるいは動かすことで痛みが減弱するかどうかを裏付ける証拠ではないということに注意して下さい。仙腸関節の痛みの治療法については,個人差や年齢差,性差の大きいこの関節をどう評価するか,関節の状態と痛みとの関連はどのようなものなのかをしっかりと吟味した上で,決定していく必要があります。

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