誰かから批判されると,つい感情的になったり,荒唐無稽な言い訳をしてしまったりして,相手との間に距離を作ってしまいます.距離が離れた状態では,こちらの言いたいことが相手に伝わりにくくなり,相手の言い分にも,きちんと耳を傾けられません. しかし,医療はチームで行うものです.他職種に対しては専門職の立場として,言いたいことををしっかりと相手に伝えなくてはなりませんし,上司や同僚であっても,それは変わりません.この記事では,批判されても感情的にならずに人間関係を円満にするためにはどうしたらいいのかについて少し考えてみます.
「負けたくない」それは子供のケンカ
まず,相手から批判されると,誰だって嫌な気持ちになりますよね.問題なのは,そこで「負けた気持ち」になってしまい,次は負けないぞと本題からズレて感情的に話し合いがすすんでしまうことにあります.つまり,もともと話し合っていた問題の解決などそっちのけになり,エネルギーを相手を負かすことに使いはじめ (これぞ無駄な労力) ,結果として問題を解決できないどころか,人間関係にまでヒビが入ってしまうのです.
批判を受けてこういう行動をとってしまうことは誰にでも覚えがあると思います.子どものころには,こういう感情や行動を経験しているのではないでしょうか.特に親や先生に対してこういう感情的な行動をとってしまった記憶がありませんか? 今はその相手が他職種や上司にかわっているのです.子どものころは,それで解決する場合もあります.相手は大人ですから,子ども相手に譲歩してくれるのは当然だといえます.
しかし,職場での人間関係は大人同士のやりとりです.感情的な対応しても相手は厳しく対応をしてきます.もし相手が感情的な対応で引いたのなら,それは自分が子どもとしてみられたことにつながります.いずれにせよ,そのような状況になれば,その後も自分の発言が相手に認めてもらえることはありません,適当にあしらわれることになるでしょう.
なぜ感情的になるのか?
批判されるとなぜ感情的になってしまうのでしょうか.それはおそらく,「批判」を「否定」と勘違いしてしまうことに一つの原因があるのだと思います.批判とは,仕事上の言動や行動についての誤りを指摘することです.つまり,批判は相手の言動や行動を対象としており,問題を解決しようとする前向きの姿勢が感じられます.一方で否定とは,そうではないと打ち消すことを言います.これは,相手本人を対象としており,そこに問題解決に向けた姿勢は感じられません.
言い方や態度が悪い場合も往々にしてありますが,基本的に相手は自分の行動に対して意見を言ってくれているのです.本来であればそれに対して感情的になる必要はないのですが,批判と否定とを混同してしまい,感情的な行動をとってしまうのではないでしょうか.
感情を抑えるには
まずは,相手から批判された時にすぐに返答するのではなく「数秒待つ」ことが重要です.相手が自分の行動を正すために批判してくれているんだと分かっていても,やはり指摘を受けるのは心地の良いものではありません.そんな最初の感情のまま返答すると,どうしても感情的な発言になってしまいます.相手は感情論で指摘していませんから (少なくともそういうつもりはないでしょうから),当然,その感情的な発言に対して不快感を示して呆れるか,あるいは同じように感情で発言をはじめるでしょう.そうなれば,問題の解決にならないどころか,その後の仕事にまで差し支える状況になりかねません.まずは一つ間をおいて,発言するクセを身につけることをおすすめします.
相手の対応によっては,即座に返答しなければならない場合もあります.そういった場合は,相手の話しを建設的に受け入れる方向に話しを持って行きましょう.つまり,「でも」や「だけど」といった言葉から話しを切り出さないようにすることが大切です.その主張が正論だろうと,やはり「でも」や「だけど」といわれた相手はあなたに対して「聞く耳をもっていないな」,「全くわかろうとしていないな」などとネガティブな感情を抱いてしまいます.そうならないためにも,「でも」を「では」,「だけど」を「それでは」などに変えて,話しを切り出すと良いと思います.
トンでもさん対応法
相手があなたのためを思って批判してくれているのであれば良いのですが,まれにそうではない方がいます.悪意を持って批判してくる人です.そのような場合,相手には問題を解決しようなどという考えはなく,ただあなたを攻撃の対象として選んでいるのだと思います.そういう相手だとしても,こちらが感情的に対応してしまえば予後は不良です.正しい立ち位置を見失い,相手との関係だけでなく,職場での関係も悪くなってしまいます.
このような相手には,正しい立ち位置を確保しつつ話しをあくまで建設的に進めていくことが重要です.まず,相手の主張を余すとこなく聞き,その内容が公正か公平かを判断します.そして,内容が公正,公平ではないのであればその批判はうけいれられませんとはっきりと返答します.もちろん,相手がなっとくしないこともあるでしょうが,大切なのは自分があくまで正しい立ち位置でいることです.理不尽な主張や,自分勝手な主張は周りに浸透しません.そうなれば,非難の対象になるのはあなたではなく相手の方なのです.
まとめ
まず,相手があなたのためを思って批判してくれていることだと認識することが重要です.そして,批判されたと感じても動じずに,公正・公平な考え方でお互いの利益を優先するよう心がけましょう.悪意を持っている相手だとしても,あくまで「正しい」立場を保つことで,周りの印象もかわり,さらに相手を感情的に挑発しないで済むのだと思います.
コラム一覧
コラム一覧