人の運動を考えるとき,たいへん参考になる面白い動画を見つけました.JAXA が Youtube にアップしている動画です.いくつかの運動を地上で行った時と,宇宙空間で行った時で比較しています.まずは動画を観てみてください.
いかがでしたでしょうか?
首の側屈,深呼吸,腕立て伏せの3つの運動を,地上と宇宙空間で行ってもらい,その違いについて分かりやすく説明していましたね.
首の側屈,深呼吸,腕立て伏せの3つの運動を,地上と宇宙空間で行ってもらい,その違いについて分かりやすく説明していましたね.
例えば首の側屈させるためには,首を曲げた側の筋肉を使います.しかし,地上では重力の助けを借りるため最初に力をいれるだけで,後はほとんど力がいりません.一方,宇宙空間では重力の影響がありませんから,首を側屈したいだけの力が必要になります.
腕立て伏せも同様に,地上では肘を曲げる筋肉(上腕二頭筋など)の力は拮抗筋である肘を伸ばす筋肉(上腕三頭筋など)を制御するために発揮されます.つまり,肘を積極的に曲げるためには働きません.しかし,宇宙空間では肘を曲げる筋肉を積極的に収縮させなければ身体を引き寄せることができないのです.
こういう動画で感じてもらいたいのは,地上で人は重力に抗って,あるいは重力を利用して運動しているということです.人は,地上にいる限り,どんな動作であっても必ず重力に逆らって身体を動かします.重力に負けないように必要な筋を収縮させるのです.この事実はスポーツのトレーニング,リハビリテーションの運動療法,あるいは健康増進のエクササイズにおいてもとても重要になります.
例えば,どの分野でもある運動の能力を向上させるため,主に重力に拮抗して働く筋肉に対して筋力トレーニングを行い,そのさい重力を意識して適切な負荷をかけます.また,リハビリテーション分野では,まず患者さんに重力に逆らって動ける力を持たせることが目標になることが多いと思います.
重力という存在は,あたり前にそこにあるのに姿形は見えません.普段,なかなか意識しない存在です.しかし,運動と密接に結びついていて,重力という存在をなくして運動を考えることはできません.今回,JAXA が制作してくれた動画は,宇宙と地上での運動の違いを通して,重力の存在を再認識させてくれるものでした.