10m歩行テスト(10MWT)


 10m歩行テスト(10m walk test,10MWT)は,歩行能力を簡便に評価する指標です。以下にその目的,方法および特性(床・天井効果,カットオフ値,信頼性や妥当性など)について説明します。なお,ここで紹介するカットオフ値は,まとめにある注意事項をよく読んだ上で活用して下さい。

評価の目的と対象

 10m歩行テストは歩行速度を評価することを目的に行います。これまでアルツハイマー病,脳腫瘍,神経筋疾患の子ども,高齢者,股関節骨折,下肢切断,多発性硬化症,パーキンソン病,脊髄損傷,脳卒中,外傷性脳損傷および前庭障害などの患者を対象に用いられてきました。歩行に介助が必要な人は対象外になります。

評価の方法

評価の項目と手順

 歩行距離は10mが一般的ですが,6m,8mおよび12mで評価することもあります。いずれの歩行距離であっても,距離から歩行にかかった時間を割って歩行速度を求めます。テストは3回行います。3施行で得られた歩行速度の平均値を求めます。

 対象者は歩行補助具を使用することもできます。しかし,その場合は3施行で同じ歩行補助具を使用しなければなりません。評価者は評価用紙にテストの際に使用した歩行補助具を記載します。

 また,歩行速度は至適速度(普段歩いているような速さで無理なく歩く)と最高速度(可能な限り速く歩く)のどちらでも評価できます。評価者は,評価した歩行速度を評価用紙に記載します。


使用する物品と環境

 時間を計測するためにストップウォッチが必要です。また,計測する距離に応じたスペースが必要になります。少なくとも前後3m程度のスペースを用意して下さい。

評価にかかる時間

 5分程度で評価できます。

評価の特性

床・天井効果

 脊髄小脳変性症患者で天井効果が認められています (Lemay & Nadeau, Spinal Cord 2010)。

カットオフ値

 脳卒中患者で調べられています (Bowden et al, Neurorehabilitation and neural repair 2008)。
0.4 m/s 以下:室内歩行が自立する可能性あり
0.4〜0.8 m/s:限られた範囲でなら歩行自立
0.8 m/s 以上:歩行自立

信頼性

(1) 再試験信頼性(いつ評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 以下の対象者で確認されています。

  • 健常成人 (Watson et al., Physiotherapy 2002)
  • 神経筋疾患の子ども (Pirpiris, Journal of Pediatric Orthopaedics 2003)
  • 脳卒中患者 (Collen et al., Disability & Rehabilitation 1990)
  • 股関節骨折患者 (Hollman et al., J Geriatr Phys There 2008)
  • パーキンソン病患者 (Steffen & Seney, Physical Therapy 2008)
  • 脊髄小脳変性症患者 (Bowden & Behrman, J Rehabil Res Dev 2007)
  • 外傷性脳損傷患者 (vanLoo et al., Brain Inj 2004) 

(2) 検者間信頼性(誰が評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 以下の対象者で確認されています。

  • 健常成人 (Wolf et al., Phys There 1999)
  • 脊髄小脳変性症患者 (van Hedel et al., Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2005) 
  • 脳卒中患者 (Wolf et al., Phys There 1999)
  • 外傷性脳損傷患者 (Tyson & Connell, Clin Rehabil 2009) 

(3) 検者内信頼性(同じ人が数回評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 以下の対象者で確認されています。

  • 脊髄症小脳変性症患者 (van Hedel et al., Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2005)
  • 脳卒中患者 (Collen et al., Disability & Rehabilitation 1990) 

(4) 内的整合性(評価したいことが評価できているかどうか)

 渉猟した限り確認されていません。

妥当性

(1) 基準関連妥当性(他の似たような評価指標と関連するかどうか)

 以下の対象者で確認されています。

  • 脳卒中患者 (Tyson & Connell, 2009) 
  • 多発性硬化症患者 (Paltamaa et al., Archives of physical medicine and rehabilitation 2007) 

(2) 構成概念妥当性(評価内因子を合わせて評価したいものを評価できているか)

 以下の対象者で確認されています。

  • 健常成人 (Wolf et al., 1999)
  • 股関節骨折患者 (Latham et al., Archives of physical medicine and rehabilitation 2008)
  • 脊髄小脳変性症患者 (vanHedel et al., Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2005) 

(3) 内容的妥当性(項目に評価したい内容を含んでいるか)

 脊髄小脳変性症患者で確認されています (Jackson et al., J Spinal Cord Med 2008)。

(4) 表面的妥当性(その道の専門家からみて妥当かどうか)

 外傷性脳損傷患者で確認されています (Moseley et al., J Head Trauma Rehabil 2004)。

まとめ

 10m歩行テストは歩行能力の評価指標として様々な疾患の患者さんに対して用いられます。簡便に評価できるためいくつかのガイドラインでも推奨されています。評価の信頼性や妥当性も調べられていますが,疾患ごとに偏りがあるようです。国内国外問わず,いくつかの研究によって10m歩行のカットオフ値(基準値)が求められています。これらのカットオフ値は対象の属性(年齢,罹患疾患,障害の重症度など)が研究された対象と同様でないと転用することはできません。他者の研究によるカットオフ値を活用される際は十分に注意して下さい。

評価の特徴や方法(評価指標一覧)