Barthel Index (BI)


 Barthel Index (BI,バーセルインデックス) は,中枢神経系疾患,骨関節系疾患,がん患者にも用いることのできる日常生活動作能力を評価する指標です。以下に評価の目的や対象,方法,特性(床・天井効果,信頼性や妥当性)についてまとめました。

評価の目的と対象

 日常生活動作能力,すなわち食事,車椅子-ベッド間の移乗,整容動作,トイレ動作,入浴,歩行(あるいは車椅子)移動,階段昇降,更衣動作,排便コントロール,排尿コントロールの介助量を評価します。この評価指標は,中枢神経疾患のみならず,骨関節系疾患,がん患者にも適用できます。病棟あるいは施設内で実際にしているADL能力ではなく,能力的に評価項目が可能(できるADL)であるかを評価します。

評価の方法

評価の項目

 食事,車椅子-ベッド間の移乗,整容動作,トイレ動作,入浴,歩行(あるいは車椅子)移動,階段昇降,更衣動作,排便コントロール,排尿コントロールの10項目あります。これらの項目は対象者にできる能力が備わっているかで評価します。

評価の得点

 入浴と整容動作は0点と5点の二段階評価.トイレ動作,階段昇降,更衣動作,排尿コントロール,排便コントールは0点,5点,10点の三段階評価.食事動作,車椅子-ベッド間の移乗,歩行(あるいは車椅子)移動は0点,5点,10点,15点の4段階評価です。最大スコアは100点で,全項目の合計点で総合得点を求めます.項目,得点,評価内容の表を以下に示します。

項目
得点
評価内容
1 食事 
10
5
自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える
部分介助(たとえば、おかずを切って細かくしてもらう)
全介助 
2 車椅子から ベッドへの移動
15
10
5
自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(非行自立も含む)
軽度の部分介助または監視を要する
座ることは可能であるがほぼ全
全介助または不可能 
3 整容 
5
自立(洗面、整髪、歯 磨き、ひげ剃り)
部分介助または不可能 
4 トイレ動作 
10
5
自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する
全介助または不可能 
5 入浴 
5
自立
部分介助または不可能 
6 歩行 
15
10
5
45M 以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず
45M 以上の介助歩行、歩行器の使用を含む 歩行不能の場合、車椅子にて
45M 以上の操作可能
上記以外 
7 階段昇降 
10
5
自立、手すりなどの使用の有無は問わない
介助または監視を要する
不能 
8 着替え 
10
5
自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える
上記以外 
9 排便コントロール 
10
5
失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む
上記以外 
10 排尿コントロール 
10
5
失禁なし、収尿器の取り扱いも可能
ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む
上記以外 

使用する物品と環境

 特にありません.実際の生活環境に合わせて評価して下さい。

評価にかかる時間

 対象者の自己報告で評価した場合は2〜3分で評価できます.直接,動作を観察して評価した場合は20分程度の時間がかかります。

評価の特性

信頼性

(1) 再試験信頼性(いつ評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 渉猟した限り確認されていません。

(2) 検者間信頼性(誰が評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 急性期脳卒中患者において最良の検者間信頼性が確認されています (Hsueh et al., 2001)。また,高齢者でも良好な検者間信頼性が確認されています (Richards et al, 1998)。

(3) 検者内信頼性(同じ人が数回評価しても同じ結果が得られるかどうか)

 渉猟した限り確認されていません。

(4) 内的整合性(評価したいことが評価できているかどうか)

 急性期脳卒中患者において確認されています (Hsueh et al., 2001)。

妥当性

(1) 基準関連妥当性(他の似たような評価指標と関連するかどうか)

 急性期脳卒中患者でFIMの運動項目と相関関係が認められています (Hsueh et al., 2002)。

(2) 構成概念妥当性(評価内因子を合わせて評価したいものを評価できているか)

 神経系リハビリテーションで確認されています (Hobart, 2001)。

(3) 内容的妥当性(項目に評価したい内容を含んでいるか)

 あまり良好ではありません (Morton et al, 2008)。

(4) 表面的妥当性(その道の専門家からみて妥当かどうか)

 渉猟した限り確認されていません。

床・天井効果

 軽度脳梗塞と一過性虚血発作,および高齢者には天井効果が確認されています。

まとめ

 Bathel IndexはFIMと並び,日本でも多く用いられる日常生活動作能力の評価尺度です。得点の付け方も分かりやすく,短時間で評価できるため臨床向きの評価指標だと思います。一方で,信頼性や妥当性ではまだ確立されていない項目も多く,信用に耐えるかという議論は残ります。今回紹介したものはオリジナルの内容ですが,BIはいくつか修正された,あるいは改変された指標が開発されています。いずれにせよ,信頼性,妥当性については疾患毎にもう少し検討していく必要があります。

評価の特徴や方法(評価指標一覧)