Functional Independence Measure (FIM,フィム) は国内外で一般的に用いられている日常生活動作 (ADL) 能力の評価指標です。以下に評価の目的,対象,方法および特性(床・天井効果,信頼性や妥当性など)について説明します。
評価の目的と対象
FIMは下位項目に運動と認知とがあり,セルフケア,排泄コントール,移乗,移動,コミュニケーション,社会的認知の6つの領域について評価します。これまで,脳卒中,外傷性脳損傷,脊髄損傷,多発性硬化症,高齢者,幼児に使用されてきました。FIMは実際に患者さんが行なっているADL能力を評価します。つまり「しているADL」の評価指標です。
評価の方法
評価の項目
運動下位項目ではセルフケア6項目,排泄コントール2項目,移乗3項目,移動2項目の計13項目があります。認知下位項目では,コミュニケーション2項目,社会的認知3項目の計5項目があります。運動と認知の下位項目を合わせて計18項目から構成されいます。
運動下位項目 | ||
セルフケア | 6項目 | 食事,整容,清拭,更衣(上半身),更衣(下半身),トイレ動作 |
排泄コントロール | 2項目 | 排尿コントロール,排便コントロール |
移乗 | 3項目 | ベッド/椅子/車いす,トイレ,浴槽/シャワー |
移動 | 2項目 | 歩行/車いす,階段 |
認知下位項目 | ||
コミュニケーション | 2項目 | 理解,表出 |
社会的認知 | 3項目 | 社会的交流,問題解決,記憶 |
評価の得点
評価尺度は全ての項目で7段階で評価します。7段階は以下の通りです。
7.完全自立:患者自身が完全に行える
6.修正自立:装具の使用や時間を要したり,安全性への配慮が必要
5.監視:他者の監視が必要
4.最小介助:患者自身で75%以上行える
3.中等度介助:患者自身で50%以上行える
2.最大介助:患者自身で25%以上行える
1.全介助:患者自身で25%未満しか行えない
7.完全自立:患者自身が完全に行える
6.修正自立:装具の使用や時間を要したり,安全性への配慮が必要
5.監視:他者の監視が必要
4.最小介助:患者自身で75%以上行える
3.中等度介助:患者自身で50%以上行える
2.最大介助:患者自身で25%以上行える
1.全介助:患者自身で25%未満しか行えない
FIMは他職種連携のもと得点化することを推奨されており,リハ専門職,看護師,介護士など,他の職種と相談の上で患者さんのADLを把握することが大切です。
使用する物品と環境
患者さんが実際に日常生活を行なっている環境,使っている物品をそのまま用います。
評価にかかる時間
全ての項目を得点づけるのに30〜45分程度かかります。
その他
FIMは便宜上,公式の講習会を受けて,認定の評価者にならないと評価できないとされています。
評価の特性
床・天井効果
一部疾患では退院後に天井効果が生じることがあるようです (Coster et al, 2006; Brock et al., 2002)。
信頼性
(1) 再試験信頼性(いつ評価しても同じ結果が得られるかどうか)
高齢者 (Pollak et al., 1996) や脊髄損傷患者 (Masedo et al., 2005) にて確認されています。
(2) 検者間信頼性(誰が評価しても同じ結果が得られるかどうか)
様々な疾患でメタ分析した結果,総合得点では良好な検者間信頼性が確認されています (Ottenbacher et al., 1996)。ただし,項目別でみるとあまり信頼性が高くない場合もあるようです (Kohler et al, 2009; Grey and Kennedy, 1993)。
(3) 検者内信頼性(同じ人が数回評価しても同じ結果が得られるかどうか)
確認されていません。
(4) 内的整合性(評価したいことが評価できているかどうか)
脳卒中 (Hsueh et al., 2002),脊髄損傷 (Masedo et al., 2005),多発性硬化症 (Sharrack et al., 1999) などの患者で確認されています。
妥当性
(1) 基準関連妥当性(他の似たような評価指標と関連するかどうか)
急性期脳卒中患者でBatheI Indexの運動項目と相関関係が認められています (Hsueh et al., 2002)。
(2) 構成概念妥当性(評価内因子を合わせて評価したいものを評価できているか)
急性期脳卒中患者 (Tur et al., 2003) や脊髄損傷患者 (Ditunno et al., 2007) で確認されています。
(3) 内容的妥当性(項目に評価したい内容を含んでいるか)
全体としては確立されています(Keith & Granger, 1987)。一方で,脊髄損傷や外傷性脳損傷患者ではあまり良好でないという報告もあります (Jackson et al., 2008; Hall et al., 2001)。
(4) 表面的妥当性(その道の専門家からみて妥当かどうか)
脊髄損傷患者で確認されています (Grey and Kennedy, 1993)。
まとめ
FIMは世界共通で一般化した日常生活動作能力の評価尺度です。得点の付け方が細かく,項目ごとに独自のルールも存在します。信頼性や妥当性もこれだけ活用されている割には,一部疾患でのみで確認されていたり,項目別にみると妥当でない場合もあります。一方で,少なくとも入院期間中は天井効果を起こしにくく,院内で用いるには最適なのかもしれません。職種を問わず認知されている指標である点も魅力の一つです。
評価の特徴や方法(評価指標一覧)
評価の特徴や方法(評価指標一覧)