僧帽筋は肩甲骨のいくつかの部位に付着する大きな筋です。ここでは僧帽筋の機能や役割について説明します。
僧帽筋の概要
僧帽筋は肩甲骨上の筋群のなかで最も表層に位置する筋です。僧帽筋には上部,中部,下部の3つの筋腹があり,それぞれで機能がことなります。以下に,僧帽筋の起始,停止,神経支配および作用をまとめます。
起始:上項線内側1/3,外後頭隆起,項靱帯,C7-Th12の棘突起と棘上靭帯
停止:鎖骨外側1/3,肩峰内側,肩甲棘の隆起上唇,肩甲棘内側と肩甲棘結節
神経支配:脊髄副神経(第11脳神経,脊髄部),C3,C4腹側枝からの感覚線維
作用:胸鎖関節挙上,肩甲骨挙上,肩甲骨内転,肩甲骨上方回旋
上部,中部,下部線維の作用
僧帽筋上部線維
主な作用は肩甲骨の挙上や内転です。特に肩甲骨内転は主に立位時に作用します。この筋腹は単独で筋力低下を起こすことが少ないため,どちらかと言えば筋緊張亢進による機能低下の方が重要です。
上部線維の緊張により,頭頸部の関節可動域が制限されます。また,一側の緊張によって肩甲帯の非対称性を引き起こします。ただし,このような機能障害は肩甲骨周囲の他の筋群の影響も強く受けるため,僧帽筋上部線維が純粋に関わっているか慎重に吟味する必要があります。
僧帽筋中部線維
主な作用は肩甲骨の内転です。中部線維の上部は肩甲骨の挙上にも作用します。中部線維は僧帽筋内で最も大きな面積の筋腹で肩甲骨の安定性に重要です。
中部線維が筋力低下により,肩甲上腕の筋群が上手く機能しなくなります。肩甲上腕関節の運動は,肩甲骨の安定性があってはじめて良好に機能するからです。
僧帽筋下部繊維
主な作用は肩甲骨の下制です。しかし,直立姿勢では下制方向に重力が作用しているためあまり活動しません。
僧帽筋と肩こり
僧帽筋は肩こりの原因となりやすい筋です。特に胸椎後弯が増強した不良姿勢(肩甲骨が外転)でいると,上部,中部,下部線維が牽引されて,緊張が高まります。作業時には姿勢を正し,かつ僧帽筋各線維を鍛えることである程度の肩こりを防止あるいは解消することが可能だと考えられます。
僧帽筋上部線維と下部線維の引っ張り合い
僧帽筋の上部線維と下部線維は,肩甲骨を互いに反対方向へ引っ張りあう関係にあります。これらの線維の関係は解剖学的フォースカップリングといわれ,これらが作用すると肩甲骨は胸郭上を移動することなく上方に回旋します。この作用は肩甲骨の安定性に重要で,いずれかの線維が機能不全に陥ると,肩甲骨の上方回旋時に肩甲骨が不安定になります。
まとめ
僧帽筋は3つの線維からなり,各々で作用が異なります。中部線維はそれ単独で肩甲骨の安定性に関与していて,上部線維と下部線維は同時に拮抗して働くことで,肩甲骨が安定した状態での上部回旋を可能にします。
肩甲骨には様々な筋が付着しているため僧帽筋単独の機能不全を判別するのは困難です。しかし,僧帽筋各線維の作用や機能を理解することで,姿勢や筋力低下の結果からある程度の考察が可能になります。
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