
2つのグループのどちらが大きな値をとりやすいかを知りたいとき、いちばん素朴な方法は、両方から1人ずつ選んで比べ、勝ち負けを数えることでしょう。Mann-Whitney(マン・ホイットニー)のU検定は、この「総当たり戦の勝ち数」を使う検定です。
1947年にこの検定を発表した数学者マンと大学院生ホイットニーの論文の題名は、「2つの確率変数の一方が他方より確率的に大きいかどうかの検定について」でした。U検定は「中央値の差の検定」と説明されることがありますが、もともと何を調べるために作られたのかは、この題名に書かれています。U検定が何を数え、何を比べているのかを、しくみと歴史からたどります。
Mann-WhitneyのU検定の要点
- 何に使うか:対応のない2群で、一方の群の値が他方より大きくなりやすいかを調べる。順序尺度のデータ、分布が大きくゆがんだデータ、外れ値のあるデータにも使える
- しくみ:2群から1人ずつ選んだすべての組で値を比べ、一方の群が大きかった組の数(同じ値は0.5)をUとする
- 中央値の検定とは限らない:2群の分布の形とばらつきが同じときに限り、中央値(位置)の差の検定と読める。形が違うと、中央値が同じでも有意になる
- 人数:2群の人数は違ってよい。ただし各群3人ずつでは、どれだけ差があっても両側p値は0.10より小さくならない
- 結果の書き方:各群の中央値(四分位範囲)、U、p値に、効果量(一方の群の値が他方を上回る確率など)を添える
「勝ち数」で2つのグループを比べる
図1は、新しい練習をしたA群4人と、従来の練習をしたB群5人の歩行速度(架空のデータ)を総当たりで比べたものです。4×5=20組のうち、A群の人のほうが速かった組を1点、同じ値だった組を0.5点として足すと16.5点になります。これがA群のUです。B群のUは残りの3.5で、2つのUを足すと必ず組の数の20になります。

図1 Uは総当たり戦の勝ち数(A群4人とB群5人の歩行速度、単位はm/秒。架空のデータ)
Uを組の数で割った16.5÷20=0.825は、A群から1人、B群から1人を選んだとき、A群の人のほうが速い確率(同じ値は半分と数える)を表します。2群に差がなければ、この確率は0.5、Uは組の数の半分の10前後になるはずです。U検定は、実際のUが半分の値からどれだけ離れているかを見て、偶然でも起こりうる程度の偏りかどうかを判断します。
総当たりで数える代わりに、順位からUを求めることもできます。9人の値を小さい順に並べて順位をつけ(同じ値には平均の順位をつける)、A群の順位を足すと26.5です。ここから、A群の4人が1〜4位を占めたときの最小の合計(1+2+3+4=10)を引くと、Uと同じ16.5になります。この順位の合計を使うのがウィルコクソンの順位和検定で、U検定とまったく同じ結果を与えます。
ところが、この例ではA群が82.5%の組で勝っているのに、正確なp値(両側)は0.13で、有意にはなりません。9人を4人と5人に分ける方法は126通りあり、そのうち16通りで、Uが半分の値からこれと同じくらい以上に離れます。2群に差がなくても、16÷126≒0.13の確率でこの程度の偏りは起こるので、各群4〜5人では偶然と区別できないのです。
同じ検定が、何度も発明された
この検定の名前は一つではありません。「ウィルコクソンの順位和検定」「マン・ホイットニーのU検定」、両方を合わせた「ウィルコクソン・マン・ホイットニー検定」。名前が多いのは、同じ考えに何人もの研究者が別々にたどりついたからです。
1945年、化学者のウィルコクソンが順位和を使う検定を発表しましたが、扱ったのは2群の人数が等しい場合だけでした。2年後、オハイオ州立大学の数学者マンと、その大学院生だったホイットニーは、2群の人数が違ってもよい形に広げ、総当たりの勝ち数としてUを定義し、各群8人までの数表と、人数が多いときに使う近似の方法を示しました。じつはその前年の1946年には、のちに「認知的不協和」の理論で知られる心理学者フェスティンガーも、人数の違う2群の順位和の分布を計算した表を発表していました。マンとホイットニーは、これを知らなかったようです。
さらにさかのぼると、1914年にはドイツのドイヒラーが、マンとホイットニーとほぼ同じ考え方を示していました。1957年、統計学者クラスカルはこの検定の歴史をたどる論文で、こうした先行研究を紹介しています。1940年代の後半から50年代の初めにかけても、遺伝学者や農学の研究者が別々に同じ検定を発表しています。SPSSの結果に「Mann-WhitneyのU」と「WilcoxonのW」が並んで出てくるのは、この歴史の名残です。
U検定は「中央値の検定」か
マンとホイットニーの論文の題名が示すとおり、U検定が調べているのは、一方の群の値が他方より大きくなりやすいかどうかです。図1でいえば、A群の人がB群の人を上回る確率が0.5かどうか、です。
2群の分布の形とばらつきが同じで、位置だけがずれているなら、「大きくなりやすい」ことと「中央値が大きい」ことは一致します。しかし分布の形が違うと、両者はずれます。図2は、中央値がどちらも約14日の架空の入院日数です。A群は14日を中心に左右対称に散らばり、B群は半数が14日の少し手前に集まって、残りの半数は長引いています。B群の人がA群の人より長く入院している確率は0.60で、各群50人で比べると、U検定は約4割の確率で有意になりました。分布がまったく同じ2群なら、この割合は5%前後にとどまります。

図2 中央値が同じでもU検定は有意になりうる(架空の入院日数。下の棒グラフは各4,000回のシミュレーション)
2001年に英国医師会雑誌(BMJ)に載った解説は、U検定はばらつきの違いにも反応するので、中央値だけの検定ではないと注意を促しています。2009年のシミュレーション研究は、U検定で2群の平均値や中央値を比べようとすると、わずかなばらつきの違いや中程度のゆがみで、有意になる確率が5%から大きくずれることを示しました。2018年には、U検定が中央値の検定として成り立たない実例をいくつも示した論文も出ています。
そのため、結果は「中央値に差があった」ではなく、「A群の値はB群より大きい傾向があった」と書くほうが、検定が調べたことに忠実です。そのうえで各群の中央値と四分位範囲を示し、U÷(n1×n2)で求まる「一方の群の値が他方を上回る確率」を添えると、差の大きさも伝わります。この確率は、診断の正確さを表すROC曲線の曲線下面積(AUC)と同じ量です。
何人いれば検定できるか
2群の人数は違っていてもかまいません。人数が違っても使えるようにしたのが、まさにマンとホイットニーの仕事でした。
注意が必要なのは、人数が少ないときです。各群3人ずつなら、6人を3人と3人に分ける方法は20通りしかありません。一方の群の3人が全員もう一方より大きいという最も偏った分け方でも、偶然に起こる確率は片側で1/20、両側で2/20=0.10です。そのため、どれだけ差が大きくても、有意水準5%では有意になりません。
| 各群の人数 | 分け方の総数 | 両側p値の最小値 |
|---|---|---|
| 2人と2人 | 6 | 0.33 |
| 3人と3人 | 20 | 0.10 |
| 3人と4人 | 35 | 0.057 |
| 3人と5人 | 56 | 0.036 |
| 4人と4人 | 70 | 0.029 |
| 4人と5人 | 126 | 0.016 |
| 5人と5人 | 252 | 0.0079 |
表1 少人数のときにU検定で得られるp値の最小値(同じ値がない場合)
人数がある程度多いときは、Uの分布を正規分布で近似してp値を求めます。SPSSの「漸近有意確率」がこれで、同じ値が多いデータでは、そのぶんの補正が入ります。人数が少ないときは、近似ではなく、すべての分け方を数え上げる正確な検定のp値を使います。
t検定とどちらを選ぶか
対応のない2群を比べる検定には、「2標本t検定(対応のないt検定)」もあります。データが正規分布に近ければ、U検定を使っても差を見抜く力の低下はわずかです。統計学者のホッジスとレーマンは1956年、正規分布のデータではU検定の効率がt検定の約95%(3/π)であることを示しました。分布の裾が長かったり外れ値があったりすると、むしろU検定のほうが差を見抜きやすくなります。使い分けの考え方は「パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の違い」で詳しく扱っています。
なお、同じ人を2回測ったような対応のあるデータには「Wilcoxonの符号付順位検定」、3群以上の比較には「Kruskal-Wallis検定」を使います。
SPSSでの手順
模擬データを使って、SPSSでU検定を行ってみます。B地区の高齢者で、運動指導を行った群(94人)と行わなかった群(94人)に、2か月後の運動習慣をアンケートで尋ねたとします。回答は「毎日運動する」を1、「週4回以上」を2、「週2〜3回」を3、「週1回」を4、「全く運動しない」を5とする5段階で、点数が小さいほどよく運動していることになります。帰無仮説は「2群の得点の分布は同じ」、対立仮説は「一方の群の得点が他方より大きくなりやすい」です。
- 群を表す列(運動指導の有無:なし=0、あり=1)と、得点の列を作り、1人を1行に入力します。2群の得点を別々の列に並べないのがポイントです。

- メニューから「分析」→「ノンパラメトリック検定」→「過去のダイアログ」→「2個の独立サンプルの検定」を選びます。古いバージョンでは「過去のダイアログ」を経由しません。

- 「アンケート得点」を検定変数リストに、「運動指導の有無」をグループ化変数に移します。「グループの定義」を押し、グループ1に0、グループ2に1を入力します。「検定の種類」で「Mann-WhitneyのU」にチェックが入っていることを確かめます。各群の中央値も出したいときは、「オプション」で「4分位」にチェックを入れます。なお、図の吹き出しのうち、②の「介入あり1、介入なし2」は、このデータでは入力欄のとおり0と1です。③の「記述統計量」で出るのは平均値や標準偏差などで、中央値は「4分位」で出ます。

- 「OK」を押すと、結果が出力されます。

「順位」の表には、群ごとの平均ランクと順位和が出ます。「検定統計量」の表では、Mann-WhitneyのUが4339.5、WilcoxonのWが8804.5です。Wは運動指導あり群の順位和で、ここから最小の合計(94×95÷2=4465)を引くとUになります。Zは−0.220、漸近有意確率(両側)は0.826で、有意水準5%で有意ではありません。
効果量も求めておきましょう。U÷(94×94)=4339.5÷8836≒0.49は、運動指導あり群の人の得点が、なし群の人の得点より大きくなる確率(同点は半分と数える)で、ほぼ五分五分です。Zの大きさを総人数の平方根で割った効果量rも、0.220÷√188≒0.02とごく小さな値です。この結果から言えるのは「運動指導の有無で得点の分布に差があるとはいえない」ということで、「差がないことが示された」わけではありません。
無料の統計ソフトRでは、wilcox.test(得点 ~ 群, data = データ名) で同じ検定ができます。Rが出力するWは、SPSSのWilcoxonのWではなく、第1群のUにあたる値です(第1群の順位和から最小の合計を引いた値)。
結果の書き方
論文や報告書では、たとえば次のように書きます。数値の○には、各群の中央値と四分位範囲が入ります。
運動習慣の得点の中央値(四分位範囲)は、運動指導あり群で○(○〜○)、なし群で○(○〜○)であった。Mann-WhitneyのU検定の結果、2群の得点の分布に有意な差は認められなかった(U=4339.5、Z=−0.22、p=0.83)。運動指導あり群の得点がなし群を上回る確率は0.49であった。
まとめ
Mann-WhitneyのU検定は、2群から1人ずつ選んだすべての組で勝ち負けを数え、一方の群の値が大きくなりやすいかを調べる検定です。2群の人数は違ってもよく、順序尺度のデータや外れ値のあるデータにも使えます。分布の形が違うと中央値が同じでも有意になるので、結果は「一方が大きくなりやすい」と読み、中央値と四分位範囲、一方が他方を上回る確率をあわせて示しましょう。各群3人ずつでは有意になりえないことも、計画の段階で知っておきたい点です。ほかの検定は「その他の統計学的検定一覧」にまとめています。
さらに学びたい人へ:おすすめの本
- 内田治『SPSSによるノンパラメトリック検定』(オーム社):ノンパラメトリック検定だけを扱った解説書です。例題をSPSSで解きながら進み、少人数のデータに使う正確確率検定や、必要なデータ数の決め方も解説しています(2014年刊行、SPSS 22に対応)。
- 内田治『Rによるノンパラメトリック検定』(オーム社):同じ著者が、無料の統計ソフトRでノンパラメトリック検定を解説した本です。例題形式で、正確確率検定やデータ数の決め方も扱っています(2017年刊行)。
参考文献
- Mann HB, Whitney DR. On a test of whether one of two random variables is stochastically larger than the other. Ann Math Stat. 1947;18(1):50-60. doi:10.1214/aoms/1177730491
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- Kruskal WH. Historical notes on the Wilcoxon unpaired two-sample test. J Am Stat Assoc. 1957;52(279):356-360. doi:10.1080/01621459.1957.10501395
- Berry KJ, Mielke PW Jr, Johnston JE. The two-sample rank-sum test: early development. Electronic Journal for History of Probability and Statistics. 2012;8.
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- Hanley JA, McNeil BJ. The meaning and use of the area under a receiver operating characteristic (ROC) curve. Radiology. 1982;143(1):29-36. doi:10.1148/radiology.143.1.7063747
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