筋の収縮様式:なぜ「収縮」なのに伸びるのか

筋の収縮様式:なぜ「収縮」なのに伸びるのか

関節の角度を変えずに力を出す収縮は、長さが変わらないという意味で「等尺性収縮」と呼ばれます。ところが、9人に足首を底屈20°に固定したまま足首を反らす力を最大まで高めてもらうと、前脛骨筋の筋線維の束である筋束は90 mmから76 mmへ短くなり、腱は最大15 mm伸びていました(Itoら 1998)。名前の上では長さが変わらない収縮の中で、筋線維は縮んでいたのです。

膝の手術を受けた患者さんが「階段は、上るより下りるほうが怖い」と言ったとしましょう。階段を下りるとき、体重を受け止める脚の大腿四頭筋は、膝が曲がっていくのを支えるために力を出しながら、引き伸ばされています。教科書では、これを「伸張性収縮」と習います。けれども、「収縮」とは縮むことのはずです。伸びながら収縮するとは、どういうことでしょうか。

筋の収縮様式の要点

  • 収縮とは:筋が活動して力を出すこと。縮むとは限らない。筋の力と負荷の大小で、筋が縮む短縮性収縮、長さが変わらない等尺性収縮、伸ばされる伸張性収縮の3つに分かれる
  • 伸張性収縮の特徴:等尺性収縮より大きな力を出せる(取り出した筋では1.5〜1.8倍ほど、ヒトの最大努力では1.2〜1.4倍ほど)。同じ力を出すのに使う酸素は、短縮性収縮の数分の1で済む
  • 筋肉痛:慣れない伸張性の運動は、遅れて起こる筋肉痛を起こしやすい。ただし、一度経験すると数週間は起こりにくくなる
  • 名前の限界:「等尺性」でも筋線維は縮み、腱が伸びている。「等張性」は重りの重さが一定という意味で、筋の張力は一定ではない
  • 同時収縮:動きを起こす主動作筋と、反対の働きをもつ拮抗筋が同時に働くこと。筋の長さによる分類とは別の観点で、関節が動いているときにも起こる
  • 特異性:筋力は、鍛えたのと同じ収縮様式、同じ関節角度で測ったときに最も伸びる
  • 臨床での利用:伸張性の運動は、アキレス腱症、高齢者の筋力と転倒の危険、サッカー選手のハムストリングスの肉離れの予防で効果が報告されている

「収縮」は、縮むことではない

筋の収縮とは、筋線維が神経からの指令を受けて活動し、力を出すことです。そのとき筋が実際に縮むかどうかは、筋が出す力と、それに逆らう負荷との大小で決まります(図1)。重りを持って肘を曲げる筋で考えると、筋の力が負荷に勝てば、筋は縮んで肘が曲がります。これが短縮性収縮です。釣り合えば長さが変わらない等尺性収縮に、負荷が勝てば、筋が力を出したまま伸ばされて肘が伸びる伸張性収縮になります。どの場合も、筋線維は活動して力を出しています。筋が縮むか伸ばされるかを決めるのは、筋の力と負荷の大小関係です。ただし、神経からの指令の出し方は収縮様式によって違い、これは後で紹介します。

肘を曲げる筋で重りを持つ3つの場面の模式図。筋の力が負荷より大きいと筋は縮んで肘が曲がる(短縮性収縮)。釣り合うと関節は動かない(等尺性収縮)。負荷のほうが大きいと筋は力を出しながら伸ばされ、肘が伸びる(伸張性収縮)

図1 筋の力と負荷の大小による3つの収縮様式(模式図)。上腕二頭筋などの肘を曲げる筋を描いた。3つとも筋は活動して力を出しており、違うのは筋が縮むか、変わらないか、伸ばされるか。力の大小は、正確には肘を回す力であるトルクどうしで比べる

この整理は、言葉の上では一つの矛盾を抱えています。ミシガン大学のFaulkner(2003)によれば、英語の動詞contractは、筋については「張力が増し、短くなること」と辞書で定義されています。ところが1920年代から1930年代にかけて、筋と負荷の関係によって、筋は縮むことも、長さを変えないことも、伸びることもあると分かってきました。そのため、収縮という言葉は「活動して力を出すこと」と定義し直す必要があったのです。Faulknerは、長さを変えずに力を出すことが矛盾を含んだまま75年にわたって「等尺性収縮」と呼ばれてきたと指摘し、動きの向きを表すにはshortening(短縮性)とlengthening(伸張性)という形容詞が最も適していると述べています。

英語で広く使われるconcentric(短縮性)とeccentric(伸張性)は、もともと「中心が同じ」「中心が外れた」という意味の言葉です。Faulknerは、これらは心臓の肥大の形を表すのには合っているが、骨格筋の収縮を表すのには適さないとしています。eccentricは、デンマークの生理学者Asmussenが1953年に「excentric」という綴りで導入した言葉です。Hesselら(2017)は、この元の綴りはex-(〜から離れて)とcentric(中心)を合わせたもので、筋の中心から離れていく動きを表すのに合っていると述べています。生理学者のA. V. Hillは、「正の仕事」「負の仕事」という言葉を使うことを勧めていました(ElmerとLaStayo 2014)。日本語では、concentricとeccentricはそれぞれ「求心性」「遠心性」とも訳されてきました。けれども、この2つの語は神経の分野では、感覚の信号が中枢へ向かう向きと、運動の指令が末梢へ向かう向きを表す言葉でもあります。筋の長さの変化をそのまま表す「短縮性」「伸張性」のほうが、取り違えが起こりにくいでしょう(表1)。

名称筋の長さと例
短縮性収縮
(求心性収縮)
縮む
例:重りを持ち上げる、階段を上るときの大腿四頭筋
等尺性収縮筋と腱を合わせた長さは変わらない(関節は動かない)
例:重りを持ったまま止める、壁を押す
伸張性収縮
(遠心性収縮)
力を出しながら伸ばされる
例:重りをゆっくり下ろす、階段を下りるときの大腿四頭筋

表1 筋の長さの変化による収縮様式の分類。関節が動かない等尺性収縮を静的収縮、関節が動く短縮性収縮と伸張性収縮を動的収縮とまとめることもある

背中合わせの2台の自転車

伸ばされながら力を出す筋が特別だということは、古くから知られていました。活動している筋を引き伸ばすと、縮むときより大きな力が出ることを最初に観察したのはドイツの生理学者Fickで、その大きさを測ったのがKatz(1939)です。さらにHillは、引き伸ばされている筋が放出する熱、つまり使うエネルギーがずっと少ないことを観察しました(Hesselら 2017)。

この2つの性質がヒトの運動で何を意味するのかを、目に見える形で示したのが、Hillの教え子のAbbott、Bigland、Ritchieの3人です(Abbottら 1952)。3人は2台の固定式の自転車を背中合わせに置き、1本のチェーンでつなぎました(図2A)。Ritchieが前へこぐと、チェーンでつながったBiglandの側のペダルは、Biglandから見て逆向きに回ってきます。Biglandはそれを足で踏んで止めようとします。Ritchieの脚の筋は縮みながら力を出す正の仕事を、Biglandの脚の筋は伸ばされながら力を出す負の仕事をします。2人の力は1本のチェーンを通して釣り合うので、2人がする仕事の大きさは同じです。

小柄な女性のBiglandは、大柄な男性のRitchieがこぐ力を楽に受け止め、先に疲れ果てたのはRitchieだったという逸話がよく知られています。Biglandの酸素の消費は、Ritchieの数分の1(条件によっては約5分の1)にとどまりました(ElmerとLaStayo 2014)。

上は、背中合わせに置いた2台の自転車を1本のチェーンでつないだ実験の模式図。前へこぐRitchieの脚の筋は縮みながら、逆向きに回るペダルを止めるBiglandの脚の筋は伸ばされながら力を出す。下は、踏む力を増やしたときの筋電図と酸素摂取量の増え方の比較で、前へこぐ場合を100とすると、ペダルを止める場合は筋電図51、酸素摂取量16

図2 2台の自転車の実験(Abbottら 1952)と、踏む力に対する筋電図と酸素摂取量の増え方(Bigland-RitchieとWoods 1976をもとに作成)。Aでは、小柄なBiglandが大柄なRitchieの力を受け止め、酸素の消費は前へこぐ側の数分の1だった(ElmerとLaStayo 2014)。Bは電動の自転車エルゴメーターを毎分50回転で使った測定で、踏む力に対する増え方の比は、前へこぐ場合を止める場合で割ると筋電図で1.96、酸素摂取量で6.34。前へこぐ場合を100とすると、止める場合は51と16になる

なぜこれほど違うのでしょうか。1976年、Bigland-RitchieとWoodsは、電動の自転車エルゴメーターを使って、前へこぐ場合と、逆に回るペダルを止める場合とで、踏む力を増やしたときに太ももの外側広筋の筋電図と酸素摂取量がどれだけ増えるかを比べました。踏む力に対する増え方は、前へこぐ場合のほうが、筋電図で1.96倍、酸素摂取量で6.34倍大きくなりました(図2B)。筋電図の増え方が約半分ということは、伸ばされながら力を出すときには、筋線維の活動、つまり活動する筋線維の数や神経の信号が出る頻度が少なくて済むということです。それに加えて、酸素摂取量の差は筋電図の差よりずっと大きいので、筋の活動量あたりで比べても酸素の消費が少ないことになります。著者らも、伸張性収縮では、必要な筋線維の活動が少ないだけでなく、引き伸ばされた筋線維では酸素の消費が大きく減っていると考えました。

伸ばされると、なぜ大きな力が出るのか

Hill(1938)は、筋が縮む速さが増すほど出せる力が小さくなる関係を、双曲線の式で表しました(図3の右半分)。これが力と速度の関係です。では、逆向きに、活動している筋が引き伸ばされる場合はどうなるのでしょうか。Katz(1939)は、筋を引き伸ばしながら力を出させると、力が等尺性収縮の最大値を超えて急に大きくなり、Hillの式から予想されるよりも、わずかな伸びの速さで大きな力に達することに気づきました(Alcazarら 2019)。取り出した動物の筋線維や筋では、伸ばされながら出す力は等尺性収縮より50〜80%大きいのがふつうです(DuchateauとEnoka 2016)。カエルの筋線維を一定の速さで引き伸ばした実験では、力は等尺性収縮の1.9〜2倍に達し、それ以上速く伸ばしてもほとんど増えませんでした(LombardiとPiazzesi 1990)。それでも伸張性収縮のしくみの理解はなかなか進まず、Hillの発見から50年たっても、生体工学者のMcMahonは伸張性収縮を「力と速度の関係の暗い側(dark side)」と呼んでいたといいます(Hesselら 2017)。

力と速度の関係の模式図。横軸は筋の長さが変わる速さで、右が縮む向き、左が伸ばされる向き。縦軸は等尺性収縮の最大の力を1とした値。縮む速さが増すほど力は小さくなる。伸ばされるときは力が1を超えて急に大きくなり、取り出した筋では1.5〜1.8倍ほど、ヒトの最大努力では1.2〜1.4倍ほどで頭打ちになる

図3 力と速度の関係(模式図)。縦軸は、等尺性収縮で出せる最大の力を1とした値。曲線の形は模式的に描いたもので、値はDuchateauとEnoka(2016)、Hahn(2018)がまとめた範囲による。ヒトの最大努力で伸張性の力が低く抑えられる理由は、まだ議論が続いている

筋の力は、ミオシンの頭部がアクチンに結合してつくる、クロスブリッジと呼ばれる架け橋によって生まれます(くわしくは「骨格筋の収縮と弛緩」)。縮むときには、架け橋が首を振るように動いてアクチンを引き込んでは離れ、ATPを1分子使っては結合し直します。筋が引き伸ばされるときには、結合している架け橋が逆向きに引っぱられてひずむので、1つあたりの力が大きくなります。そして、ある限度を超えて引き伸ばされると、架け橋はすばやく引きはがされます(LombardiとPiazzesi 1990)。架け橋の理論を数式で定式化したA. F. Huxleyは、伸張性収縮では1分子のATPで結合と解離を何回も繰り返せる可能性を指摘していました(Herzog 2018)。そうであれば、少ないATPで大きな力を保てることになります。

ただし、架け橋だけでは説明しきれない現象もあります。活動している筋を引き伸ばしてから長さを止めると、筋が活動を続けているあいだ、力は最初からその長さで等尺性収縮をしたときより大きいままです。AbbottとAubert(1952)が報告したこの現象は「残存力増強」と呼ばれます(Herzog 2014)。結合している架け橋の数だけではこの現象を説明しにくいことから(Hesselら 2017)、注目されているのが、サルコメアの中にある弾性をもつ巨大なタンパク質、タイチンです。日本ではコネクチンとも呼ばれます。伸ばされたタイチンは、ATPを使わずに弾性エネルギーをたくわえます。さらに、筋が活動するとタイチンがカルシウムと結合し、アクチンにも結合して、伸ばされたときの抵抗が大きくなるという仮説が提案されています(Herzog 2014、Hesselら 2017)。Herzog(2018)は、架け橋の理論は伸ばされたときの力の増加はよく説明するものの、残存力増強は説明できず、エネルギーの消費の少なさも仮定を追加しなければ説明できないと述べています。タイチンの仮説はまだ完全には証明されておらず、研究が続いています。

ところが、ヒトが自分の意思で最大の力を出すと、伸張性収縮の力は等尺性収縮の1.2〜1.4倍ほどにとどまり、等尺性とほとんど変わらないことも少なくありません(Hahn 2018)。トレーニングをしていない人は、最大の伸張性収縮で筋を完全には活動させられないことが多く、最大より弱い力でも、1本の運動神経とそれが支配する筋線維のまとまりである運動単位が信号を出す頻度は、伸張性収縮のほうが短縮性収縮より低いことが分かっています(DuchateauとEnoka 2016)。DuchateauとEnokaは、この調整は主に脊髄での抑制によるものだと述べています。一方でHahn(2018)は、練習による慣れや、伸ばす前の力の入れ方が伸張性の力を大きく左右することを論じ、神経による抑制だけで説明できるかはまだ分からないとしています。

大きな力の代償:遅れてくる筋肉痛

伸張性収縮には、大きな力と少ないエネルギーの代わりに、困った性質もあります。慣れない運動のあとに遅れて起こる筋肉痛が、縮むときではなく伸ばされるときの筋の働きと結びついていると早い時期に提案したのは、「excentric」という言葉を導入したAsmussenでした(Asmussen 1956、MizumuraとTaguchi 2016)。

この違いを、筋の組織で確かめたのがNewhamら(1983)です。4人の健康な人が、20分間、台の昇り降りを続けました。片方の脚の大腿四頭筋は台に上るたびに短縮性に働き、反対の脚の大腿四頭筋は台から下りる動きを制御して伸張性に働くようにして、両脚の仕事の量をそろえたのです。運動の直後と24〜48時間後に両脚から筋を少しずつ取り、顕微鏡で調べると、短縮性に働いた脚には異常がありませんでした。一方、伸張性に働いた脚では運動の直後から損傷がみられ、痛みが出ていた24〜48時間後には、損傷はさらに強く、より多くの筋線維に広がっていました。同じ人の左右の大腿四頭筋で、同じ量の仕事をしても、伸ばされながら働いた側だけが傷んだのです。

慣れない伸張性の運動のあとの筋肉痛は、ふつう12〜24時間後に現れ、24〜72時間後に最も強くなり、5〜7日で消えます(Hodyら 2019)。ただし、痛みの強さは、筋の損傷の程度をあまりよく反映しません(Hodyら 2019)。ラットの研究では、筋線維に目に見える損傷がなくても、伸張性収縮の1〜3日後に押したときの痛みが起こり、筋線維などがつくる神経成長因子などの物質が痛みに関わっていました(MizumuraとTaguchi 2016)。

この筋肉痛は、繰り返すと起こりにくくなります。Byrnesら(1985)は、傾斜−10°の下り坂を30分走る運動を、3週間、6週間、9週間の間隔をあけて2回行わせました。下り坂を走ると、脚の筋は着地のたびに伸ばされながら体を支えます。1回目のあとには筋が傷つくと血液中に漏れ出る酵素であるクレアチンキナーゼが大きく増え、3週間後に2回目を行った群では、1回目に340%だった増加が63%にとどまり、筋肉痛も軽くなりました。この予防の効果は6週間までは続きましたが、9週間あけた群では1回目と差がありませんでした。そのため、伸張性の運動は、弱い強さから始めて少しずつ強めていくのが、筋の損傷と筋肉痛を防ぐ方法として勧められています(Hodyら 2019)。

「等尺性」でも、筋線維は縮んでいる

名前と実際のずれは、伸張性収縮だけではありません。東京大学のItoら(1998)は、9人の前脛骨筋を超音波で観察しながら、足首を底屈20°の角度に固定したまま、足首を反らす力を少しずつ最大まで高めてもらいました。足首の角度を固定していても、筋線維の束である筋束の長さは90 mmから76 mmへ短くなり、筋束が腱に対して傾く角度である羽状角は10°から12°へ増え、腱は最大15 mm伸びていました(図4)。筋線維が縮んだ分を、腱などの弾性のある組織が伸びて受け止めていたのです。等尺性収縮で一定なのは、筋と腱を合わせた長さ、つまり関節の角度であって、筋線維の長さではありません。

等尺性収縮のときの前脛骨筋の模式図。関節の角度、つまり両端の位置は変わらないのに、最大の力を入れると筋束は90 mmから76 mmへ縮み、腱は最大15 mm伸びる

図4 等尺性収縮でも筋束は縮み、腱が伸びる(Itoら 1998をもとに作成した模式図)。足首の角度を固定したまま、前脛骨筋に少しずつ最大まで力を入れたときの超音波での測定で、値は9人の平均。羽状角も10°から12°に増えた。長さの比率は模式的に描いた

逆のずれもあります。Fukunagaら(2001)は、歩いているときの腓腹筋の内側頭を超音波で観察しました。足が地面に着いている立脚期には、筋と腱を合わせた長さが変わっていても、筋束はほぼ同じ長さ(約50 mm)のまま力を出していました。そのあいだ腱は約7 mm伸び、地面をけり出すときに縮んでいました。階段を下りるときの腓腹筋でも、着地の局面で筋と腱を合わせた長さは伸びているのに、筋束は力を出しながら縮んでいました(Spanjaardら 2008)。

階段は下りるほうが怖いと言った患者さんの場面に当てはめると、「階段を下りるときの大腿四頭筋は伸張性収縮」という表現は、関節の動きと、筋と腱を合わせた長さを見た呼び名だということになります。筋線維そのものがどう動いているかは、筋や動作の局面によって違うことがあるのです。ただし、上の研究は腓腹筋での結果で、階段を下りるときの大腿四頭筋の筋線維が実際にどう動いているかは、これらの研究からは分かりません。

「等張性」と「等速性」は、何が一定なのか

等張性収縮(isotonic contraction)は、文字どおりには「張力が等しい収縮」です。しかし、重りを持って肘を曲げ伸ばしするとき、一定なのは重りの重さであって、筋の張力ではありません。重りが肘を回そうとする力、つまりトルクは、前腕が水平のときに最も大きく、肘を深く曲げたり伸ばしたりするにつれて小さくなります。筋が肘を回すてこの長さであるモーメントアームも関節の角度で変わります。さらに、動き始めに重りを加速し、動き終わりに減速するときにも、必要な力は変わります。そのため、重りを使った運動で筋の張力が一定に保たれることは、まずありません。一般に「等張性収縮」と呼ばれているのは、実際には「重りの重さが一定の短縮性収縮と伸張性収縮」です(くわしくは「等張性筋収縮による筋力増強トレーニング」)。

等速性収縮(isokinetic contraction)は、関節が一定の角速度で動く収縮です。1967年、理学療法の研究者Hislopと技術者のPerrineが「等速性」という運動の考え方を発表し、同じ年にThistleらも、これを新しい抵抗運動の考え方として報告しました(HislopとPerrine 1967、Thistleら 1967)。等速性の機器は、運動の速さがあらかじめ決めた値を超えないように、抵抗を自動的に調節します。力を入れるほど抵抗も大きくなるので、関節の角度ごとに、その速さで出せる最大の力を出し続けることができます。速さを変えて測れば、ヒトの力と速度の関係を調べることもできます。ただし、動き始めと動き終わりには速さを上げ下げする区間があり、そのあいだは速さが一定ではありません(表2、くわしくは「等速性筋収縮による筋力増強トレーニング」)。

名称一定のもの注意点
等張性収縮重りの重さ(負荷)筋の張力は、関節の角度と加速度で変わる
等速性収縮関節の角速度専用の機器が必要。動き始めと終わりは一定でない
同時収縮(長さや速さの分類ではない)主動作筋と拮抗筋が同時に働く。関節が動いていても起こる

表2 負荷や速度の条件、筋どうしの組み合わせによる呼び名

同時収縮は「4つ目の収縮様式」ではない

同時収縮(co-contraction)は、ある関節をはさんで反対の働きをもつ主動作筋と拮抗筋が、同時に活動することです。筋の長さの変化による分類とは別の観点の言葉なので、短縮性、等尺性、伸張性のどれとも組み合わさり、関節が動いているときにも起こります(表2)。

Barattaら(1988)は、重力の影響を除いた姿勢で、膝をゆっくり一定の速さ(毎秒15°)で最大の力で伸ばしたり曲げたりしてもらい、拮抗筋の筋電図を記録しました。膝を伸ばすときには、拮抗筋であるハムストリングスも同時に活動していました。ところが、大腿四頭筋を集中的に鍛えて肥大させた競技者では、このハムストリングスの同時活動が強く抑えられていました。ハムストリングスも日常的に鍛えている競技者では、健康な人と同じように同時活動がみられました。著者らは、拮抗筋の同時活動は、靱帯とともに関節の安定を保つのに必要だと結論しています。

同時収縮は、足が地面などに固定された閉鎖運動連鎖の運動で起こりやすいと説明されることがあります。Escamillaら(1998)が10人の男性で比べた研究では、スクワットはレッグプレスや膝伸展運動の約2倍のハムストリングスの活動を生みました。また、筋のモデルを使った計算では、前十字靱帯にかかる張力は、足が固定されていない開放運動連鎖の膝伸展運動で、膝が伸びきる近くでだけ生じると推定されました。ただし、同じ閉鎖運動連鎖でもレッグプレスのハムストリングスの活動はスクワットの約半分だったので、足が固定されていれば同時収縮が大きくなる、とは言い切れません。

鍛えた収縮様式で、筋力が最も伸びる

収縮様式は、筋力トレーニングの効果にも関わります(くわしくは「筋力増強の原理」)。KitaiとSale(1989)は、6人の女性に、足首を90°に保ったまま足を底屈させる等尺性の筋力トレーニングを、週3回、6週間行ってもらいました。筋力が増えたのは、トレーニングした角度と、その前後5°の角度だけでした。電気刺激で起こした筋の収縮の力は増えなかったことから、著者らはこの角度の特異性は神経の働きによるものだと考えました。ただし、等尺性のトレーニングを集めたOranchukら(2019)のシステマティックレビュー、つまり決めた手順で研究を集めて評価する総説では、筋が長く伸びた角度でトレーニングするほど筋が太くなりやすく、関節が動く運動の能力にも効果が移りやすいとされています(くわしくは「等尺性筋収縮による筋力増強トレーニング」)。

Hortobágyiら(1996)は、片脚の大腿四頭筋を、等速性の機器を使って伸張性収縮だけ、または短縮性収縮だけで12週間鍛えました(図5)。伸張性で鍛えた群では伸張性の筋力が46%増えたのに対し、短縮性で鍛えた群の短縮性の筋力の増加は13%でした。一方、鍛えたのと違う様式で測った筋力の変化は5%と10%で、統計的に有意ではありませんでした。20のランダム化比較試験をまとめたRoigら(2009)のメタアナリシス、つまり複数の研究の結果を統計的にまとめた解析でも、伸張性のトレーニングを短縮性より強い負荷で行うと筋力がより大きく増え、伸張性のトレーニングによる筋力の増加は、収縮様式と速さに対する特異性が強いとされています。

大腿四頭筋を12週間、伸張性または短縮性だけで鍛えた後の筋力の変化の棒グラフ。伸張性で鍛えた群は伸張性の筋力が46%、短縮性の筋力が5%増えた。短縮性で鍛えた群は短縮性の筋力が13%、伸張性の筋力が10%増えた。鍛えたのと違う様式での変化は統計的に有意ではなかった

図5 鍛えた収縮様式と、測った収縮様式による筋力の変化(Hortobágyiら 1996をもとに作成)。大腿四頭筋を、等速性の機器で片脚だけ最大の力で12週間鍛えた。*は前後の変化が統計的に有意(P<0.05)、n.s.は有意でない(P>0.05)ことを示し、短縮性の筋力13%の有意性は抄録に記載がない。濃い棒が、鍛えたのと同じ収縮様式で測った筋力

筋力の伸びが、鍛えたのと同じ様式や角度で測ったときに最も大きいことは、これらの研究で一致しています。患者さんの動作のどこで、どの収縮様式の力が足りないのかを見極め、それに近い条件で鍛えることには根拠があります。ただし、伸び方の違いの大きさは条件によって違い、長く伸びた角度での等尺性トレーニングのように、ほかの動きにも効果が移りやすい方法もあります。

臨床で伸張性収縮を使う

伸張性収縮の「大きな力を、少ないエネルギーで出せる」という性質は、リハビリテーションにも使われています。Alfredsonら(1998)は、従来の保存療法では治らなかった慢性のアキレス腱症をもつ、趣味でスポーツをする15人(平均44.3歳)に、重い負荷でふくらはぎの筋を伸張性に働かせるトレーニングを12週間行ってもらいました。12週間後には15人全員が、けが以前と同じように走れるようになりました。同じ診断で従来の治療を受けていた別の15人では、治療がうまくいった人はおらず、全員が最終的に手術を受けていました。ただし、2つの群はランダムに分けられたものではありません。

LaStayoら(2003)は、平均80歳の虚弱な高齢者21人を、伸張性収縮で負荷をかける専用のエルゴメーターで運動する群と、ふつうの重りを使った筋力トレーニングを行う群に分け、11週間の運動を行いました。伸張性の群の人たちは、運動を比較的楽だと感じ、筋肉痛も軽く一時的でした。筋線維の太さはどちらの群でも増えましたが、筋力(60%)、バランス(7%)、階段を下りる能力(21%)が有意に改善したのは伸張性の群だけで、転倒の危険が高い状態から低い状態へ移ったのも伸張性の群だけでした。対象は虚弱な高齢者ですが、膝の手術を受けた患者さんが怖いと言った「階段を下りる」動作が、伸張性収縮の運動で改善した例です。

スポーツでは、ハムストリングスを伸ばされながら働かせるノルディックハムストリングエクササイズが、肉離れの予防に使われています。オランダの男子アマチュアのサッカー選手579人を対象にしたランダム化比較試験では、13週間に25回この運動を行うよう指示した群の肉離れの発生率は、1,000時間あたり0.25件で、行わなかった群の0.8件より有意に低くなりました。ただし、けがの重さは変わりませんでした(van der Horstら 2015)。ハムストリングスの肉離れについては「ハムストリングスの機能と役割」でくわしく紹介しています。

まとめ

筋の収縮とは、筋が活動して力を出すことで、縮むとは限りません。筋が出す力より負荷が小さければ筋は縮む短縮性収縮に、釣り合えば長さが変わらない等尺性収縮に、負荷のほうが大きければ筋が力を出したまま伸ばされる伸張性収縮になります。「収縮しているのに筋が伸びる」のは、筋が力を出していても、それを上回る負荷がかかっているからです。そして、伸ばされながら力を出すとき、筋は縮むときより大きな力を、少ないエネルギーで出せます。そのしくみには架け橋の性質が関わり、タイチンも関わっていると考えられています。その代わり、慣れない伸張性の運動は筋肉痛を起こしやすくなります。等尺性、等張性といった名前は、関節の動きや負荷の条件を表したもので、筋線維そのものの動きや張力とは一致しないことがあります。2台の自転車をつないだ実験から70年余りたった今も、伸張性収縮のしくみの研究は続いています。

背中合わせの自転車で、小柄なBiglandが大柄なRitchieの力を受け止めた実験は、伸ばされながら力を出す筋が、同じ仕事を数分の1の酸素でこなすことを目に見える形にしました。超音波で筋束の長さを直接追えるようになると、足首を固定した等尺性収縮でも筋束が90 mmから76 mmへ縮むこと、階段を下りる腓腹筋では、筋と腱を合わせた長さが伸びている局面で筋束が縮んでいることがわかりました。「等尺性」「伸張性」という名前は、関節の角度や、筋と腱を合わせた長さという、外から見える変化を表したものだったのです。膝の手術を受けた患者さんが階段を下りるとき、大腿四頭筋の筋線維がどう動いているかも、同じように見て確かめなければわかりません。

ほかの運動療法の考え方は「運動療法学(関連記事一覧)」で紹介しています。

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参考文献

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Charcot

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