2標本t検定(対応のないt検定):等分散を確かめる必要はあるか

2標本t検定(対応のないt検定):等分散を確かめる必要はあるか

t検定のもとになった1908年の論文で、筆者の「Student」、つまりギネスのビール工場で働いていた化学者のGossetは、自分の導いた曲線を手作業で確かめています。犯罪者3,000人の身長と左手の中指の長さを書いたカードをよく混ぜ、4枚ずつ取り出して750組の標本を作り、その平均と標準偏差のふるまいを調べたのです(Student 1908)。この論文が扱ったのはごく少ない標本の平均で、別々の人の2つの群を比べる例は1つもありませんでした。

卒業研究で、回復期病棟に入院している患者さんを2つのグループに分けて退院時の歩行速度を比べるときは、SPSSで2標本t検定を実行します。結果の表には「等分散を仮定する」と「等分散を仮定しない」の2行が並びます。教科書には、まずLeveneの検定で2つの群のばらつきが等しいかを調べ、等しければ上の行、等しくなければ下の行を読むと書かれていました。この手順は正しいのでしょうか。

2標本t検定の要点

  • 何を調べるか:対応のない2つの群の平均の差を、差の標準誤差、つまり平均の差が偶然にどれくらいぶれるかの目安で割ったt値で調べる。同じ人を2回測ったデータには、対応のあるt検定を使う
  • 生まれた経緯:1908年にStudent(Gosset)が小さな標本で平均を扱う方法を示し、1925年にFisherが2つの標本の平均の比較へ広げて教科書の形にした。Fisherの方法は、2つの群の分散が等しいことを前提にしている
  • 修正された考え方:Leveneの検定で分散が等しいかを確かめてからStudentの方法とWelchの方法を選ぶ2段階の手順では、差がないのに有意と判定する誤りの割合を確実には守れない。現在は、初めからWelchの方法を使うことが勧められている
  • 正規分布との関係:ある程度の人数があれば、t検定は正規分布から外れたデータにも強い。Mann-WhitneyのU検定は平均を比べる検定ではないので、正規分布かどうかではなく、何を比べたいかで選ぶ
  • 結果の示し方:p値だけでなく、平均の差とその95%信頼区間、効果量を示す。同じ方法で求めた差の95%信頼区間が0を含まないことと、有意水準5%の両側検定で有意であることは、同じことを表している

2標本t検定とは:平均の差を、そのぶれの大きさで割る

2標本t検定は、対応のない2つの群で、ある量の平均に差があるかを調べる方法です。対応がないとは、2つの群が別々の人からなり、片方の群のある人の値が、もう片方の群の特定の人の値と組になっていないことを指します。同じ患者さんの治療前と治療後のように、同じ人を2回測った値を比べるときは、対応のあるt検定を使います(くわしくは「対応のあるt検定」)。

2つの群の平均が違っていても、それだけでは差があるとは言えません。同じ集団から人を選び直すと、選ばれた人によって平均は少しずつ変わるからです。そこで、平均の差を、差の標準誤差で割った値を使います。標準誤差は、同じ人数で何度も調べ直したときに平均の差がどれくらいぶれるかを表す量で、各群の値のばらつきが大きいほど、また人数が少ないほど大きくなります。この比がt値で、t値の絶対値が大きいほど、偶然のぶれだけでは説明しにくい差だということになります。p値は、本当は差がない、つまり2つの母集団の平均が等しいと仮定したときに、向きを問わず観察された差と同じかそれ以上の差が偶然に生じる確率です(検定のしくみは「研究と統計学の関係性:統計的仮説検定」)。

t検定は平均を比べるので、平均に意味のある量、つまり間隔尺度や比率尺度のデータに使います(くわしくは「統計データの尺度水準」)。順序尺度の項目を合計した得点を平均で比べることもあり、Norman(2010)は、1930年代からの多くの研究が、パラメトリックな統計はこうした前提からの外れに対して頑健だと示してきたと述べています。一方、選択肢の少ない1つの順序尺度の項目を比べるときは、順位に基づく方法を使うことも少なくありません。

2標本t検定は、ランダム化比較試験だけでなく、別々の人の2群を比べる観察研究にも使われます。たとえば、脳卒中で片麻痺のある入院患者22人と健康な高齢者24人の歩き方を比べたHidaら(2025)は、対応のないt検定で群の差を調べています。一方、ランダム化比較試験で介入前の値も測っている場合は、介入後の値だけをt検定で比べるより、介入前の値で調整する共分散分析が勧められています(VickersとAltman 2001)。

1908年:小さな標本の平均をどう扱うか

t検定のもとになった論文は、1908年に学術誌『Biometrika』に「Student」という筆名で発表されました(Student 1908)。書いたのは、アイルランドのダブリンにあるギネスのビール工場で働いていた化学者、William Sealy Gossetです。Raju(2005)は、会社が科学者に機密のデータの公表を認めていなかったため、筆名を選んだと説明しています。

Studentが問題にしたのは、標本、つまり調べるために選んだ一部の人や物がごく少なく、その標本自体がばらつきを知る唯一の手がかりになる場合でした。標本から求めた標準偏差を母集団の値とみなして正規分布の表を使うと、数個しか測れないときには、標準偏差そのものが大きくぶれるぶん誤りが大きくなります。Studentは論文のはじめに、化学の実験の一部、生物学の実験の多く、農業や大規模な実験のほとんどがこうした場合に当たると書き、どこまでなら正規分布の表を使ってよいのかを明らかにすることを目的に掲げました。論文の例には、睡眠薬の効果のデータや、大麦などの栽培試験のデータが使われ、ビールや醸造には触れていません。

Studentは数学的な証明を完成させられず、一般的な証明への道筋が見えていないと論文の中で認めています。そこで、手作業のシミュレーションで確かめました。犯罪者3,000人の身長と左手の中指の長さを書いたカードをよく混ぜ、4枚ずつ取り出して750組の標本を作り、その平均と標準偏差のふるまいが自分の導いた曲線と合うかを調べたのです。用意した表は、標本の大きさが10までのものでした。

この論文の例の1つに、のちに有名になる睡眠のデータがあります。10人の患者さんで、2種類の睡眠薬を使ったときに、使わないときより睡眠時間が何時間増えたかを測ったもので、もとはCushnyとPeebles(1905)が報告したデータです。Studentは2つの薬を比べるのに、患者さんごとに2つの薬の差をとり、その差の平均を調べました。同じ患者さんが両方の薬を使っているので、これは今でいう対応のあるt検定です(図1A)。別々の人の群を比べる例は、この論文には1つもありません。StudentとFisherがこの試験の内容を誤って引用していたことも、のちに指摘されています(SennとRichardson 1994)。

Studentの式は、今のt値とは少し違いました。Studentが使ったのは、標準偏差を人数nで割って求め、その標準偏差で平均を割ったzという量でした。論文に書かれた差の標準偏差1.17は、nで割った値と一致します。これを、n−1で割った標準偏差と自由度を使う今のt値の形で示したのは、次に登場するFisherです。

Studentの睡眠のデータを2通りに比べた図。Aでは10人の患者さんごとに薬1と薬2の睡眠時間の増加を線で結び、ほとんどの人で薬2のほうが大きい。対応のあるt検定でp=0.003。Bでは同じ値を別々の2群として並べ、平均は薬1が0.75時間、薬2が2.33時間で、対応のないt検定ではp=0.079

図1 Studentの睡眠のデータを、患者さんごとに比べた場合(A)と、別々の群として比べた場合(B)。値は10人の患者さんの、睡眠薬を使わないときと比べた睡眠時間の増加(CushnyとPeebles 1905のデータで、Student 1908に掲載。数値は統計ソフトRに収録されたデータによる)。p値は今の方法で計算し直した値。Fisher(1925)は、Bのように扱うとpが0.1と0.05のあいだになると示した

1925年:Fisherが2つの標本の比較へ広げた

英国の統計学者Ronald A. Fisherは、1925年の著書『Statistical Methods for Research Workers』で、Studentの分布を、標準偏差をn−1で割り、自由度を使って表を引く形で示しました(Fisher 1925)。自由度は、標準偏差の推定に使える独立な値の数です。Fisherはさらに、Studentの方法を2つの標本の平均の比較へ広げられると書き、2つの群の偏差の2乗の和を合わせて1つの標準偏差を求める方法を示しました。これが、今の2標本t検定、つまりStudentのt検定の形です。2つの群の人数をn₁、n₂とすると、自由度はn₁+n₂−2になります。

Fisherは同じ本で、Studentの睡眠のデータを、別々の患者さんの2つの群から得たものとして計算し直してみせました。結果は、pが0.1と0.05のあいだで、有意とは言えないというものでした。計算すると、患者さんごとの差で調べればp=0.003なのに、別々の群として扱うとp=0.079になります(図1B)。2つの薬による睡眠時間の増加の相関係数は0.80で、よく眠れるようになった人はどちらの薬でもよく眠れる傾向がありました。患者さんごとに差をとると、この個人差が打ち消されるので、差のぶれが小さくなります。Fisherはこの例から、小さな実験では計画が大事だと結論しています。対応のあるデータを対応のない方法で分析すると、見つけられるはずの差を見逃しやすくなるのです。

「2つの群のばらつきは等しい」という前提

Fisherの2標本t検定には、1つの前提が組み込まれています。2つの群の値を合わせて1つの標準偏差を求めるので、2つの母集団のばらつき、つまり分散が等しいことを前提にしているのです。分散は、値が平均のまわりにどれくらい散らばっているかを表す量で、標準偏差の2乗にあたります。1925年のFisherの本の2標本の比較の部分は、2つの母集団の分散が違う場合に何が起きるかを論じていません。

分散が等しいとは限らない2つの平均をどう比べるかは、Behrens-Fisher問題と呼ばれ、Fisher自身も1939年に「分散が等しくないかもしれない標本の比較」という論文で論じています(Fisher 1939)。実用的な答えになったのは、別の研究者が示した近似の方法でした。

Welchの方法:分散が違っても使えるt検定

分散が等しくない場合に使える近似の方法を示したのが、英国の統計学者Bernard L. Welchです(Welch 1938、1947)。Welchの方法では、2つの群の値を合わせず、それぞれの群の分散から差の標準誤差を求めます。そのうえで、自由度を2群の分散と人数から計算し直します。同じ形の近似は1946年にSatterthwaiteも示しています(Satterthwaite 1946)。自由度は整数にならないことがあり、SPSSの出力に143.668のような自由度が出るのはこのためです。

分散が違うのにStudentの方法を使うと、何が起きるのでしょうか。差がないのに有意と判定してしまう誤りを第1種の過誤といい、有意水準を5%にしたなら、その割合は5%に保たれるはずです。Delacreら(2017)は、人数40人と60人の2群で、一方の標準偏差を他方の2倍にして、差がないデータを100万回作って調べました。分散の大きいほうが人数の多い群だと、Studentの方法で有意となった割合は2.8%に下がり、分散の大きいほうが人数の少ない群だと8.3%に上がりました。Studentの方法は2群の分散を、それぞれの人数から1を引いた数で重みづけて合わせるので、人数の少ない群の分散が大きいと、合わせた分散が小さく見積もられて差の標準誤差が小さくなり、t値が大きく出すぎます。逆の場合はt値が小さく出ます。

図2は、同じことを人数10人と40人の2群で確かめたシミュレーションです。標準偏差を2倍違えると、Studentの方法の誤りの割合は、標準偏差の大きい群の人数が少ないときに18%、多いときに0.6%と、5%から大きく外れました。2群が25人ずつそろっていれば、標準偏差が2倍違っても5%前後に保たれました。人数がそろっていれば、Studentの方法は分散の違いに強いのです。問題になるのは、人数と分散の両方が違う場合です。Welchの方法は、どの場合も5%前後でした。

差がないデータで、Studentの方法、Welchの方法、Leveneの検定で選ぶ方法が有意と判定した割合を比べた横棒グラフ。10人と40人で標準偏差の大きい群が10人のとき18.1%、4.9%、8.2%。標準偏差の大きい群が40人のとき0.6%、5.3%、4.0%。標準偏差が等しいとき4.8%、4.9%、5.1%。25人ずつで標準偏差が2倍違うとき5.2%、5.0%、5.0%

図2 差がないデータで、誤って有意と判定した割合(この記事のために行ったシミュレーション)。正規分布から2群のデータを条件ごとに2万回作り、有意水準5%で検定した。標準偏差が違う条件では、一方の群の標準偏差を他方の2倍にした。「Leveneの検定で選ぶ」は、Leveneの検定が有意ならWelchの方法、有意でなければStudentの方法を使う手順。破線は有意水準の5%

実際の論文の数値でも、2つの方法の違いを確かめられます。先のHidaら(2025)の、足が地面から離れる瞬間の体幹の側屈角度は、片麻痺の群で−0.77±5.72°、健康な高齢者の群で2.60±1.88°と、標準偏差が約3倍違っていました。論文のp=0.009は、分散が等しいと仮定した計算と一致します。Welchの方法で計算し直すとp=0.014で、この例では結論は変わりません。人数と分散の違いが大きいほど、2つの方法の結果は離れていきます。

分散が本当に等しいときにWelchの方法を使っても、失うものはわずかです。Delacreらは、分散が等しいときにWelchの方法で失われる検出力はごくわずかだとして、Studentの方法の代わりに常にWelchの方法を使うべきだと結論しています。2022年に出された訂正でも、この結論は変わっていません(Delacreら 2022)。検出力は、本当に差があるときにそれを有意と判定できる確率です。

「Leveneの検定で選ぶ」はなぜ勧められなくなったか

そこで考えられたのが、まず2群の分散が等しいかを検定し、その結果で方法を選ぶ2段階の手順です。卒業研究で参考にした教科書の手順、つまりSPSSの出力の上の行と下の行をLeveneの検定の結果で選ぶやり方がこれに当たります。Leveneの検定は、各群の値が群の平均からどれだけ離れているかを比べて、分散の違いを調べる検定です。

しかし、この手順は第1種の過誤の割合を守れないことがわかってきました。Zimmerman(2004)はシミュレーションで、2段階の手順は有意水準を守れず、たいていは状況を悪くすると報告し、人数がそろっていないときには、事前の検定をせずに常にWelchの方法を使うことで最もよく守られると述べています。HayesとCai(2007)も、Welchの方法を含む事前の検定をしない方法が、2段階の手順と同じかそれ以上の成績だったと報告しました。図2でも、標準偏差が違う条件では、2段階の手順の誤りの割合は、Studentの方法とWelchの方法のあいだにとどまっています。

うまくいかない理由の1つは、Leveneの検定の検出力が低いことです。図2のシミュレーションでは、人数10人と40人で標準偏差が2倍違っても、Leveneの検定はその違いを29〜43%の割合で見逃しました。見逃すと「等分散」としてStudentの方法が選ばれ、そこで誤りが増えます。Leveneの検定が有意でないことは、分散が等しいことの証明にもなりません。AltmanとBland(1995)が述べたように、有意差がなかったときに示されたのは、たいていの場合、差があるという証拠がないことだけです。反対に人数が多いと、Leveneの検定は、結果に影響しないほどの小さな違いでも有意になりやすくなります。分布の形の違いにも反応します。後で見るSPSSの例(模擬データ)でも、2群の標準偏差は3.15と2.87で、比は1.1しかないのに、Leveneの検定は有意でした。

何を基準に選ぶかも一定していません。SPSSの開発元であるIBMの解説でも、例ではLeveneの検定の有意確率が0.10より大きいことを、等分散とみなす目安にしています(IBM)。基準となる値自体が決まっていないのです。現在は、分散が等しいかを事前に確かめず、初めからWelchの方法を使うことが勧められています(Delacreら 2017、West 2021)。無料の統計ソフトRでは、2標本t検定の初期設定がWelchの方法になっています(R Core Team)。

正規分布でなければMann-WhitneyのU検定か

もう1つ、データが正規分布に従わなければMann-WhitneyのU検定を使う、という手順もあります。ただし、t検定が比べているのは平均で、平均の差のぶれは、人数がある程度あれば、もとのデータが正規分布でなくても正規分布に近づきます。Lumleyら(2002)は、t検定や線形回帰は正規分布のデータにしか使えないと広く信じられているがそれは誤りで、大きな標本ではどんな分布にも使えると述べています。Rochonら(2012)のシミュレーションでも、事前の検定をしないStudentのt検定は、2群が同じ形の分布から同じ人数で得られた場合、指数分布のような偏ったデータでも、1群10〜50人で誤りの割合が4.5〜4.8%に保たれていました。

正規性の検定、つまりデータが正規分布に従うかを調べる検定(くわしくは「Shapiro-Wilk検定」)で方法を選ぶ手順にも、2段階の問題があります。Rochonらは、正規性の検定を先に行うと、その後の検定の誤りの割合が条件によって大きく変わったと報告しました。たとえば指数分布のデータで、1群30人、正規性の検定の有意水準を10%として、検定に通った場合だけを見ると、Studentのt検定の誤りの割合は17.0%でした。ただし、2段階の手順全体で見た誤りの割合と検出力は、許容できる範囲に収まっていました。Rochonらは、正規性の事前の検定は形式的には正しくないので避けるべきだとしたうえで、実用上は大きな害はなさそうで、言えるのはせいぜい必要がないということだ、と結論しています。

Mann-WhitneyのU検定は、平均を比べる検定ではありません。調べているのは、一方の群から選んだ1人の値が、もう一方の群から選んだ1人の値より大きくなりやすいかどうかで、分布の形やばらつきの違いにも反応します(Hart 2001、Fagerland 2012)。Fagerland(2012)は、大きな研究でノンパラメトリック検定を使うと、違う問いに答えてしまうことがあると注意しています(くわしくは「Mann-WhitneyのU検定」)。どちらを使うかは、正規分布かどうかではなく、平均の差を知りたいのか、どちらの群の値が大きくなりやすいかを知りたいのかで決めます(くわしくは「パラメトリック検定とノンパラメトリック検定」)。

p値と信頼区間:有意差がないことは、差がないことではない

有意水準は、データを見る前に決めておく値で、多くは5%にします。Greenlandら(2016)が述べるように、有意水準は研究計画の一部で、データを見て変えるものではありません。95%信頼区間の95%は、この有意水準5%に対応しています。同じ方法で計算していれば、差の95%信頼区間が0を含まないことと、有意水準5%の両側検定で有意になることは、同じことを表します。同じように、差の99%信頼区間が0を含まなければ、有意水準1%で有意です(信頼区間の考え方は「95%信頼区間」)。

ただし、2つの群それぞれの平均の95%信頼区間が重なっていても、差が有意でないとは限りません(CummingとFinch 2005)。判定には、差の信頼区間を使います。たとえば、平均10.0と12.3、標準偏差4、各群30人の2群では、それぞれの平均の95%信頼区間は8.5〜11.5と10.8〜13.8で重なりますが、差の95%信頼区間は0.23〜4.37で、p=0.030です(図3のAとB)。

アメリカ統計学会は2016年の声明で、p値の使い方について6つの原則を示しました(WassersteinとLazar 2016)。そのうちの3つは、p値は調べた仮説が正しい確率を表すものではないこと、結論はp値がある基準を超えたかどうかだけで決めるべきではないこと、p値や統計的有意性は効果の大きさや結果の重要性を測るものではないことです。声明は、どんなに小さな効果でも、人数や測定の精度が十分に高ければ小さなp値になりうるとも書いています。

だからこそ、平均の差とその95%信頼区間を示します。卒業研究と同じく退院時の歩行速度を比べた例として、入院してリハビリテーションを受けている60歳を超える高齢者198人を、通常のリハビリテーションに加えて立って動く身体活動を毎日行う群と、同じ時間を社会的な活動に充てる群に分けたSaidら(2018)の試験があります。退院時の歩行速度は身体活動の群で0.51 m/s、対照群で0.56 m/sで、報告された群の差は−0.06 m/s、95%信頼区間は−0.12〜0.01 m/s、p=0.096でした(図3のC)。この群の差は論文の解析による推定値で、平均の単純な差の0.05とは少し異なります。有意差はありませんが、このデータは、身体活動を加えると歩行速度が0.12 m/s遅くなることから0.01 m/s速くなることまでと矛盾しません。「効果がない」と結論するには、区間が広すぎるのです。

信頼区間の読み方を示した図。Aでは平均10.0と12.3の2群の95%信頼区間が重なっている。Bでは同じ2群の平均の差2.3の95%信頼区間が0.23から4.37で0を含まず、p=0.030。Cでは歩行速度の群の差−0.06 m/sの95%信頼区間が−0.12から0.01 m/sで0を含み、p=0.096

図3 信頼区間の読み方。AとBは、標準偏差4、各群30人と仮定した例で、各群の95%信頼区間が重なっていても、差の95%信頼区間は0を含まず、有意になることがある。Cは入院中の高齢者198人のランダム化比較試験で報告された歩行速度の群の差(Saidら 2018)。有意ではないが、区間は−0.12 m/sから0.01 m/sまで広がっている

効果量も示します。効果量は、差の大きさを単位によらない形で表した量で、2標本t検定ではCohenのdを使うことができます。dは、平均の差を2群を合わせた標準偏差で割った値です。Lakens(2013)は、効果量は研究で最も重要な結果だと述べ、Cohenが示した0.2、0.5、0.8という目安は恣意的なもので、厳密に当てはめるべきではないと注意しています。ランダム化比較試験の報告の指針であるCONSORT 2025も、結果ごとに、各群の結果と効果の推定値とその精度、たとえば95%信頼区間を示すよう求めています(Hopewellら 2025)。

SPSSでの手順

模擬データを使って、SPSSで2標本t検定を行ってみます。ある小学校の6年生150人のうち、食事指導を行った78人と行わなかった72人で、2か月後の体重を比べるとします。帰無仮説は「2群の体重の平均は等しい」、対立仮説は「2群の体重の平均は等しくない」です。

  1. 食事指導の有無(なし=0、あり=1)の列と、体重の列を作り、1人を1行に入力します。2群の体重を別々の列に並べないのがポイントです。
    SPSSのデータビューで、食事指導の有無の列に0か1を、体重の列に体重を、1人1行で入力した画面
  2. メニューから「分析」→「平均の比較」→「独立したサンプルのt検定」を選びます。SPSSのバージョンによって、メニューの名前や、Leveneの検定が初期設定で出力されるかどうかは異なります。
    SPSSのメニューで、分析、平均の比較、独立したサンプルのt検定の順に選ぶ画面
  3. 「体重」を検定変数に、「食事指導の有無」をグループ化変数に移します(図の①)。「グループの定義」を押して0と1を入力し(②)、「続行」を押します。画面の注記には「介入なし2」とありますが、この例では食事指導なしを0としています。「オプション」を押して信頼区間の割合を95%にし(③)、「続行」を押してから「OK」を押します。SPSS 27以降では、ダイアログの「効果量を推定」にチェックを入れると、Cohenのdなどの効果量とその信頼区間も出力されます(IBM)。
    独立したサンプルのt検定のダイアログで、体重を検定変数に、食事指導の有無をグループ化変数に入れ、グループの定義で0と1を、オプションで信頼区間95%を指定する手順を示した画面
  4. 結果が出力されます。主な部分を表1と表2にまとめました。
食事指導人数平均(kg)標準偏差(kg)
なし(0)7241.043.15
あり(1)7839.612.87

表1 SPSSの出力のグループ統計量(模擬データ、小数第2位までに丸めた値)

行t値(自由度)有意確率平均の差と95%信頼区間(kg)
等分散を仮定する2.920(148)0.0041.43(0.46〜2.40)
等分散を仮定しない2.909(143.668)0.0041.43(0.46〜2.41)

表2 SPSSの出力の独立サンプルの検定。上の行がStudentの方法、下の行がWelchの方法。平均の差は、食事指導なしの群からありの群を引いた値。等分散性のためのLeveneの検定はF=4.616、有意確率0.033

SPSSは、この2つの行を必ず両方出力します。ここまで見てきたように、Leveneの検定の結果で行を選ぶのではなく、初めから「等分散を仮定しない」、つまりWelchの方法の行を読みます。この例では、2群の人数がほぼそろい、標準偏差の比も1.1なので、2つの行の結果はほとんど同じで、どちらもp=0.004でした。

結果は、食事指導を行った群のほうが平均で1.43 kg軽く、その差の95%信頼区間は0.46〜2.41 kgでした。Cohenのdは0.48で、近似の計算による95%信頼区間は0.15〜0.80です。平均の差の95%信頼区間(0.46〜2.41 kg)が0を含まないことは、有意水準5%で有意であることと一致します。なお、この模擬データは2か月後の体重だけを比べています。食事指導の前の体重も測っていれば、それで調整する共分散分析のほうが適しています。

Rでは、t.test(体重 ~ 食事指導, data = データ名) でWelchの方法による2標本t検定ができます。Studentの方法を使うときは var.equal = TRUE を加えます。

結果の書き方

論文や報告書では、たとえば次のように書きます。

2か月後の体重は、食事指導を行った群(78人)で39.6±2.9 kg、行わなかった群(72人)で41.0±3.1 kgであり、食事指導を行った群のほうが平均で1.43 kg軽かった(Welchのt検定、t(143.7)=2.91、p=0.004、平均の差の95%信頼区間0.46〜2.41 kg、Cohenのd=0.48)。

平均と標準偏差、人数、平均の差とその信頼区間を示すと、どちらの群の値が大きく、差がどのくらいの大きさなのかが、読む人に伝わります。どちらの方法で検定したかも書いておきます。

まとめ

2標本t検定は、対応のない2つの群の平均の差を、その標準誤差で割ったt値で調べる方法です。1908年にStudentが小さな標本の平均を扱う方法を示し、1925年にFisherが2つの標本の比較へ広げましたが、Fisherの方法は2群の分散が等しいことを前提にしていました。分散と人数の両方が違うと、Studentの方法は誤りの割合が5%から大きく外れます。Leveneの検定で方法を選ぶ2段階の手順ではこれを防げないため、現在は初めからWelchの方法を使うことが勧められています。ある程度の人数があれば、t検定は正規分布から外れたデータにも強く、Mann-WhitneyのU検定は別の問いに答える検定です。結果は、p値だけでなく、平均の差とその95%信頼区間、効果量で示します。

1908年の論文でGossetは、犯罪者3,000人のカードを混ぜて4枚ずつ引き、750組の標本を手作業で作って、自分の導いた曲線と照らし合わせました。母集団のわかっているデータから標本を繰り返し作り、結果を数えて確かめるこの方法は、差がないデータを100万回作ったDelacreら(2017)や、条件ごとに2万回作った図2のシミュレーションでも使われています。そうした確かめ方から、分散と人数の両方が違うとStudentの方法の誤りの割合が5%から大きく外れること、Leveneの検定で行を選んでもそれを防げないことが、数字で示されました。卒業研究のSPSSの出力でも、Leveneの検定の結果を待たずに、初めから「等分散を仮定しない」、つまりWelchの行を読みます。

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参考文献

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