Mini-Mental State Examination(MMSE):23点以下なら認知症なのか

Mini-Mental State Examination(MMSE):23点以下なら認知症なのか

認知機能を短い時間で調べるMini-Mental State Examination(MMSE)を1975年に発表した論文の副題は、「臨床医のための、患者の認知の状態を段階づける実用的な方法」でした(Folsteinら 1975)。認知症を診断する検査として作られたものではありません。その後、23点以下を陽性とする区切りが広く使われるようになりました。けれども、Crumら(1993)が米国の成人1万8056人の点数を調べると、教育を受けた年数が4年以下の人では、中央値が22点と、すでに区切りより下にありました。

脳梗塞で回復期リハビリテーション病棟に入院した85歳の女性の、入院時に測ったMMSEが23点だったとしましょう。カルテには「認知症の疑い」と書かれました。女性が学校に通ったのは6年ほどだったそうです。1か月後にもう一度測ると、点数は25点でした。23点という点数は、認知症を意味するのでしょうか。2点上がったことは、認知機能が良くなったことを示しているのでしょうか。

Mini-Mental State Examinationの要点

  • 何を調べるか:時間と場所の見当識、記銘、注意と計算、再生、言語、図形の模写を、11項目、30点満点で調べる短い検査。点数が高いほど成績が良い
  • 成り立ち:1975年にFolsteinらが、臨床医が患者さんの認知の状態を短時間で数量化するための実用的な方法として発表した。認知症を診断する検査として作られたものではない
  • 点数の読み方:点数は年齢と教育歴に左右される。感度と特異度が同じくらいでも、地域で検査を受けた人では、陽性の人の多くが認知症ではないことがある。軽度認知障害は見逃しやすい
  • 変化の読み方:1〜2点の変化は、測定の誤差や練習の効果で生じうる。認知機能が正常な75歳以上の人を1.5年ごとに測った研究では、確かな変化と言えるのは2〜4点以上の変化だった
  • 著作権:MMSEは著作権のある検査で、検査用紙や項目をコピーして使うことはできない。日本では、正式な日本語版としてMMSE-Jが販売されている

MMSEとは:11項目、30点の短い検査

MMSEは、認知機能を短い時間で調べる検査です。調べる領域は、時間と場所の見当識、つまりいまがいつで、ここがどこかがわかるか、言われた言葉を覚える記銘、注意と計算、少し時間をおいて覚えた言葉を思い出す再生、言語、図形の模写で、11項目、30点満点です(図1)。点数が高いほど成績が良いことを表します。

MMSEの30点を、30個の四角で領域ごとに色分けした図。見当識が10点、記銘が3点、注意と計算が5点、再生が3点、言語が8点、図形の模写が1点

図1 MMSEの30点の内訳(Shigemoriら 2010をもとに作成)。見当識は時間と場所を合わせた点数。質問の文言と採点の規則は、正式な検査用紙と手引きで確認する

図1を見ると、30点のうち見当識が10点、言語が8点を占めることがわかります。記銘と再生を合わせた記憶は6点、図形の模写は1点です。どの領域にどれだけの点が配られているかは、どんな障害が点数に表れやすく、どんな障害が表れにくいかに関わります。

日本では、原版の出版社と契約して作られた正式な日本語版、MMSE-J 精神状態短時間検査 改訂日本版が、2019年から日本文化科学社から出版されています。出版社は、対象年齢を18〜85歳、実施時間を10〜15分としています(日本文化科学社)。MMSEには著作権があるため、質問の文言や採点の細かな規則は、正式な検査用紙と使用者の手引きで確認してください。

1975年:Folsteinらが求めた「実用的な方法」

MMSEを発表したのは、米国の精神医学の研究者Marshal F. Folstein、Susan E. Folstein、Paul R. McHughの3人です(Folsteinら 1975)。論文の副題は「臨床医のための、患者の認知の状態を段階づける実用的な方法」でした。副題が示すとおり、MMSEは、臨床医が患者さんの認知の状態を段階づけて数量化するための実用的な方法として作られました。PubMedで論文につけられた索引語には、認知症のほか、うつ病、統合失調症、アルコールや薬物などの物質に関連する障害、頭部外傷、成人、中年などが並んでおり、対象が認知症の高齢者に限られていなかったことがうかがえます。

数量化できると、同じ患者さんをくり返し測って経過を追えるようになります。26年分の研究をまとめたTombaughとMcIntyre(1992)は、MMSEは、認知障害の重さを数量的に評価し、時間とともに起きる変化を記録する短いスクリーニング検査という、もともとの目的を果たしてきたと評価しています。その一方で、MMSEだけで認知症を診断する道具として使うべきではないとも述べています。

「23点以下」という区切り

MMSEは、認知症を見つけるためのふるい分け、つまりスクリーニングの検査として広く使われるようになりました。23点と24点のあいだに置き、23点以下を陽性とする区切りは、日本の研究でも伝統的な区切りとして扱われています(Sakumaら 2017)。

ところが、区切りで分けた結果をそのまま診断として読むと、誤りが生まれます。Anthonyら(1982)は、一般内科の病棟の患者さんにMMSEを行い、精神科医が標準化された方法で下した診断と比べました。MMSEは、認知症やせん妄の患者さんの87%を陽性とし、そうでない人の82%を陰性としました。しかし、陽性と判定された人のうち39%は、精神科医の診断では認知症でもせん妄でもありませんでした。この誤った陽性の人は全員、教育を受けた年数が9年未満で、60歳以上の人が多くいました。Anthonyらは、MMSEは後でくわしい診断の手順がとれるときのスクリーニングとして価値があるが、MMSEだけで診断はできないと結論しています。

点数は教育歴と年齢で変わる

1つの区切りを誰にでも当てはめる考え方には、点数がその人の認知機能だけで決まるという前提があります。この前提は、地域の住民を対象にした大きな調査で、はっきりと崩れました。Crumら(1993)は、1980〜1984年に米国の5つの地域で行われた調査で、無作為に抽出された成人1万8056人のMMSEを調べました。点数の中央値は、18〜24歳では29点、80歳以上では25点でした。教育を受けた年数で分けると、9年以上では29点、5〜8年では26点、0〜4年では22点でした(図2)。教育を受けた年数が4年以下の人では、集団の真ん中にあたる人の点数が、すでに23点以下だったのです。

米国の成人1万8056人のMMSEの点数の中央値を示した棒グラフ。Aは教育を受けた年数別で、0から4年は22点、5から8年は26点、9年以上は29点。Bは年齢別で、18から24歳は29点、80歳以上は25点。23点と24点のあいだに区切りの線を引いている

図2 教育を受けた年数と年齢による、MMSEの点数の中央値(Crumら 1993をもとに作成)。1980〜1984年の米国の地域調査で、無作為に選ばれた成人1万8056人のデータ。破線は23点以下を陽性とする区切り

カルテに「認知症の疑い」と書かれた85歳の女性の23点を、図2に重ねてみます。23点以下を陽性とする区切りでは陽性です。しかし、80歳以上の人の中央値は25点、教育を受けた年数が5〜8年の人の中央値は26点で、学校に通ったのが6年ほどの女性の23点は、どちらよりも低い値です。ただし、これは年齢と教育歴を別々に見た値で、高齢で教育を受けた年数も短い人たちの中央値はさらに低いと考えられます。日本の地域調査でも、年齢が高く教育を受けた年数が短い人ほど、点数のばらつきが大きくなっていました(Sakumaら 2017)。Anthonyら(1982)の研究で誤って陽性とされた人も、全員が、教育を受けた年数が9年未満でした。23点という点数だけで、この女性を認知症とは言えません。

TombaughとMcIntyre(1992)も、点数は年齢、教育歴、文化的な背景に影響され、性別には影響されないとまとめています。同じレビューは、MMSEの項目は言葉に頼るものが多く、すべての項目が認知障害を同じようにとらえるわけではないこと、言語の項目はやさしく、軽い言語の障害を見つけるのには向かないことも指摘しました。中等度から重度の障害をとらえる感度は高い一方、軽い障害をとらえる感度は低かったのです。

軽い障害が見逃されやすいことは、のちに別の検査と比べることで数字になりました。軽度認知障害、つまり認知機能の低下はあるが日常生活はおおむね自立している状態の人を見つけるために作られたMontreal Cognitive Assessment(MoCA)の研究では、MMSEで26点を区切りとすると、軽度認知障害の人のうち陽性になったのは18%だけでした。同じ人たちで、MoCAは90%を陽性としました(Nasreddineら 2005)。満点やその近くに多くの人が集まってしまい、その人たちのあいだの違い、たとえば健常と軽い障害の違いを区別できない現象を天井効果といいます。発症から間もない、中央値で8.5日の軽症の脳卒中で、入院してリハビリテーションを受けていた72人を調べた研究でも、MMSEはMoCAより天井効果が大きく、MMSEは27点、MoCAは26点を区切りとして、認知障害ありと分類された人はMMSEで63%、MoCAで89%でした(Togliaら 2011)。

点数の意味は、使う場面で変わる

MMSEがどれだけ正しく認知症を見つけるかは、多くの研究で調べられてきました。地域とプライマリケアの研究をまとめたコクランの系統的レビューのうち、それまで認知症の検査を受けたことのない地域の65歳以上の人の研究では、24点を区切りとした場合の感度は0.85、特異度は0.90でした。25点を区切りとすると、感度は0.87、特異度は0.82でした。教育歴で正確さの推定を調整した7件の研究では、感度0.97、特異度0.70でした(Creavinら 2016)。感度は認知症の人のうち陽性と出る人の割合、特異度は認知症でない人のうち陰性と出る人の割合です(くわしくは「感度と特異度」)。このレビューは、MMSEだけで認知症があると確定したり、ないと判断したりすべきではないと結論しています。

臨床で知りたいのは、むしろ陽性と出た人が本当に認知症である確率、つまり陽性的中率です。陽性的中率は、感度と特異度が同じでも、検査を受ける人の中に認知症の人がどれだけいるかで大きく変わります。Mitchell(2009)のメタ分析では、もの忘れ外来でのMMSEの陽性的中率は86.3%でしたが、地域の住民では34.5%でした(図3)。地域では、陽性と出た人の3人に2人は認知症ではなかったことになります。反対に、陰性と出た人が本当に認知症でない確率、陰性的中率は、地域では98.5%と高く、MMSEは地域では認知症を見つけるよりも、ないと判断するほうに向いていました。ただし、もともと認知症の人が少ない集団では、検査をしなくても陰性的中率は高くなりやすいことに注意が要ります。

MMSEの感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を、もの忘れ外来と地域の住民で比べた横棒グラフ。もの忘れ外来は感度79.8%、特異度81.3%、陽性的中率86.3%、陰性的中率73.0%。地域の住民は感度85.1%、特異度85.5%、陽性的中率34.5%、陰性的中率98.5%

図3 検査を使う場面による、MMSEの成績の違い(Mitchell 2009のメタ分析をもとに作成)。感度と特異度は2つの場面で大きくは違わないが、陽性的中率は認知症の人の割合が低い地域で大きく下がる

この違いが生まれるしくみは、人数で考えるとわかります。コクランのレビューの感度0.85と特異度0.90を使い、認知症の人が10%いる1000人に検査をしたと考えてみます。認知症の100人のうち85人が陽性になり、認知症でない900人のうち90人も陽性になります。陽性の175人のうち認知症の人は85人で、半分を下回ります。認知症の人が30%いる集団で同じ計算をすると、陽性の人のうち認知症の人は約8割になります。陽性の中に紛れこむ認知症でない人の数は、認知症でない人の多さに比例するからです。

軽度認知障害の人が将来認知症になるかを予測できるかも調べられています。11件の研究、1569人をまとめたコクランのレビューでは、認知症への移行を予測する感度は23〜76%、特異度は40〜94%と研究によって大きくばらつき、MMSEを単独で1回だけ行う検査として、予測に大きな役割を果たすことを支持する根拠は見つかりませんでした(Arevalo-Rodriguezら 2021)。

著作権:自由にコピーできる検査ではなかった

MMSEは長いあいだ、教科書や手帳に載り、自由にコピーされて使われてきました。しかし、著者らは著作権を手放していませんでした。FeldmanとNewman(2013)によれば、著者らは2000年に、自分たちが設立した会社に著作権を移し、2001年には米国の出版社Psychological Assessment Resources(PAR)が、MMSEを出版し使用を許諾する独占的な権利を得ました。PARは2010年に改訂版のMMSE-2を出しました。2013年の論文の時点で、正式なMMSEの検査用紙を1回分1.23ドルで販売しており、独占的な権利を行使するようにもなりました。その結果、MMSEは医学の教科書や手帳の最新版から姿を消したといいます。自由に使える認知機能検査として発表されたSweet 16は(Fongら 2011)、発表からまもなく、PARからの申し入れを受けて著者らのウェブサイトから取り下げられました。FeldmanとNewmanは、こうした権利の主張がどこまで法的に有効かには議論があるとしています(FeldmanとNewman 2013)。

著作権が守るのは、考え方ではなく、具体的な表現です(FeldmanとNewman 2013)。見当識や記憶を調べるという考え方は自由に使えますが、MMSEの質問の文言や検査用紙をそのまま複製することはできません。日本で使う場合は、正式な日本語版であるMMSE-Jの検査用紙と手引きを購入して使います。2015年のメタ分析は、MMSEを権利で保護された有償の検査と位置づけたうえで、Mini-CogやACE-Rの成績はMMSEと同程度だったと報告し、正確さの面での代わりの選択肢として挙げています(Tsoiら 2015)。ほかの検査にもそれぞれ使用の条件があるので、使う前に確かめます。

日本語版の標準化:MMSE-J

日本では、以前からいくつかの日本語訳が使われてきましたが、MMSE-Jの作成者らは、それまでの日本語版の多くには翻訳と文化への適応に問題があり、十分に標準化されていなかったと述べています。MMSE-Jは、原版に忠実な翻訳と、日本の文化への適切な適応を目標に2006年に作られ、J-ADNIというアルツハイマー病の研究で使われました(杉下ら 2018)。

MMSE-Jの妥当性を最初に報告した2010年の論文は、J-ADNIのデータに改ざんや研究計画違反、またはその疑いのある例が見つかったことを受けて、著者らの申し出により2014年に取り下げられました。著者らは2016年に、もとの313人から問題のある例を除いた251人のデータで解析し直し、健常者と軽度認知障害の人を合わせた群とアルツハイマー病の人を分ける場合に、注意の課題を計算で行う版で23点以下を陽性とすると、感度は0.86、特異度は0.89だったと報告しています。ただし、比べる基準となった診断が、MMSE-Jの点数から完全には独立していなかったことも、論文の中で述べています(杉下ら 2016)。

2018年には、新たに集めたデータ、解析の対象は379人で、標準化の研究が報告されました。健常者と軽度認知障害の人を分ける区切りは27点と28点のあいだで、感度は83.9%、特異度は83.5%でした。軽度認知障害の人と軽いアルツハイマー型認知症の人を分ける区切りは23点と24点のあいだで、感度は68.7%、特異度は78.8%でした。健常者では、教育を受けた年数が短いほど、また年齢が高いほど点数が低く、性別による違いはありませんでした(杉下ら 2018)。東京の都市部に住む65歳以上の1319人を調べた研究では、点数の中央値は28点で、10.8%が23点以下でした。この研究でも、年齢が若く、教育を受けた年数が長いほど点数が高いことが確かめられています(Sakumaら 2017)。

日本の臨床では、MMSEのほかに、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMoCAの日本語版(MoCA-J)もよく使われます。3つの検査の違いを表1にまとめました。

検査満点と区切りの例特徴
MMSE-J30点。健常と軽度認知障害は27点と28点の間、軽度認知障害と軽いアルツハイマー型認知症は23点と24点の間11項目。図形の模写など、書く課題を含む
HDS-R30点。20点と21点の間で感度0.90、特異度0.829項目。質問に口頭で答える形式
MoCA-J30点。軽度認知障害は25点と26点の間で感度93.0%、特異度87.0%軽度認知障害を見つけるために作られた

表1 日本でよく使われる3つの認知機能検査(MMSE-Jは杉下ら 2018、HDS-RはImaiとHasegawa 1994、MoCA-JはFujiwaraら 2010をもとに作成)。区切りの値は、それぞれの研究の対象と目的で求められたもの

MoCA-Jの研究では、軽度認知障害の人を見分ける力を表すROC曲線下面積、つまり0.5なら偶然と同じで、1に近いほど見分ける力が高い指標は、MoCA-Jが0.95、MMSEが0.85、HDS-Rが0.86でした(Fujiwaraら 2010)。軽度認知障害が疑われる人では、MMSEよりもMoCA-Jのほうが目的に合っています。

点数を臨床でどう使うか

いまの臨床では、MMSEは診断ではなくスクリーニングと経過の記録に使い、点数は年齢と教育歴を考えて読みます。経過を追うときも、短い期間の小さな変化は誤差の範囲と考えます。23点以下でも認知症とは限らず、24点以上でも軽度認知障害や軽い認知症がないとは言えません。点数が低いときは、生活の中での困りごと、家族の話、ほかの検査、専門医の診察をあわせて判断します(認知症のリハビリテーションについては「認知症とリハビリテーション」)。

検査の手順をそろえることも大切です。実施と採点の手順をくわしく定めた標準化版を、もとのMMSEと比べた研究では、標準化版では、同じ検査者がくり返したときのばらつきが86%、検査者どうしのばらつきが76%小さく、検査の結果の一致の度合いを表す級内相関係数は、もとのMMSEの0.69に対して、標準化版では0.90でした(Molloyら 1991)。MMSE-Jでも、使用者の手引きに沿って実施します。

点数の変化を読むときは、測定の誤差を考えます。75歳以上の認知機能が正常な119人を1.5年ごとに6回測った研究では、90%の信頼水準で本当の変化と言えるのは、2〜4点以上の変化でした。著者らは、小さな変化は測定の誤差、平均への回帰、練習の効果で生じうると述べています(Henselら 2007)。平均への回帰とは、たまたま低く、または高く出た人は、次に測ると平均に近づきやすい現象です。アルツハイマー型認知症の372人を追った研究では、1年間の平均の低下は3.4点で、測定の誤差の標準偏差2.8点に近く、3年未満の期間で1人の進行を測るには限界がありました(Clarkら 1999)。

この85歳の女性の点数が1か月で23点から25点に上がったことも、それだけでは良くなったとは言えません。2点は、確かな変化と言えるかどうかの境目にあたり、測定の誤差、平均への回帰、同じ検査をくり返したことによる練習の効果でも生じうる大きさです。女性は入院時の点数が低かったために注目されたので、次に測ったときに点数が上がるのは、平均への回帰でも予想されることです。しかも2〜4点という基準は1.5年おきの測定で求められたもので、1か月おきの再検査では、練習の効果がより大きく出るかもしれません。脳卒中の発症から間もない時期には、脳卒中からの回復で点数が上がることもありえます。良くなったと判断するには、もう一度測って同じ方向の変化が続くかを確かめ、日常生活の様子など、ほかの情報と合わせて考えます。

脳卒中の患者さんでは、障害の種類によって点数が下がる理由が違います。MMSEは言葉に頼る項目が多いので(TombaughとMcIntyre 1992)、失語症があると、記憶や見当識が保たれていても点数が下がりえます。利き手に麻痺があれば、書く課題や図形の模写で点を失うこともありえます。点数だけでなく、どの領域で点を失ったかを見ておくと、認知機能の低下と、言葉や手の障害を区別する手がかりになります。女性のカルテにある「認知症の疑い」という記載も、くわしい評価が必要だという意味に読み、失語症や利き手の麻痺の影響、生活の中での様子、発症前の状態をあわせて確かめます。

まとめ

MMSEは、1975年にFolsteinらが、臨床医が患者さんの認知の状態を短時間で数量化するための方法として発表した、11項目、30点満点の検査です。その後、23点以下を陽性とする区切りが広く使われてきましたが、点数は年齢と教育歴に左右され、軽い障害には感度が低いことがわかりました。感度と特異度が同じくらいでも、陽性的中率は検査を使う場面によって大きく変わり、地域では陽性の人の3人に2人が認知症ではありませんでした。MMSEは著作権のある検査で、日本では正式な日本語版MMSE-Jが標準化されています。いまの臨床では、MMSEをスクリーニングと経過の記録に使い、年齢と教育歴、測定の誤差を考えて点数を読み、軽度認知障害が疑われるときはMoCA-Jなどを選びます。

Anthonyら(1982)は、一般内科の病棟の患者さんのMMSEの結果を、精神科医の診断と1人ずつ照らし合わせました。その結果、陽性と判定された人の39%は認知症でもせん妄でもなく、その全員が、教育を受けた年数が9年未満だったことがわかりました。Crumら(1993)が地域の住民1万8056人の点数を年齢と教育歴ごとに並べると、教育を受けた年数が4年以下の人たちでは、区切りより下の点数が、その集団の真ん中にあたる人の点数でした。回復期リハビリテーション病棟に入院した女性の23点も、85歳で学校に通ったのは6年ほどという背景と、入院時に測った1回目の点数だという事情を添えて読むことになります。

評価の記事は「評価の特徴や方法(評価指標一覧)」にまとめています。

さらに学びたい人へ:おすすめの本

参考文献

  1. Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR. "Mini-mental state". A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician. J Psychiatr Res. 1975;12(3):189-198. doi:10.1016/0022-3956(75)90026-6
  2. Crum RM, Anthony JC, Bassett SS, Folstein MF. Population-based norms for the Mini-Mental State Examination by age and educational level. JAMA. 1993;269(18):2386-2391.
  3. Shigemori K, Ohgi S, Okuyama E, Shimura T, Schneider E. The factorial structure of the Mini-Mental State Examination (MMSE) in Japanese dementia patients. BMC Geriatr. 2010;10:36. doi:10.1186/1471-2318-10-36
  4. 日本文化科学社. MMSE-J 精神状態短時間検査 改訂日本版 [Internet]. [cited 2026 Oct 18]. Available from: https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/mmse_j.html
  5. Tombaugh TN, McIntyre NJ. The mini-mental state examination: a comprehensive review. J Am Geriatr Soc. 1992;40(9):922-935. doi:10.1111/j.1532-5415.1992.tb01992.x
  6. Sakuma N, Ura C, Miyamae F, Inagaki H, Ito K, Niikawa H, et al. Distribution of Mini-Mental State Examination scores among urban community-dwelling older adults in Japan. Int J Geriatr Psychiatry. 2017;32(7):718-725. doi:10.1002/gps.4513
  7. Anthony JC, LeResche L, Niaz U, von Korff MR, Folstein MF. Limits of the 'Mini-Mental State' as a screening test for dementia and delirium among hospital patients. Psychol Med. 1982;12(2):397-408. doi:10.1017/s0033291700046730
  8. Nasreddine ZS, Phillips NA, Bédirian V, Charbonneau S, Whitehead V, Collin I, et al. The Montreal Cognitive Assessment, MoCA: a brief screening tool for mild cognitive impairment. J Am Geriatr Soc. 2005;53(4):695-699. doi:10.1111/j.1532-5415.2005.53221.x
  9. Toglia J, Fitzgerald KA, O'Dell MW, Mastrogiovanni AR, Lin CD. The Mini-Mental State Examination and Montreal Cognitive Assessment in persons with mild subacute stroke: relationship to functional outcome. Arch Phys Med Rehabil. 2011;92(5):792-798. doi:10.1016/j.apmr.2010.12.034
  10. Creavin ST, Wisniewski S, Noel-Storr AH, Trevelyan CM, Hampton T, Rayment D, et al. Mini-Mental State Examination (MMSE) for the detection of dementia in clinically unevaluated people aged 65 and over in community and primary care populations. Cochrane Database Syst Rev. 2016;2016(1):CD011145. doi:10.1002/14651858.CD011145.pub2
  11. Mitchell AJ. A meta-analysis of the accuracy of the mini-mental state examination in the detection of dementia and mild cognitive impairment. J Psychiatr Res. 2009;43(4):411-431. doi:10.1016/j.jpsychires.2008.04.014
  12. Arevalo-Rodriguez I, Smailagic N, Roqué-Figuls M, Ciapponi A, Sanchez-Perez E, Giannakou A, et al. Mini-Mental State Examination (MMSE) for the early detection of dementia in people with mild cognitive impairment (MCI). Cochrane Database Syst Rev. 2021;7(7):CD010783. doi:10.1002/14651858.CD010783.pub3
  13. Feldman R, Newman J. Copyright at the bedside: should we stop the spread? Stanf Technol Law Rev. 2013;16(3):623-655.
  14. Fong TG, Jones RN, Rudolph JL, Yang FM, Tommet D, Habtemariam D, et al. Development and validation of a brief cognitive assessment tool: the sweet 16. Arch Intern Med. 2011;171(5):432-437. doi:10.1001/archinternmed.2010.423
  15. Tsoi KK, Chan JY, Hirai HW, Wong SY, Kwok TC. Cognitive tests to detect dementia: a systematic review and meta-analysis. JAMA Intern Med. 2015;175(9):1450-1458. doi:10.1001/jamainternmed.2015.2152
  16. 杉下守弘, 腰塚洋介, 須藤慎治, 杉下和行, 逸見功, 唐澤秀治, ほか. MMSE-J(精神状態短時間検査-日本版)原法の妥当性と信頼性. 認知神経科学. 2018;20(2):91-110. doi:10.11253/ninchishinkeikagaku.20.91
  17. 杉下守弘, 逸見功, 竹内具子. 精神状態短時間検査-日本版(MMSE-J)の妥当性と信頼性に関する再検討. 認知神経科学. 2016;18(3+4):168-183. doi:10.11253/ninchishinkeikagaku.18.168
  18. Imai Y, Hasegawa K. The Revised Hasegawa's Dementia Scale (HDS-R): evaluation of its usefulness as a screening test for dementia. J Hong Kong Coll Psychiatr. 1994;4(SP2):20-24.
  19. Fujiwara Y, Suzuki H, Yasunaga M, Sugiyama M, Ijuin M, Sakuma N, et al. Brief screening tool for mild cognitive impairment in older Japanese: validation of the Japanese version of the Montreal Cognitive Assessment. Geriatr Gerontol Int. 2010;10(3):225-232. doi:10.1111/j.1447-0594.2010.00585.x
  20. Molloy DW, Alemayehu E, Roberts R. Reliability of a Standardized Mini-Mental State Examination compared with the traditional Mini-Mental State Examination. Am J Psychiatry. 1991;148(1):102-105. doi:10.1176/ajp.148.1.102
  21. Hensel A, Angermeyer MC, Riedel-Heller SG. Measuring cognitive change in older adults: reliable change indices for the Mini-Mental State Examination. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(12):1298-1303. doi:10.1136/jnnp.2006.109074
  22. Clark CM, Sheppard L, Fillenbaum GG, Galasko D, Morris JC, Koss E, et al. Variability in annual Mini-Mental State Examination score in patients with probable Alzheimer disease: a clinical perspective of data from the Consortium to Establish a Registry for Alzheimer's Disease. Arch Neurol. 1999;56(7):857-862. doi:10.1001/archneur.56.7.857

この記事を書いた人

Charcot

コメント