有酸素運動は脳卒中後のCRPSタイプ1による痛みを改善させる


今回紹介する文献
The effect of upper-extremity aerobic exercise on complex regional pain syndrome type I: a randomized controlled study on subacute stroke.
(Topcuoglu A et al., Top Stroke Rehabil. 2015 Aug;22(4):253-61.)

 有酸素運動が複合性局所疼痛症候群 (CRPS) のタイプ1による疼痛に与える影響を調査したランダム化比較試験を紹介します。CRPSのタイプ1は肩手症候群とも呼ばれ,脳卒中患者によく見られる症状です。痛みに他に腫脹を伴うことがその特徴です。この研究ではCRPSタイプ1の痛みに有酸素運動が有効かどうかを調査しました。

有酸素運動群と従来の理学療法を行う群にランダム割付

 この研究では,脳卒中発症6ヶ月後にCRPSタイプ1の診断を受けた患者52人を,有酸素運動を行う群と従来の理学療法を行う群の2群にランダムに振り分けました。有酸素運動を行う群では,上肢でエルゴメーターを漕ぐ運動と従来の理学療法(TENSなど)を組み合わせて行い,4週間後に痛みや精神状態,その他のCRPSの症状に及ぼす効果を検証しました。

有酸素運動群では痛み,QOL,うつ症状が改善する

 有酸素運動群では,患者が痛みの有意な改善(89.9%)とCRPSの徴候と症状の有意な減少を報告したそうです。また,有酸素運動群と従来の理学療法群の間では,肩や手の痛み,Nottingham Health Profile(QOLの包括的尺度),Beck Depression Scaleスコア(うつ状態の評価尺度)の平均変化量が統計的に有意だったようです(p<0.05)。

コメント

 近年,有酸素運動が慢性疼痛患者の痛みを減弱させることが分かってきました。この研究は,脳卒中後に生じるCRPSタイプ1の痛みも有酸素運動によって改善できる可能性を示しました。CRPSタイプ1に対する理学療法にはミラーセラピープログラムが有効だとする報告もありますが,未だ一定の見解は得られていません(脳卒中患者の肩手症候群の特徴と治療法の記事を参照)。このような研究を契機にCRPSタイプ1に対する理学療法の有用性が示されることを期待したいところです。

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