
ラットの膝を曲げたまま固定すると、膝は伸びなくなります。カナダの研究者が、膝をまたぐ筋を切ってみました。2週間固定した膝では、伸びなかった分の約6割がなくなりました。ところが、32週間固定した膝では、筋を切っても、ほとんど伸びるようにならなかったのです。動きを止めているものが、固定の長さで、筋から関節へ入れ替わっていました(Trudelら 2000)。
人では、筋を切って確かめることはできません。足関節の骨折で、6週間ギプス固定をしていた患者さんがいます。ギプスを外すと、足首の背屈が0°から先へ進みません。ふくらはぎの筋が突っ張っているのでしょうか。関節包が縮んでいるのでしょうか。それとも、痛くて力が入ってしまうのでしょうか。手で押して感じるのは、一つの「硬さ」だけです。
関節可動域制限の要点
- 用語:関節可動域制限は、原因を問わず、関節が本来の範囲まで動かない状態。拘縮は、皮膚、筋、関節包などの組織が変わり、他動運動でも狭くなった状態。強直は、骨端どうしがつながり、ほとんど動かない状態。拘縮と強直の境目は、文献によって違う
- 分類:Hoffaは1891年に、拘縮を皮膚性、結合組織性、筋性、神経性、関節性の5つに分けた。最初に変わった組織で分けたもので、いま動きを止めている組織はわからない
- 起こる仕組み:短い位置で固定したネコの筋では、直列に並ぶサルコメアが約40%減った。マウスでは、筋の中の結合組織も数日で増えた。ラットの膝を固定した実験では、2週では筋による制限が約6割を占め、32週では制限のほぼすべてが関節によるものだった。関節の側の主な原因は、後方の関節包とされる
- 固定を外したあと:ラットでは、2週以内の固定でできた筋による制限は戻った。4週以上の固定でできた関節による制限は、最長48週待っても戻らなかった。膝全体の角度が元に戻ったのは、1週固定の膝だけだった
- 痛みと痙縮:神経ブロックで、脳損傷のある成人の肘は平均53°広がった。歩くことのできる脳性麻痺の人の足首は、全身麻酔で約3°しか広がらなかった。手に感じる抵抗の大きさだけでは、痙縮と拘縮を区別できない
- 見分け方:自動運動と他動運動、二関節筋をゆるめる角度、動かす速さを変えて比べる。どの手がかりも、一つだけでは決め手にならない
- 治療と予防:拘縮のある人やそのおそれのある人では、7か月未満のストレッチに、関節の動く範囲を臨床的に意味のある大きさで広げる効果はなかった(Cochraneレビュー、2017年)。脳卒中のあとの装具や電気刺激などの機器も、確かな結論は出ていない(Cochraneレビュー、2024年)。予防では、長い固定や不動を避けることが実験の結果と最もよく合うが、推論である
関節可動域制限とは
関節可動域制限は、原因を問わず、関節が本来の範囲まで動かない状態を広く指す言葉です。筋力が落ちて、自分の力で動かす自動運動だけが狭い場合も含みます。関節可動域制限のうち、関節のまわりの組織そのものが変わって、検者が動かす他動運動でも狭くなったものが拘縮です。英語の文献には、拘縮(contracture)を「可動性のある関節の、他動的な可動域の制限」と定義するものがあります(Wongら 2015)。米国国立医学図書館の医学用語集MeSH(メッシュ)は、「関節の動きを妨げる、関節周囲の筋や他の軟部組織の長期にわたる短縮」と説明しています。関節をつくる骨の端どうしがつながり、ほとんど動かなくなった状態は、強直と呼んで区別します。ただし、拘縮と強直の境目の引き方は、文献によって違います。
拘縮の分類
拘縮の分類には、Hoffa(ホッファ)の分類がよく使われます。拘縮を、皮膚性、結合組織性、筋性、神経性、関節性の5つに分けます。ドイツの外科医Albert Hoffa(1859〜1907年)が、1891年に『整形外科学教科書』の第1版で示しました(冨田ら 1998、表1、図1)。
| 分類 | はじめに |
|---|---|
| 皮膚性 | 皮膚。 |
| 結合 | 皮下組織、 |
| 筋性 | 骨格筋。 |
| 神経性 | 神経(反射性、 |
| 関節性 | 滑膜、 |
表1 Hoffaの分類(組織はHoffa 1891による。例は本文で説明するもの)

図1 Hoffaの5分類と関節周囲の組織。膝のような滑膜関節を縦に切った模式図で、色は、その組織の変化で起こる拘縮の種類を表す。Hoffaは、骨端どうしが間の組織によって動かないほどつながった状態を強直と呼び、拘縮と区別した。組織の大きさや位置は正確ではない(分類はHoffa 1891による)
5つの名前は、どの組織が最初に変わったかを表します。皮膚性の代表は、熱傷のあとの傷あと、つまり瘢痕です。皮膚の全層が壊死するⅢ度熱傷は、植皮をしないと瘢痕拘縮を起こします(日本皮膚科学会 2024)。傷が縮みながら、縁から治っていくためです(Goelら 2010)。皮膚が硬くなる全身性強皮症でも、拘縮が起こります。欧州の大規模な登録では、約3割の人に関節拘縮がありました(Avouacら 2010)。結合組織性の代表は、Dupuytren(デュピュイトラン)拘縮です。手のひらの腱膜が短く厚くなり、指が伸びなくなります(Shihら 2010)。
筋性の代表は、Volkmann(フォルクマン)拘縮です。Volkmannは1881年、きつく巻いた包帯のあとに、主に前腕と手に起こる麻痺と拘縮を報告しました。原因は、血液が届かなくなったことだと考えました(Ellis 2012)。いまは、急性コンパートメント症候群の後遺症と理解されています。筋膜で仕切られた区画の中の圧が上がり、筋への血流が止まる病気です(Ozer 2020)。神経性には3つあります。反射性は、痛みを避ける姿勢を続けるうちに固まります。痙性は、痙縮によって筋が縮んだ位置に保たれ、そのまま固まります。痙縮とは、筋を速く伸ばすほど、反射で強く縮み返す状態です。麻痺性は、末梢神経の障害などで筋が麻痺して起こります。関節性は、滑膜、関節包、靱帯が縮んで起こります。
この分類は、はじめに変化した組織やきっかけで、拘縮に名前をつけます。あとからほかの組織が加わっても、名前は変わりません。冨田ら(1998)が指摘するように、Hoffaの分類は、最初に変わった組織で拘縮を分けたもので、いま動きを止めている組織を示すものではありません。たとえば、痛みのために膝を曲げたまま過ごすうちに、関節包が縮むことがあります。きっかけは反射性でも、いま止めているのは関節包です。ギプスで固定した足首では、皮膚も筋も関節包も、同時に動かされずにいます。筋性と関節性の拘縮は、同じ関節に同時に起こりえます。どちらがどれだけ止めているかは、分類からはわかりません。
拘縮と強直の違い
拘縮と強直の境目の引き方は、文献によって違います。赤居(2006)は、関節包の外の筋や皮膚などによるものを拘縮、関節包の中の軟骨や滑膜などによるものを強直と分けることがある、と紹介しています。そのうえで、「厳密な鑑別は難しい」と書いています。この分け方では、関節包そのものの短縮は、ちょうど境目に入ります。三浦(2006)は、他動的にまったく動かないものを強直、多少とも動くものを拘縮とすることが多い、と述べています。こちらは、動く量で分ける方法です。沖田編(2013)の教科書は、拘縮を「皮膚や骨格筋、腱、靱帯、関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」と定義しています。器質的変化とは、組織そのものの構造が変わることです。関節包の短縮を拘縮と呼ぶかどうかは、どの定義に従うかで変わります(表2)。
| 用語 | 意味と、 |
|---|---|
| 関節 | 原因を |
| 拘縮 | 皮膚、 |
| 強直 | 骨端 |
| 痙縮に | 伸張反射の |
表2 関節可動域制限にかかわる用語(赤居 2006、三浦 2006、沖田編 2013、Hoffa 1891、Lance 1980をもとに作成)
Hoffaも、この教科書で強直を拘縮と区別していました。強直は、関節をつくる骨の端どうしが、間に入り込んだ組織で、動かないほどつながった状態です。その組織ははじめ結合組織なので、この段階の強直は線維性と呼ばれます。Hoffaは、強直は拘縮に続いて起こることが非常に多い、とも書いています。
ラットでは、拘縮から強直へ進む経過が確かめられています。渡邊ら(2007)は、ラットの膝を32週間ギプスで固定しました。関節包や軟骨など関節をつくる組織が萎縮し、線維化が進みました。関節のすきまも狭くなり、線維性の強直に至りました。強直は拘縮に続いて起こることが多い、というHoffaの記述と同じ経過です。拘縮と強直は、同じ経過の途中と行き着く先にあたる場合があります。
拘縮が起こる仕組み
動物の関節を固定すると、短い位置に置かれた筋では、サルコメアが減り、結合組織が増えます。サルコメアは、筋が収縮する最小の単位です。動物では、固定が長引くと、関節包など関節の組織による制限が大きくなります。どの組織がどれだけ動きを止めているかは、人では直接確かめにくい問いです。そこで、動物の関節を固定して、組織ごとに調べる研究が進みました。
短く固定した動物の筋は、サルコメアが減る
1970年代のはじめ、フランスと英国の研究者が、ネコのヒラメ筋をギプスで固定しました(Tabaryら 1972)。筋が短くなる位置と、長くなる位置です。短い位置で固定した筋は、伸びにくくなっていました。短い位置で固定したネコの筋では、直列に並ぶサルコメアが40%少なくなっていました。長い位置で固定した筋では、逆に20%多くなっていました。ギプスを外すと、伸びやすさもサルコメアの数も、4週以内に正常に戻りました。ネコの筋は、固定された長さに合わせて、サルコメアの数を調節していたのです。
サルコメアが減ると、なぜ動く範囲が狭くなるのでしょうか(図2)。関節を同じ角度まで動かすには、筋線維を同じ長さまで伸ばす必要があります。サルコメアが10個から6個に減ると、同じ長さを6個で受け持つことになります。1個あたりの長さは、約1.7倍です。そのため、サルコメアが減った筋では、関節を少し動かしただけで、伸ばされる抵抗が大きくなります。検者がそれ以上動かせなくなる角度も、小さくなります。

図2 サルコメアの減少と、動く範囲の減少(模式図)。関節を同じ角度まで動かすと、筋線維は同じ長さまで伸ばされる。サルコメアの数は、ネコのヒラメ筋を短い位置でギプス固定した実験で減った割合(約40%)に合わせた(Tabaryら 1972)。曲線の形や数値は実測値ではない
筋の変化は、サルコメアだけではありませんでした。Williams(ウィリアムズ)とGoldspink(ゴールドスピンク)は、マウスの筋を短い位置で固定しました(WilliamsとGoldspink 1984)。すると、固定したマウスの筋では、数日でコラーゲンの割合が増えました。サルコメアがまだほとんど減らない時期です。はじめに増えたのは、筋線維の束を包む筋周膜でした。固定が長くなると、筋線維1本1本を包む筋内膜も厚くなりました。ラットのヒラメ筋では、固定4週以降に、筋内膜のコラーゲン線維の並ぶ向きが変わりました。沖田らは、初期の拘縮には筋線維の短縮が、後期には筋内膜の変化が関わると考察しています(沖田ら 2004)。筋による制限にも、結合組織の変化が含まれるということです。
ラットでは、制限が筋から関節へ移る
筋と関節のどちらが、どれだけ動きを止めているかを、一つの関節の中で測り分けた研究があります。カナダのオタワ大学のTrudel(トルーデル)とUhthoff(ウートフ)は、ラット40匹の片方の膝を、曲げた位置で2〜32週間固定しました(Trudelら 2000)。膝の伸展の制限を測り、膝をまたぐ筋を切ってから、もう一度測ります。筋を切って広がった分が筋による制限、それでも残る分が関節による制限です。固定2週では、筋による制限が20.1°、関節による制限が12.6°でした。32週では、筋による制限は0.8°だけで、関節による制限が51.4°になっていました(図3のA)。ラットの膝では、固定が長引くにつれ、制限の中心が筋から関節へ移りました。
同じころ、長崎大学の沖田らのグループは、ラットの足関節で同じ問いを調べました(岡本ら 2004)。両方の足首を、つま先を伸ばしきった最大底屈位で、1〜12週間固定します。そのあと背屈を、3回測りました。ギプスを外した直後、皮膚を切ったあと、ふくらはぎの下腿三頭筋を取り除いたあとです。ギプスを外した直後の制限のうち、皮膚を切って改善したのは、どの期間でも10%程度でした。下腿三頭筋を取り除いて改善したのは、固定1週で80.5%、4週で54.7%、12週で25.4%でした(図3のB)。ラットの足首でも、固定が長いほど、筋を取り除いて改善する割合は小さくなりました。著者らは、1か月程度の固定では皮膚と筋による制限が、2〜3か月に及ぶと関節による制限が大きくなると示唆された、とまとめています。京都大学の永井ら(2014)のラットの膝の実験でも、関節による制限は、固定4〜8週の間に急に増えました。

図3 固定期間と、制限している組織の入れ替わり。Aは、ラットの膝を曲げた位置で固定し、膝をまたぐ筋を切る前と後で伸展の制限を測った実験で、値は報告された固定2週と32週のもの(Trudelら 2000)。Bは、ラットの足関節を最大底屈位で固定し、皮膚の切開に続いて下腿三頭筋を切除したときに改善した背屈の制限の割合(岡本ら 2004)。どちらもラットの実験で、週数をそのまま人に当てはめることはできない
関節による制限が遅れて増えるのは、関節の中の組織が時間をかけて変わるためと考えられます。ラットの膝を固定すると、関節包のコラーゲンは1週で増え始め、2週で密になります。縮む性質をもつ筋線維芽細胞も、1〜4週の固定では、固定が長いほど増えます(Sasabeら 2017)。東北大学の安藤ら(2012)は、ラットの膝を1〜16週間固定したあと、16週間自由に動ける状態に戻しました。4週以上固定したラットでは、後方の関節包全体に癒着が残っていました。癒着とは、本来は離れている組織どうしがくっつくことです。Trudelらのグループは、ラットの膝の屈曲拘縮では、関節による制限の主な原因は後方の関節包だ、とまとめています(Wongら 2015)。
これらはラットの実験です。ラットと人とで、組織が変わる速さが同じとは限りません。ラットの週数を、そのまま人に当てはめることはできません。それでも、関節や研究室が違っても、はじめは筋、のちに関節という順序は同じでした。
人でも、長く動けない状態は拘縮を残します。カナダの病院で、集中治療室(ICU)に2週間以上入院した155人の記録を調べた研究があります。ICUに2週間以上入院した人の34%に、ICUを出る時点で、機能を妨げる程度の関節拘縮がありました。ICUの滞在が8週以上の人は、2〜3週の人より拘縮のリスクが高くなっていました。ほかの要因の影響を除いた調整オッズ比は、7.09です。自宅へ退院する時点でも、23%に機能を妨げる拘縮が残っていました。拘縮が見つかった関節は、肘が36%と最も多く、足関節が24%で続きました(Clavetら 2008)。この研究は、制限が筋によるか関節によるかを区別していません。
固定を外したあとの経過
ラットの膝では、2週以内の固定でできた筋による制限は戻りました。4週以上の固定でできた関節による制限は、戻りませんでした。Trudelら(2014a)は、ラット250匹の膝を、1〜32週間固定しました。そのあと1〜48週間、自由に動ける状態で飼い、筋を切る前と後で膝の伸展を測りました。2週以内の固定では、関節による制限は対照と有意な差がありませんでした。制限の大部分は、筋によるものでした。2000年の実験では、2週の固定でも12.6°の関節による制限が測られていたので、研究によって結果に違いがあります。この筋による制限は、1週固定では1週、2週固定では8週の回復期間で、元に戻りました。一方、ラットでは、4週以上の固定でできた関節による制限は、最長48週の回復期間でも戻りませんでした。12通りの固定期間と回復期間の組み合わせの、どれでも同じでした。
同じ実験のラットで、膝全体の伸展角度を見た報告もあります(Trudelら 2014b)。反対側の膝と同じ角度まで戻ったのは、1週固定の膝だけでした。2〜16週固定の膝は、制限の平均約41%が戻ったあとで頭打ちになりました。回復期間を延ばしても、それ以上は改善しませんでした。32週固定の膝は、どの回復期間でも、有意には改善しませんでした。2014aでは、2週固定の筋による制限は戻り、固定を終えた時点で関節による制限もありませんでした。それでも2週固定の膝が戻りきらなかったのは、固定を外したあとに、関節による制限が新たに生じたためかもしれません。
動ける状態に戻せば、関節による制限が自然に治るわけでもありません。広島国際大学の金口ら(2017)は、ラットの膝を3週間固定したあと、自由に動ける状態に戻しました。すると、筋による制限は時間とともに減りました。一方、ラットの膝の関節による制限は、固定を外したあとにさらに進みました。後方の関節包には、動き始めた翌日から炎症が起こっていました。7〜14日目には、コラーゲンが沈着して組織が硬くなる線維化がみられました。観察は、14日目まででした。固定を外した直後から7日間、ラットを1日60分トレッドミルで歩かせた実験もあります。トレッドミルで歩かせたラットでは、自由に動かしただけのラットより、関節による制限が大きくなりました(金口ら 2018)。
痛みと痙縮による制限
痛みや痙縮も、他動運動の範囲を狭めることがあります。その量は、対象によって大きく違います。その量を人で確かめる方法が、全身麻酔や神経ブロックです。神経の働きを止めて、その前後の可動域を比べます。麻酔で広がった分が神経の働きによる制限、麻酔をしても残る分が組織による制限と考えられます。筋を切るラットの実験に、いちばん近い比べ方です。
痛みについては、凍結肩の5人を、全身麻酔の前後で測った小さな研究があります。凍結肩は、肩の関節包に炎症が起こって硬く縮む病気です。麻酔のあと、他動的な外転の範囲は、5人全員で大きくなりました。外旋も、3人で約15〜40°広がりました(Hollmannら 2018)。痛みを避けようとして筋が縮むことを、防御性収縮といいます。麻酔の前は、これが範囲を狭めていた可能性があります。痛みは、自動運動だけでなく、他動運動の範囲も狭めることがあります。
痙縮については、結果が対象によって大きく違います。脳損傷のある成人の肘で、筋皮神経にフェノールを注射して、神経の伝導を止めた研究があります。肘の可動域は、平均53°広がりました(Keenanら 1990)。この人たちでは、制限の多くが神経の働きによるものだったと考えられます。一方、歩くことのできる脳性麻痺の15人、30肢を調べた研究もあります。平均年齢は14.3歳でした。膝を伸ばしたときの足関節の背屈は、覚醒時0.9°、全身麻酔下3.9°で、差は3°でした(Horschら 2024)。歩くことのできる脳性麻痺の15人では、制限の大部分が、麻酔をしても残りました。
脳卒中のあとの拘縮も、痙縮だけでは説明できません。シドニーの病院で、脳卒中の患者さん200人を6か月追跡した研究があります。52%が、少なくとも1つの関節に拘縮を起こしました。関節ごとの発生率は12〜28%で、肩と股関節に多くみられました。発症4週以内の筋力は、肘、手関節、足関節の可動域の有意な予測因子でした。ただし、予測モデルで説明できたのは、可動域のばらつきの6〜20%にとどまりました。痙縮は、よい予測因子ではありませんでした(Kwahら 2012)。O'Dwyer(オドワイヤー)らも、脳卒中の患者さんで、他動的に動かしたときの抵抗の大きさは拘縮と関係していたと報告しています。反射の高まりとは、関係していませんでした(O'Dwyerら 1996)。手に感じる抵抗が大きくても、痙縮ではなく、筋や関節そのものの硬さによることがあります。Modified Ashworth Scale(モディファイド・アシュワース・スケール)は、他動運動の抵抗を段階で表します。その点数をつけるときにも、この区別が問題になります。
制限の原因の見分け方
臨床では組織を切れません。自動運動と他動運動を比べ、膝などの角度や動かす速さを変えて、制限の原因の見当をつけます。関節可動域の測り方は、日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会などが「関節可動域表示ならびに測定法」で定めています。測定の基準になる姿勢を基本肢位といい、これを0°とします。原則として、他動運動で測ります。表に載っている参考可動域角度は、正常値ではありません。測定値を比べるときの目安です。制限があるかどうかは、反対側の値や参考可動域角度に加えて、年齢、性、測定の肢位や方法も考えあわせて判断します。
そのうえで、自動運動も他動運動と分けて測ります。自動運動の範囲だけが小さければ、筋力低下や麻痺、痛みなどが動きを止めている可能性が高くなります。両方が同じように小さければ、組織の変化、痙縮、防御性収縮を疑います。自動運動と他動運動を比べると、力や痛みで動かせないのか、他動でも止まるのかの見当がつきます(表3)。
| 手がかり | 考えられること |
|---|---|
| 自動運動の | 筋力低下、 |
| 他動運動の | 拘縮、 |
| 速く | 伸張反射に |
| 二関節筋を | その |
| 痛みの | 痛みや |
表3 可動域の制限の原因を考える手がかり
2つの関節をまたぐ二関節筋を、膝の角度でゆるめる方法は、筋を切る実験に近い比べ方を、手で行うものです。背屈が0°から先へ進まない足首なら、膝を伸ばしたときと曲げたときで、背屈を比べます。膝を曲げると、膝と足首をまたぐ腓腹筋がゆるみます。膝を曲げて背屈が大きく増えれば、腓腹筋の関与が大きいと考えられます。膝の角度によらず変わらなければ、ヒラメ筋や関節包など、足関節だけにかかわる組織を疑います。動かす速さを変える方法は、痙縮を見るためのものです。速く動かすほど抵抗が大きくなるのが、伸張反射が強まった痙縮の特徴だからです(Lance 1980)。どの手がかりも、一つだけでは決め手になりません。
拘縮の治療と予防
拘縮のある人やそのおそれのある人では、7か月未満のストレッチは、関節の動く範囲に臨床的に意味のある効果をもたらしません。Harvey(ハーヴェイ)らは、拘縮の治療や予防のためのストレッチを調べた49の研究、2,135人を集めて分析しました(Harveyら 2017)。決められた手順で研究を集めて統合する、Cochrane(コクラン)レビューです。著者らは、臨床的に意味のある効果の目安を5°としました。神経の病気のある人では、最後のストレッチから1週以内に測った効果は、平均2°でした。95%信頼区間は、0〜3°でした。真の効果がありそうな範囲のことです。1週より後の効果は、平均1°で、95%信頼区間は−1〜3°でした。神経の病気のない人でも、効果はごく小さいものでした。著者らの結論は、質の高いエビデンスにもとづいています。7か月より長いストレッチを調べた研究は、ありませんでした。
装具や電気刺激などの機器を使う方法も、効果ははっきりしていません。脳卒中のあとの拘縮に機器を使った試験を、2024年のCochraneレビューが集めました。ランダム化比較試験は、治療を受ける人を無作為に割り振って比べる研究です。条件を満たしたのは、小さなランダム化比較試験7つだけでした。エビデンスの確かさはどれも非常に低く、著者らは、確かな結論は出せないとしています(Mohammed Meeranら 2024)。
動物では、伸ばすことで変化を防げた実験があります。Williams(1990)は、マウスの筋を短い位置で固定しながら、1日30分だけ伸ばしました。するとサルコメアは減らず、かえって増えました。関節の動く範囲も、正常に保たれました。マウスと人とで結果がなぜ違うのかは、はっきりしていません。マウスの実験は、健康な筋を、固定しながら伸ばしました。人の研究は、病気やけがのある人が対象です。ラットでは、4週以上の固定でできた関節による制限は戻りませんでした。一度できた関節の制限を、伸ばして戻すのは難しい、という解釈とも矛盾しません。ただし、これは推測で、確かめられてはいません。いまの実験の結果と最もよく合うのは、拘縮ができてから伸ばすことより、長い固定や不動をできるだけ避けることです。ただし、これも実験の結果からの推論です。関節可動域運動も、その目的と限界を知ったうえで選ぶことになります。
まとめ
関節可動域制限は、原因を問わず関節が本来の範囲まで動かない状態で、組織の変化で他動運動でも狭くなったものを拘縮と呼びます。Hoffaの分類は、最初に変わった組織で名前をつけます。研究者たちは、筋の中のサルコメアを数え、組織を一つ切るたびに角度を測り直しました。その結果、一つに感じられる硬さは、動物の実験では、筋による制限と関節による制限に分けて測れることがわかってきました。ラットでは、固定が長いほど関節の分が大きくなり、長い固定による関節の制限は戻りませんでした。人では、7か月未満のストレッチに、臨床的に意味のある効果はありませんでした。
ギプスを外して背屈が0°で止まる足首では、自動運動と他動運動、膝の角度、動かす速さを比べます。それが、組織を切る代わりに、どこが動きを止めているかを手で確かめる方法です。
さらに学びたい人へ:おすすめの本
- 沖田実 編『関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方 第2版』(三輪書店):関節可動域の制限を、筋の収縮によるものと拘縮によるものに分け、拘縮については皮膚、骨格筋、靱帯、関節包の変化を掘り下げて解説しています。不動が痛みに与える影響と、その治療上の注意点も扱っています(2013年刊行、232ページ)。
- 隈元庸夫 編著『臨床ROM 第2版―測定からエクササイズまで』(実践リハ評価マニュアルシリーズ)(ヒューマン・プレス):2022年改訂の「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠し、各関節の基本肢位、基本軸、移動軸、参考可動域、測定の手順、起こりやすい代償動作を、500点以上の写真と140本の動画で解説しています。基本肢位で測れない場合の別法や、可動域の改善と予防のための運動も収めています(2022年刊行、272ページ)。
参考文献
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